ざんぞうのみ

昆虫がいきものだったのは
子供のころだけでした
そっ
とつぶやいて
そっとしているつもりの
袖口から
さっと
指を
殺到させて
字を
なでる
指紋と
あらそった
汗が
ぬるま湯に近い
意味




ガラス



流れてく
残像の海をただよいつづけてなんになるの
現像された実像も虚像です
だっていきものじゃないし
声も姿も
ダビング
されて
コピー
されて
本物のように飛び交って
わたし扱いされるわたしの声
なにか問題でも?
本物の声だって一瞬で消えていくじゃないですか
保存される一瞬のすがた
リピートされる一瞬の映像
何度でも渾身
一期一会をすりきれるまで
残像を愛して
残像になりにいく
残像で育って
残像をうみにいく
残像のうみにいく
ほんとうは
残らなかったもののほうが
食べつくされた現実だけが
いきものだった
わたしたちは絶滅します
ことばの陰にもぐります
消えてからが本番です
みえてないから照らすのです
ディスプレイにご注目
わたしたちの残像です

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?