みんな繋がってる

たびたび夢の話で恐縮です。

またもや「ばあちゃんちマジック」案件。

朝方は不思議な夢を見ることが多い。
この話もそのひとつです。

ある日、みた夢。

ばあちゃんちにお客さんが来た。

若い男の人がひとりと、小学生くらいの男の子と女の子がふたり。

若い男の人と小さな男の子は居間のソファーに座っていて、男の人と祖母が熱心に何か話し込んでいた。

(あ、お客さんだ。何かお出ししなくちゃ…)

お茶を入れようと思って、台所に行くと、扉の陰に隠れるようにして、小さな女の子がそっとこちらを伺っていた。

「あれ? どうしたの? みんなあっちにいるよ?
あっちに行ってみんなでお話ししよう。」

そう声を掛けると、女の子は何か言いたげにじっとこちらを見つめてきた。
しかし、その目はどこか寂しげでもあった。

(どうしたのかな? 恥ずかしがり屋さんなのかな?
あれ? でもこの子、どこかで会ったことがあるような…)

そうこうしているうちに、男の人が、

「本当にどうもありがとうございました。それでは、そろそろおいとまします。」

と、流暢な日本語で挨拶をしていた。

そう、実はこの三人は外人さんだったのだ。
外見だけでいったら、おそらく東南アジア系の方なのかもしれないと思った。

玄関の方に向かうとき、男の人はわたしに笑顔で一礼をして、
男の子は満面の笑みで手を振ってくれた。

天使のような笑顔とはきっとこのことを言うのだろう。
本当にキラキラと輝く、とびっきりの笑顔だった。

嬉しい!という喜びのエネルギーが伝わってきた。

彼らと挨拶を交わした瞬間、夢から目覚めた。


(なんか妙にリアルな夢だった… もしかして実在する人たちなのかな?)

そう思って、祖母に訊いてみた。

「ばあちゃん。外人さんの友達いる?」

「どうして?」

「夢で外人さんがうちに訪ねてきたの。」

祖母は、そんな知り合いはいないよと答えた。

「そっか、あまりにもリアルな夢だったからさ。本当にそういう人が訪ねてくるんじゃないかと思って。なんかお礼を言ってたの、その人。」

「それ、どこの国の人だった?」

「たぶん、タイとかベトナムとか…東南アジアの人だったと思うけど。」

祖母はしばらく考えて、こんな話をしてくれた。

「そういう知り合いはいないけどね。
でも、わたしの友達で、カンボジアに学校を建てるボランティアをやっている人がいてね。その人の考えがあまりにも素晴らしくてね、だからわたしはその人に学校を建てるためのお金を少し寄付したんだよ。」

「あー、それかも! ひょっとしてあの男の人、先生だったのかな?
ばあちゃんに本当にありがとうございますって! 男の子もすごく喜んでたよ!」

「ああ、…そうかね、そうかね。」

感慨深そうに頷いて、祖母は微笑んだ。


顔も知らない、名前も知らない、

見たことも、行ったこともない遠い国の人たち…

その人たちのささやかな善意に対して、彼らはすべてにお礼を言いに訪れていたのだろうか…

いや、きっと向けられた善意は、速やかに受け手に届けられ、それに対する感謝の念は瞬時にこの世界を巡って対象者に返還されていくのだろう。

こうしてわたしたちの意識の波は、世界中に波紋を広げていき、見知らぬ人々を繋いでいるのかもしれない。

きっとそこには時間の制約も空間の制約も何も無い。

本当は、この世界に隔てられたものは何ひとつないのだ。

すべてのしがらみを飛び越えて

わたしたちは繋がり合う。

わたしたちの集合的無意識の、ほんの小さな波を、
一瞬だけ垣間見たのがあの夢の答えであったのかもしれない。


さて、

祖母にお礼を言いにきたふたりはいいとして…
あの隅っこにいた女の子は一体誰だったのだろう…
なぜだか、わたしはあの子のことをよく知っているような気がした。

あの夢を見てから、自分に寂しそうな視線を向けてきたあの女の子のことが、
どうしても気になって仕方がなかった。

思い出せ…
思い出せ…

あの子のこと…


…あ、そうだ!
あの子は、ずいぶん前にテレビで見た子だ!

そう、いつだったか、カンボジアに暮らす貧しい人々の生活を取り上げた、ドキュメンタリー番組を見たときに、自分たち家族の暮らしを淡々と語っていたあの少女だったのだ。

彼女がこう話していたのを思い出した。

「わたしのお母さんは病気がちだから、わたしがお母さんの代わりにゴミ山でゴミを拾ってそれを売りに行かなきゃいけないの。お母さんや弟や妹のために、わたしがお金を稼がなきゃ…」

テレビで見た彼女の表情と、夢で見た彼女の表情がすっと重なった。


「わたしもね、ほんとうはみんなと同じように学校に行きたいんだよ…」

少女の目が何かを訴えるような、あの寂しげな目に変わった。


ああ、そうだ、この表情だったんだ。
わたしが夢で見たのは…

(学校に行きたい…)

あの子があの時、わたしに伝えたかったこと…

わたしはあの夢を通して、子どもたちの光と陰を同時に見せられていたのだ。

光の当たらぬ場所で、まだ多くの子どもたちが困窮している…


あれから、長い月日がたった。

カンボジアにどれくらいの学校が創設されたのだろう。

あの少女のような貧しい子どもたちが通えるような学舎は開かれたのだろうか。


ああ、願わくば、彼女が自分の本当に望む人生を、まっすぐに歩めていますように…

小さな小さな願いを小舟に乗せて、無意識の海に解き放つ。


たとえ、この小さな祈りが人類の意識の波間で散り散りになろうとも、
いつか、彼女の元に届きますように…



以上、不思議な夢にまつわるお話でした。

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