「動物支障」を原因とする鉄道運行障害について

こんにちは。レスキューナウ危機管理情報センターの本多です。
危機管理情報の中でも鉄道情報の配信業務や、配信に関わるデータベース管理業務などを行っています。

レスキューナウでは、予定通りの行動ができなくなることを幅広く危機と捉え、鉄道の運行情報も危機管理情報のひとつとして扱っています。
そして、本日は鉄道運行情報のうち、「動物支障」という事象についてのお話を、直近1年でのデータを交えてお話したいと思います。

「動物支障」とは?

まず、「動物支障」とは、どんな事象を指すのでしょうか。
これは、列車の通常の運行が野生動物によって妨げられる事象のことを指します。わかりやすいもので言えば、動物と列車がぶつかってしまうというものです。他には、線路上を動物が走って逃げるせいで徐行せざるを得ないというのもあります。
動物のサイズはまちまちで、タヌキ等の小動物の場合や、シカや熊などの大型動物の場合もあります。
そんなわけで、細かい点で状況は異なりますが、レスキューナウでは全て「動物支障」として扱っています。
ちなみに、鉄道運行各社局によっては、シカやカモシカ、熊のように動物の種類まで案内する場合もあります。

「動物支障」で最近みられる傾向

日頃から配信に触れている立場として感じる、最近の傾向として、動物支障の影響で終日運転見合わせとなるケースが散見されます。2022年11月からの1年間では14回ありました。
なぜ、動物とぶつかり、終日見合わせとなってしまうのでしょうか。
後日の報道等で確認できたものに、熊とぶつかってしまい、当該の熊が生きている可能性がある上、夜間で周囲の状況が確認できないため、明るくなるまでその場で待機したというケースがありました。
ほかには、動物が大型で、列車側の損傷が大きく、運転再開に時間がかかるため、当日のその後の運転を全て取りやめるというパターンもあります。
いずれにせよ、動物支障が原因で、それ以後の列車が全て取りやめとなり、場合によっては目的地への到着ができなくなる可能性があるということです。

昨今、計画運休等の浸透により、気象災害等での列車立ち往生や脱線事故は格段に少なくなっていますが、気象災害よりも予想しにくい上に、字面で考えているよりも大きく影響が出ることもある「動物支障」。では、どういう場所・時期の配信が多いのでしょうか。

レスキューナウにおける「動物支障」配信件数

まず、実際にレスキューナウが配信する「動物支障」は、年間どのくらいの件数で、月ごとや場所の特徴はあるのでしょうか。
まず、弊社で2022年12月から2023年11月までの1年間で配信した鉄道情報のうち、「動物支障」の配信回数は2419件でした。なお、同じ方法で配信回数を集計してみると「人身事故」は2471件と、概ね同じくらいの配信件数で、「動物支障」の配信がそれなりにボリュームを持っていることがおわかりいただけるかと思います。
ちなみに、集計方法としては、新規の情報を配信した段階で「動物支障」だったものを1件としてカウントしています。物理的には1件の「動物支障」であっても、遅れて走行した列車が他の路線にも影響を及ぼした場合は複数件としてカウントしています。予めこの点はご了承ください。この方法で全ての鉄道情報について新規に情報を出した回数は、同じ1年間で28,414件でした。つまり、「動物支障」と「人身事故」はそれぞれ鉄道運行情報の1割弱を占めます。
次に、月別の配信件数を見てみましょう。レスキューナウの鉄道運行情報担当者の間で、「動物支障」は、「秋はなんとなく多いよね、山越えのローカル線も多いよね、冬眠前だからかな」という話が交わされます。実際、その話は本当かどうか。配信が多い月をランキングで見ていきます。

第3位 11月(254件)
秋なので肌感覚と一致した結果でした。特に動物支障が多い路線として、身延線(うち11件)や北陸本線(うち11件)、きのくに線(うち15件)がまっさきに思い浮かびましたが、他の路線もまんべんなく対応していました。

第2位 6月(285件)
意外にも梅雨どきの6月が2位でした。最近の6月はもう夏のような暑さではありますが、暑すぎる7月8月よりは動物が活発になるということでしょうか。雨が降ると植物やキノコ類は豊富に採れそうですが、このあたりは専門でないので、なんとも断言はできません……。

第1位 10月(373件)
堂々の1位は秋らしい10月でした。我々鉄道担当者の肌感覚とも一致するもので、納得がいく結果になりました。赤穂線(うち11件)、身延線(うち15件)、きのくに線(うち20件)、山陰本線[園部~鳥取](うち14件)など、確かに多いな、という路線での発生・配信が目立ちました。

本記事では月単位の対応件数のみをデータとして俯瞰しましたが、引き続き他の事象についての分析や、そもそも「ダイヤ乱れ」って何だろう、というお話をお届けできたら良いなと思います。

レスキューナウは、日本唯一の危機管理情報の専門会社として、鉄道情報も含め、幅広く「危機管理情報」を取り扱っています。
当社も事業拡大中で、積極的に採用をしています。

鉄道運行情報を通じて危機管理について考えてみたい、防災や危機に対する考え方を少しでも広めたい! という熱意のある方は大歓迎です。少しでも興味がありましたら、ぜひ弊社のリクルートサイトをご覧ください。
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