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ヴィトンを買うか箒を買うか

かつて学生の頃
わたしはまわりの本当のお嬢様たちに紛れて庶民ながら親のクレジットカードでブランド品に散財するという身の毛もよだつ恐ろしい娘でありました

ロサンゼルスのロデオドライブを
本当の質や豊かさなんて知らぬ日本小娘がブランドのショッピング袋を引っ提げて闊歩する滑稽さ

なぜ誰も止めてくれなかったのかしら涙

鼻血が出るほど恥ずかしい若気の至り

そしてそれらを買わされていた両親を考えると、、、

封印したい過去


さて時は流れて
わたしはブランドで勝負には無知すぎるし、見合わないし、似合わないしで

二十歳を過ぎてからは個性を活かしたエキゾチック路線に軌道修正するのでした

個性を活かすと言っても
あの頃わたしは豪州で生活しており、派手な顔立ちや抜群のスタイルの欧米人に引け目を感じず生きる術は

黒髪、切れ長の目を活かした東洋的ファッション笑

そこに落ち着くことで異国での居場所も確立していたのかもしれない



そのスタイルに収まってしまって今日まで、人生の半分をそんな感じできている



去年の秋ごろ、近所の雑貨屋さんでとんでもなく高額な箒に出会った

笑っちゃうくらいの値段に本当に笑いながらその店を後にするも


心にはいつもどこかにあの箒を想う何かがあった


まーでもいつだってあのお店に行けば買えるし


と街で安い箒を見るたびそう思っては、いつかあのお店の箒を買いに行く自分を想像していた



先週大好きなお友達をランチをした
時間があるというのであの箒のお店に寄ることにした

箒が欲しいのー

と言いながら。

うちにはダイソンもルンバもあるけれど
わたしはダイソン氏ともルンバ氏とも
やはり心が通わないといか
大切にする心が一方通行といか

なんといっても主人が毎日こう在宅になったところで
わたしが好きな時間にスイッチを入れられなくなったことも大きい


箒は思った通りそのお店に主役のごとくズラリと鎮座されていた

ほらねやっぱりあった


実はその2週間前にもそのお店に箒を求めに行ったのだけれど

行った時にはお店を閉めている最中で

わたしはお店のまわりをウロウロしただけで終わっていたのだ

お片付け中のお店の方に、

箒ありますか?と聞こうかとも迷ったけど

まーまた来ればいいかとウロウロしただけにしていた


なので今回このズラリと鎮座されている箒を見て感動すると同時に


値段を見てまた吹き出してしまう


箒に安くて二万円
そのとならりに五万円
普通に10万円なんてのが
あたりまえのようにすまして並んでいる


やはり無理である
親のクレジットカードを散財していたわたしじゃあるまいし
五万の箒をポイと買える程の力量もまだない涙



また笑いながらなんてバカな発想だったのかしらと帰ろうとした時
お店のオーナーから南部箒というその箒のストーリーを丁寧に説明された


ビハインドストーリーオブ箒


40万円もありますけどね、これはやりすぎ


と笑いながら熱心に教えてくださるオーナーの話を聞いていると


5万円がなぜか激安にさえ思えてきた


南部マジック

いやセールストークの成功

いや魔法の箒


五万円、安いですね。


とは思いつつ、ダイソン買うにもそれなりに旦那と話合ってのことだったし、

やはり一存で今買うことはならない


本件一度持ち帰ります


という感じで、案件宿題にする感じでその日は店を後にした



あれからもうすぐ1週間が経とうとしている


わたしの箒愛は募るばかり


今日、お気に入りの箒はまだあるかを確認せずお店に行ってこようと思う

あの子がまだいたら私は迷わずに代償を払い、
20年は連れ添うことになる


もしもういなければ
妥協はせずに
またあの子のような子に出会えるまでダイソンとルンバで乗り切ろうかと思う



昔ルンバの箱には小さく
発がん物質を含む
と英語で書かれていたけれど

今はどうなのだろう
箱は捨ててしまったので確認できないけれど


そんなものが売れる時代


箒は尊い。



つづく

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