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Vol.6 人口移動について

今回は、転入転出や旅行等も含め、移動を伴う人の動き方について見ていきたいと思います。

○東京都の人口純移動

先日、2021年の住民基本台帳の人口移動報告が発表され、東京都の転入した人から転出した人を差し引いた「転入超過」は5433人で、23区では転出した人が転入を上回る1万4828人の「転出超過」となった、という報道がされたました。
これは、今までの東京一極集中からの大きな転換点となるような気がします。
今回は、このような観点で人の流れについて見ていきますが、RESASではまだ「住民基本台帳人口移動報告」のデータ最新版が2020年になっておりますので、ご注意ください。
ただ、傾向としては見れると思いますので、参考にしてください。

メインとしては、静岡県浜松市を中心に見ていきますが、まずは最初に冒頭にも少し触れた、東京都についてのデータも少し見てみたいと思います。

<地域ブロック別純移動数>

2019年までは右肩が上がりで、全国の地域から東京都内へ人口流入が見て取れます。
ただ、良く見てみると2018年から「東京圏」への流出は始まっており、冒頭でご紹介したような兆候はあったことが分かります。
そして、2020年には、新型コロナウイルスの影響が、その勢いを加速させ「東京圏」への純移動では▲22,844人となっております。
その他地域においては、大幅に流入者数は減少しており、今後の動向が注目されます。

<年齢階級別純移動数>

皆さんのイメージでもあると思いますが、東京に移り住むきっかけとしては、やはり大学等への進学や就職時が多いのではないでしょうか?
実際に進学、就職世代においては、まだ多くの流入があることが分かります。
ただ、その次の、いわゆる子育て世代と言われる年代では、2019年ではまだ流入の状態ではありましたが、2020年には一気に大きな流出となっていることが分かります。
現在は、テレワーク等も進んだこともあり、今後もこれら世代においては、生活環境の改善や新しい働き方をする方がますます増えてきそうですので、注目しておきたい世代ですね。

○東京都の人口の社会増減From-to分析

では、東京都の流入・流出は一体どの地域からのものになっているでしょうか?

<転入超過>

転入超過数は、2015年と2020年を比較すると▲27,437人と大きく減少しています。
また、転入超過県上位10地域を見てみると、2015年にはあった関東圏の「神奈川県」「千葉県」「茨城県」が2020年にはランクされておらず、その他県においてもほとんどが流入者数が減少しています。
(2015年にランクされていた県で、増加している県は「愛知県」のみ)

<転出超過>

転出超過数は、2015年と2020年を比較すると+23,134人と大幅に増加しています。
転出超過県としては、2015年には「埼玉県」のみでしたが、2020年には2015年に転入超過県で2番目の「神奈川県」、4番目の「千葉県」、更に「沖縄県」も加わり4地域となっています。

<転入超過・転出超過の上位地域の時系列>

上記の転入超過、転出超過については、2015年と2020年の単年度比較でした。
単年度比較の場合は対象としたものを比較しやすいというメリットはありますが、その年度が何かしらの要因で特異的に数値が大きかったり、少なかったりするケースがありますので、合わせて時系列で見ることも必要です。

これを見ると「転出超過数上位地域」は右肩上がりで伸びていたのが、2019年から2020年にかけて一気に減少していることが分かります。
また、「転出数上位地域」で見ると「埼玉県」「神奈川県」「千葉県」に関しては、2010年以降徐々に右肩上がりで伸びてきている(神奈川県、千葉県はマイナス幅が減少)が、新型コロナウイルスの影響等により2019年から2020年にかけて一気にその勢いが加速していることが分かります。

ここまでは、東京都の状況について大まかに見てきましたが、これが地方(静岡県浜松市)ではどのようになっているのか見ていきたいと思います。

○静岡県の人口純移動

では、まずは静岡県全体での人口の動きを捉えていきます。

<地域ブロック別純移動数>

まず目につくのは「東京圏」への流出(黄色)です。
ただ、新型コロナウイルスの影響等により2019年から2020年にかけては大幅に流出数が減少していることも分かる。
また、それに合わせて、その他地域においても移動数の数が減少しており、人の移動自体が全体的に縮小していることが分かる。
また、その他としては、2018年まで流出していていた「中部」エリアが、2019年からは流入に転じていることが特徴と言える。

<年齢階級別純移動数>

<地域ブロック別純移動数>で「東京圏」への流出が減少していることが分かったが、年齢化級別で見ると15~29歳までの進学、就職世代にあたる年齢層では、それほど減少していないことが分かる。
やはりこれら世代においては、東京圏への憧れや多くの大学、就職先がある東京圏への移動は今後も続くのでしょうか?
ただ、その一つ上の世代である子育て世代においては、流出数は低下傾向であり、35~39歳に関しては転入(プラス)に転じていることも分かる。

