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詩集

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詩が集まって何かしています。 背景はときどき変わります。 (一時的に非公開になる詩はそのうち帰ってきます)
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2015年7月の記事一覧

パッケージ

まだ宇宙服も着ていないのに
浮遊するこころがひとつ

数えたくないなら ひとすくい
忘れたくないなら ひとくちで

どうしたって余白に恋するでしょうし
リボンよりもきれいに
飾られる自信なんてないでしょうし

漂っているだけのフレーズでいれば
つかまることもないでしょうし

こころからいえないなら
こころじゃないところからいいますし

戸棚にはきみがしまってありますけど

無期限のきみはしまって

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傷痕のあと

継ぎ目のない表皮にも
かつて縫合のあとがあって
今やすっかりひとつのものに見えるのです
なにも隠されていないような裸体に
葬られている傷痕のあと
みるからに痛々しい
生々しい光景
人は眼を奪われる
なにもおかしくない
平然とした立像の
だれも触れない場所にある
傷みだったものの墓標
あなたが想像しなければ
だれの心にも表れない



その空想と
窒息と
結合が
いちばん大事な
物語

ハンドル

頭がいいね
耳がいいね
腕がいいね
眼がいいね
と言うけど
脳がいいね
とは言わない
動かしているものよりも
動いているものを人は見る
かたちの違いを
わたしは見たい
違いがあふれて
おなじが目立つ
おなじを集めて
違いをさがす
時間があなたを
みえさせている
時間はどこにも
動かない

横断

意味が完治しないので
生き霊のようにぶれるのです

おそろいの憂鬱を
毎日はきかえて暮らすのです

みだりに
みぎひだりを向いて
なにも走ってはこない道を
横断するのです

その否定を
ただ見つめ
ただ煮詰め
みじん切りにして
まぶたの裏にきざみます

するとどうでしょう
ひしめいているのは震動でした

まふだの裏で
可愛らしくひそみながら
絵を描いている
きみに
手を振りたいのです

踊り場の宇宙

分子の悲鳴で宇宙は伸びる

距離ほどの違いなんてごくわずか
ぼくらは相対性の意識を抱え
年代別に発表された未来を
指先でいじる 歩きスマホで

極大と極小がダンス!
いつかひとつになれるかな

原子の理性で宇宙は縮む

ちらばる生と
まとめる死と

代償のダンス!
たとえひとつになれなくとも