75. あの日の遊園地
「まるでタイムカプセルが開いたみたいだね。」
あの時、あの日のままの姿で保存されていた遊園地への
秘密の通路が突然開いて
みんなでそこを歩きながら、もう動かなくなった乗り物を眺めて回った。
みんなで、と言っても、遊園地を歩くときは1人だ。
世界から切り離されたそこには、もうみんな一緒には入れない。
戻ってから、時間の止まったその場所を焼き付けた写真を見せあって、
懐かしいね、と笑った。
チカチカ光っていた虹色の電飾も
賑やかだった音楽も、芝居小屋も、もう過去という時間の中に閉じ込められて
ただただ、楽しげで。それだけで。
その場所にいながらにして、触れることのできないそこは、
遊園地の姿をした、美術館みたいだ。
「…… 懐かしいね」
ねぇ、でも、そう言い合える人と出会えたのは確かにこの場所で
それは今という時間に繋がっている。
大好きだった、わたしたちの遊園地。
たくさんの励ましと勇気をもらった、はじまりの場所。
ありがとう。
今日も世界の片隅で、あの日の続きの物語を綴り、生きています。
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75/100 「動けない」
閉じ込められた過去の時間は、その当時の姿を保ったままで
錆びることなく永久に、ただ、もう、動けなくなっていた。
「絵描きさんに100のお題」に文章で挑戦中。
http://kuusouya.web.fc2.com/Story2/h_100.htm
一人称替え、部分抜粋、アドリブOKです。
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