日本政府はZOZOTOWNの前澤友作元社長になれ~日本国民全員に100万円のお年玉を~

 前々回に引き続き、本レポートは、日本の「無税国家」化の可能性について、内閣府の計量分析室が発表した経済財政モデル(2018年度)→https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/ef2rrrrr-summary.pdf
に基づいて分析したものである。今回は時事ネタを取り上げて分析を行ってみたい。
 昨年、ZOZOTOWNの社長退任や、某女優との交際破局など、何かと話題になったZOZOTOWNの前澤友作元社長が、今年は1000名に100万円が当たる総額10億円のお年玉プレゼント企画を行うとツイッター上で発表していた。
https://twitter.com/yousuck2020/status/1212025675055452160
 このお年玉企画は、今年も大反響を呼び、リツイート数は412万リツイートとなった。中には複数アカウントを持っていたり、外国人の方もいるであろうが、実に日本人の30人に1人が前澤社長のツイートをリツイートしたのである。それは同時に、400万人の日本国民が100万円を欲しがっているということの証左に他ならないのである。
 よくテレビなどで、小金持ちの高齢者の評論家が、「日本人はもう欲しい物などないから、お金を渡しても使わない!」といった趣旨のことを言うが、実際のところは、それは明確な間違いであり、今の日本人は「欲しい物があっても、お金が無いから買えない」のが実情である。そういった現代日本人の心情を上手く突いたのが、この前澤元社長であろう。そのやり方に対してなど、様々な批判はあるが、現代日本人の「金不足問題」を露わにしたという点を筆者は評価したい。こうしたツイートに400万人以上が飛びつくほど、日本人の金不足は深刻な社会問題なのである。
 こうした金不足の日本人に対して、一企業の元社長の力だけで、問題を根本的に解決出来るわけではない。ここは通貨発行権を持つ日本国政府が、金不足問題にあえぐ日本国民に対して、お金を配るべきなのである。しかも、全国民に対してである。

 では、仮に日本国政府が、ZOZOTOWNの前澤元社長のように、日本国民1人につき100万円を配ったらどうなるだろうか。これに対する反論としては、まず「財源はどうするんだ!」との声が返ってくるが、何てことはない、国債を発行して日本銀行が国債を買えば良いだけである。すると、「そんなことしたら、ハイパーインフレになる!」と返答するであろうが、果たして、日本国民1人当たり100万円、総額125兆円の日本国政府からの大お年玉プレゼントをしたら、日本はハイパーインフレになるのだろうか。それについても、先日、ご紹介した内閣府の経済財政モデル(2018年度)のレポートは答えを分析してくれているのである。この100万円のお年玉プレゼントのシミュレーション結果の元となるのが、レポートの10ページ目、①のケースである。

①実質政府支出について実質GDPの1%相当を1年間だけ増やし、その後、標準ケースと同じ水準に戻す場合

 日本のGDPは550兆円程度であるから、その1%相当だと5.5兆円になる。日本国民全員に100万円のお年玉プレゼントは、総額125兆円になるから、この試算結果を約22.7倍にしてやれば良い。この試算を22.7倍した結果が下記の通りである。果たして、日本はハイパーインフレになるのか、GDPデフレーターと消費者物価という2つのインフレ率から示していく。なお、現在の日本のGDPデフレーターは、ちょうど0.0%である。

