不動産流通実務検定“スコア”に挑戦<今週の一問>2021.11.4「相隣関係」における「目隠し」
企画推進課の奥田です。不動産流通実務検定“スコア”に挑戦!
不動産業界で働く方向けのFacebookページからの転載です。
さて、問題です。
Q. 相隣関係における目隠しについての次の記述のうち、民法および判例によれば適切なものを一つ選びなさい。
【選択肢】
1.境界線から1メートル未満の距離にあるマンションに隣地の宅地を眺望することのできる窓又は縁側であれば、常に目隠しの設置請求をすることができる。
2.エアコン室外機や小さな物置などを置くことを予定したサービスバルコニーは、眺望目的ではなく、また日常的に出入りしたりする場所でもないから、民法にいう「ベランダ」にはあたらず、目隠しを付ける義務はない。
3.隣地に存在するテニスコートが見渡せる窓については、テニスコート所有者と目隠しを設置する合意がない限り、建物が境界から1メートル未満に位置していたとしても目隠しを付ける義務はない。
4.境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓を設けるときは、目隠しを付ける義務があるが、開閉式の曇りガラスの窓を設置すれば目隠しとして認められる。
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「正解」の番号と解説
不動産流通実務検定“スコア”<今週の一問>、正解と解説です。
【答え】3
【出題のねらい】
近年、プライバシー保護に関する意識が高まり、隣地建物から自宅内を見られたくないと考えている人が多くなっている。特に新しく建物を建てる際に隣接地居住者から目隠しの設置を請求されることは、狭い地域に住宅が密集する都市部では、珍しいことではない。
不動産の売買仲介後にそのようなトラブルが発生すると、眺望を目的に購入したのに目隠しを付けざるを得なくなった、といったクレームを受けるおそれもある。どのような場合に目隠しの設置義務があるかを正確に理解する必要がある。
【解説】
1.不適切
目隠しの設置に関する民法第235条第1項と異なる慣習があればそれに従うとしている(同法236条)。そのため、境界線から1メートル未満に窓やベランダが存する場合であっても周辺の建物の状況から、異なる慣習があると認定され、目隠しの設置請求が認められない場合があります。
また、実際の裁判においては、目隠しを付けるか否かの判断基準においては、隣接建物からののぞき見が受忍限度にあるかを検討しており、同法第235条を形式的に適用する方法をとっていません。そして、のぞき見られることが受忍限度にあるかについては、235条を一応の基準としつつ、窓の位置や構造等諸般の事情に鑑みて判断するとして、1メートル未満に宅地を眺望可能な窓があった場合であっても、目隠しの設置要求を権利の濫用として退けたものがあります。
2.不適切
その構造上隣地宅地を観望することができるような「窓」又は「ベランダ」であれば、本来的に観望を目的としたものでなくても、また、実際に、ほとんど利用されていないとしても、目隠しを設置して隣地建物居住者のプライバシーを保護する必要があると考えられています。
裁判例においても、窓を設置した目的の如何を問わず、その窓から他人の宅地を観望することが物理的に可能であるような位置、構造を有する窓と解するのが相当である(京都地裁昭和42年12月5日)としています。
3.適切
同法第235条は私生活におけるプライバシーを保護するための規定と考えられています。そのため、テニスコートは人が居住するための施設ではない以上、「宅地」には当たらないため目隠しを設置する義務はありません。裁判例でも「同法第235条にいう宅地とは人が住居として使用する建物の敷地をいい、工場、倉庫、事務所に使用されている建物の敷地等は右宅地に含まれないものと解するのが相当である。」(東京高裁平成5年5月31日)と判示し、目隠しの設置請求を退けたものがあります。
4.不適切
民法235条1項は、「境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。」と規定しています。
開閉式の窓では、いくら曇りガラスにしても開くと他人の宅地を見通せることになるため不可です。他人の宅地を見通せないもの、例えば曇りガラスで開閉しないものや、滑り出し窓で見通せない位置にあるもの、高さ2メートルの位置にある明り取りの窓等は、問題ありません。
<参考>
★民法の相隣関係に関する規定
民法は隣接する土地所有者相互の関係(相隣関係)を調整するために規定を設けています。相隣関係に関する規定を類型化すると次のようになります。
① 境界付近の建築等に際しての隣地使用請求や袋地所有者等の隣地通行権(囲繞地通行権)に関するもの(第209 条~第213 条)
②流水や排水等に関するもの(第214 条~第222 条)
③境界標や囲障の設置等に関するもの(第223 条~第232 条)
④境界を越える竹木の枝の切除や根の切取りに関するもの(第233 条)
⑤境界線付近の建築の制限に関するもの(第234 条~第238 条)
※所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しが行われ、法の相隣関係に関する規定の一部が改正されています(令和3年4月28日の公布から2年以内に施行予定)。所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
(参考「不動産流通実務必読テキスト第三版」P185)
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検定のお知らせ
💁♀️第9回検定は11/18(木)~ 25(木)実施 (申込みは11/11まで)
▼不動産流通実務検定“スコア”
https://www.retpc.jp/score-kentei/
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