思想家、詩人吉本隆明家訪問記

吉本隆明家を訪問する機会を得て、一人でお邪魔した。長女の多子(さわこ)さんに大変お世話になった。

案の定、室内は猫たちが5匹ぐらいうろついていた。

「生前中に、なぜ来なかったのか」と当然聞かれた。熱烈ファンや、著作を真面目に読んだ若者たち、あるいはそのレベをるにはとてもない下世話な質問を投げかけるために、吉本家の門を叩く者は少なくはなかったようだ。そんな連中にも玄関先で納得いくまで対応したと何かで読んだ。寒い中をずっと玄関先で立ち話していた様子が窺える。

私は「何を質問したら良いか分からず来れなかった。吉本さんがある著者で、君たちと僕の間には千里の隔たりがあると話されていました。」

と答えた。確か東大生を前に質疑応答で答えていたはずだ。

写真では見たことのある書斎も自由に見せていただいた。転居する前の山積みの書斎は写真で見ていたが、亡くなられた後の新しい千駄木の書斎は、かなり整理されていた。

仏壇に線香をあげた。あまりにもこじんまりとした、位牌もない仏壇だったと思う。写真はあるので探してみます。

紹介者がある出版社の吉本さん担当の編集者であった関係もあり、未発表の吉本さんの晩年の手書き原稿を、その編集者に打ち直すようにお願いして欲しいと手渡された。

思わず手が震える。確かに直筆の字は、ほとんど見慣れていない私には読み取れない字が多すぎた。
ということで、再度伺えるチャンスを得ることになった。

次回の投稿で、パート2をご報告したい。

よろしくお願いします。