画像1

 表の通り、1人当たり100万円、総額125兆円の1回きりの給付金を配ったところで、決してハイパーインフレにはならない。むしろ、1年目で即時にインフレ率2%目標を達成出来るということは、これくらいの金額がちょうど良いデフレ脱却策であることを示している。逆に言えば、これくらいのお金を配らないとインフレ率は高まらないのである。
 その後は、2~3年目ではGDPデフレーターが2%台を超えて、3%台と少し高めのインフレ率になっているが、これまでの20年間、ずっとデフレだったことを考えれば、それを少しでも取り返すために、多少高めの3~4%のインフレ率も許容すべきかもしれない。事実、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンは、日本のインフレ目標を4%に引き上げるべきと述べている。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/160716/mca1607160500007-n1.htm
 しかも、4~5年目になると、インフレ率は3%台からは収縮して2%、そして最終的には1%台まで下落してしまうようである。1回きりの給付金だけでは、インフレ率2%台を維持することすら困難な有様であるようだ。
 ちなみに、他の指標も22.7倍してみると、名目GDPが26.332%、実質GDPが23.835%とバグのような数値になっている。550兆円のGDPが、100万円を配ると、694.8兆円にまで膨れる。さすがに、ここまで一気に膨れると、物価も上昇しそうなものではあるが、あくまで比例的に考えれば、2~3%の上昇に留まるようである。要は100万円与えられて、買い物をする人が爆発的に増えたとしても、供給制約上は、今が客不足過ぎるだけであって、そこまで困ることもないのであろう。もちろん、比例的にはならない可能性もあるので、そこはもっと金額を多く支出した場合のシミュレーション結果も、内閣府には求めたいところである。
 元の分析結果を見る限り、住宅投資が0.48%と顕著に伸びるようである。これを100万円給付した際には22.7倍するわけだから、約10.9%と爆発的に住宅投資が増えるのである。一家4人家族ならば400万円。住宅購入の頭金としても良い金額であろう。実質消費は0.26%を22.7倍すると約5.9%になる。確かに6%程度の増加であれば、それなりに現状でも問題なく対応出来てしまうかもしれない。他に注目すべきは税収であって、元のモデルでは5.5兆円の政府支出の増加によって、1兆2572億円増える試算になる。これを22.7倍すると28.5兆円の税収増となる。総額125兆円のうち、2割強は税収の増加によって、政府の元に返ってくるようである。なお、この試算を見渡していくと、税収は名目1%成長につき、1兆円程度増えるものだと見込んでおいて良さそうである。

 それでも、インフレ率の急上昇が心配であるならば、100万円を分割して給付すれば良いのである。例えば、月3万円の給付金を34ヶ月払いとすれば、2年10ヶ月もの期間に渡るので、インフレ率の上昇を散らすことができる。その結果、ピーク時のインフレ上昇率も3%には届かず、2%台前半で収まるかもしれない。もっと言えば、月1万円の100ヶ月払い、8年4ヶ月に渡って、少しずつ配り続ければ、急激なインフレ率の上昇など絶対に心配は要らないと断言できる。毎年15兆円を給付したところで、名目GDPの550兆円の約2.7%にしかあたらないからである。ここまで行くと、インフレ率2%目標ですら、到達できるか怪しいレベルである。
 このような形で給付金政策を行っていけば、その延長線上には、ベーシックインカムの導入も可能となる。一般的にベーシックインカムというと、社会保障の廃止など、自己責任社会がより一層強まるので、反対する人々も多いが、このインフレ率を見ながら、徐々に給付金額を増やして行くタイプのベーシックインカムであれば、社会保障の廃止など一切必要ない。現行の社会保障制度を完全に維持したまま、ベーシックインカムをもらうことも出来るのだ。詳しくはwezzyというwebサイトに、私がレインメーカーとなって、「日本に金の雨の降らせる方法」を書いた記事があるので、お読み頂ければ幸いである。
https://wezz-y.com/archives/67831/2

 以上のように、日本政府がZOZOTOWNの前澤元社長のように、日本国民全員に対して、100万円を配ってもハイパーインフレはおろか、ちょうど良いインフレにしかならないことが内閣府の試算から示されていた。逆に言えば、日本政府が前澤社長のようにならなければ、日本国は永久にデフレから脱却出来ないことも示唆しているとも言えよう。インフレ率2%目標というのは、現状では限りなく困難な目標であるため、政府にはZOZOTOWNの前澤元社長のように、日本国民に対して、景気良く振る舞って頂かなくては困るのである。日本人の深刻な金不足問題を解決できるのは、通貨発行権を持つ、日本国政府にしか出来ないことなのだから。
 デフレ脱却、インフレ率2%目標達成のためにも、日本国政府に対して、「100万円を配れ!」との声を上げていきましょう。この記事をインターネット上に、拡散頂ければ幸いです。ZOZOTOWNの前澤友作元社長の元にも是非お願いします。

追記(2020/05/12)
 コロナショックを受けて、一律10万円給付が行われたこともあり、この記事に対しても注目度が集まり、沢山の方々にご覧頂きまして、誠にありがとうございます。私のプロフィールや活動経歴は以下のホームページで紹介しております。
http://mansakuikedo.starfree.jp/
 また、私の著作に関しては、単著は無いのですが、私が経済パートのインタビュー&グラフ監修を行った『データで読み解く日本の真実』が発売中です。ここで「若者にも年金を配れ」など、今回の記事の内容に沿った、私の考えを述べていますので、ご興味のある方は是非ご覧になって下さい。下記にリンクを貼っておきます。
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