医学生2年目になって思うこと

アラフォーにして医学部に入学した私は医学生2回目である。
(すごくどうでもいいが、世の中で「医学部」というと基本的には医学部医学科を指す。看護師・PT・ST等が医学部保健学科だったりすると、品のない予備校は「●●大学医学部合格!!」などと平然と掲げたりする。
大変よろしくない。そんなことをして目先のアクセスを稼いだところで、中身を見た読者のヘイトを高めるだけではなかろうか)

前回はいきなり2年生になれず躓いた。
今回は特に問題なく進級している。というかたぶん成績優秀者の部類に一応入っている。

しかし、無事進級した今でもいまだに、今から1年生の解剖座学テストで何も準備できていない、という夢を見る。
一夜漬けなりに勉強したが、そもそも全くどこに書いてあるか見当がつかない問題文を読んだ経験は、まだまだ私のトラウマであり続けるようだ。

さて、だいたい全国どこもそうであろう(一部の国試偏重で学費がクソ高い私立医大以外は)が、医学部の1年生は比較的専門科目に触れる機会が少ない。
本校でも、高校生物にちょっと基礎生理の類が乗り、人体の正常構造について軽く触れただけである。

そんな状況であるが、既に学年同期の中に覆しがたい差ができているのを感じる。
昨年「ここは毎年出る」として学んだところをもう覚えていなくてイチからやらなくてはならない者と、そこに知識が乗っかっていく者との差だ。
(私も前回はこんな感じだったのだろう)

医学部教育においては比較的最近、カリキュラムの改訂があった。その都合で、現在1年生の頭から入ってくる生理学の類は本来1年生が学ぶ設計ではなく、妙に専門性が高かったりする。
(代謝の「た」の字も知らない物理選択者が、いきなりβ酸化だのGタンパクだの言われても……である)
上の学年の先輩に聞くと、「アレは臨床に入ったら全然使わないからテキトーに過去問をやっておけばいい」と言う。
しかし、そうはいっても1年生。ヒマなのでちゃんと私は勉強した。
そうすると、「全然使わない」なんていうレベルではない。今年になってばんばん使う。直接的でないにせよ、知識の枝の範囲内にあることがわかる。

これもだいたいどこも同じだと思うが、医学部2年生は現在解剖実習の真っ最中である。
大学によってはまだ昭和式の「終わらない解剖実習」をやっているところもあるが(個人的にはそれでいいと思うが)、当大はそういうことをせず、ヘタクソでもそれなりにやれば見逃してくれる。
結果、ほとんど予習もせず実習も半分くらいは立っているだけで、何も学ばず、献体となってくれる方への敬意もなく、実習室の寒さと匂いだけ感覚の片隅に残していく「医学生」がそれなりの数生まれることになろう。

こちら側になってみて思う。
彼らはいつ戻ってこれるのだろうか。
もう既に知識の点では覆しがたい差が生まれている。
せめて患者への敬意は学んでほしいが、それも厳しい。
当大のストレート進学者はおおむね、120人中100~110人程度である(これもまあ、全国的に見て普通であろう)
ここに彼らは……まぁ残らないだろうな。。。。

私は医学生2回目で、1回目の当時は先述の通り成績も悪かったが、、、他者への気配りというか、献体への敬虔な気持ちくらいは当時も持てていた気がする。
そういう気持ちがない者は、人への敬意や礼儀をいつ学び、成長していくのだろう。
わずか1年でなぜここまで差が開いてしまうのだろう。
などと思った2年生の春である。

そうは言っても自分自身真面目に勉強しているとは言い難い。
既に学会発表をしたりしている先輩を見ていると、特にそう思う(別に学生のうちに学会発表をしたいとは思わないが)。
ついてこない者のことは気にしないで、前に進まねばなるまい。

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