先ほど見た東京都においては、この世代が大きく流出の状態になっておりますので、今後はその方々の受け入れについても視野に入れる必要はあるのでしょうか?
先ほども記載しましたが、東京圏ではテレワークも進んでおりますので、地方でもテレワークを進めていけば、これら東京圏からの流出が続いている子育て世代の方々の受け皿になり得るのでしょうか?
色々と考えていきたいですね。

○浜松市の人口の社会増減From-to分析

さあ、ここからは更に深く静岡県浜松市について見ていきたいと思います。
まずは、浜松には、どのエリアから人が来て(流入)、どのエリアに出て行ってしまう(流出)のかを見て生きたいと思います。

<転入超過>

転入超過数は、2015年と2020年を比較すると▲14人と、ほぼ横ばいである。
転入超過先上位10地域は、静岡県内の近隣市町村、もしくは(恐らく)自衛隊基地等がある地域が多くなっているが、地域的には大きな変化はない。

<転出超過>

転出超過数は、2015年と2020年を比較すると+148人と若干増加している。
転出超先上位10地域は、関東圏エリアの地域が多くなっている。

<転入超過・転出超過の上位地域の時系列>

転入超過先は、毎年上位5地域で転入超過数の構成割合が40%前後で推移しいるが、地域的には大きな変動は見られない。
(主には、「静岡県湖西市」「山口県防府市」「静岡県磐田市」)
ただ、確認が必要なのは、それまで上位10地域にも入っていなかった「静岡県掛川市」が、2019年、2020年に5番目に、また、2015年、2018年に転出超過先になっていた「愛知県岡崎市」が、2020年に転入超過先で7番目になっていることである。
これらはデータだけでは分からないので、現地調査等により実態調査が必要だと思われる。

転出超過先は、毎年上位5地域で転出超過数の構成割合が20~25%前後で推移している。
(主には、「愛知県名古屋市」「神奈川県横浜市」「神奈川県川崎市」)
東京都合計で見ると2015~2017年までは、9~11%程度で推移していたが、近年は7~9%と若干減少傾向である。
また、その他特徴としては、2017年から上位10地域に「大阪府大阪市」がランクされて以降、徐々に増加しており、2020年には2番目の93人になってきている。

○浜松市の人口の純移動数

上記では、転出入についてエリアについて見てきましたが、次は、移動する年齢について見ていきたいと思います。

<年齢階級別純移動数>

まずは簡単にグラフの説明です。
<年齢階級別純移動数>のグラフの赤枠点線で囲まれた部分に「10~14歳→15~19歳」と書いてあると思います。
これは「10~14歳」だった方々が、5年後に「15~19歳」になったことを意味しており、グラフはその5年間で対象世代の人口が移動によりプラスになったのか、マイナスになったのかを意味しています。
また、グラフ内にある点線は、定義として「進学世代」「就職世代」「子育て世代」としております。
では、中身に入っていきます。

<年齢階級別純移動数>では、進学世代(①、②)で大幅に人口が減少するが、就職世代(③)では逆に大幅に増加しています。
そして、下の表にもあるように、進学世代(①、②)の減少幅よりも、就職世代(③)の増加幅の方が大きくなっており、つまりは、これら世代までの間においては浜松市は社会増減の観点においてはプラスに作用していることが分かる。
これは、当地域における産業集積(就職先の多さ)の大きさが寄与していることが仮説として挙げられる。
これらは当地域にとっては、強みであり、今後もこれら特徴を生かしていくことは必要であると思われる。

また、今後の課題としては、④、⑤の子育て世代において⑤の「35~39歳→40~44歳」は、若干のプラスになっているが、④の「30~34歳→35~39歳」がマイナスになっていることもあり、静岡県の「年齢階級別純移動数」のところでも記載しましたが、これら世代は東京では大きな流出世代となっていることもあり、これら世代への対応は何かしら必要なのかもしれません。

<年齢階級別純移動数男女別内訳>

2010→2015年での比較だけとなりますが、純移動の男女別の内訳を見てみます。
これを見ると、進学世代では、男性溶離も情勢の流出が大きく、就職世代では男性よりも女性の流入が少なく、若年層においては女性が地域から減少している傾向がある。

今後は、これら状況から女性が戻れるような環境であったり、働く場所であったり、様々なアプローチを考えて検討していく必要があるかもしれません。

○静岡県の進学・就職者数の推移

上記で進学や就職について少し触れましたので、参考までに静岡県の進学や就職者数の状況について紹介します。

<静岡県の進学者数について>

静岡県の進学者数は、純流入でマイナスで推移しているが、その減少幅は改善傾向にある。
進学先は、「東京都」「神奈川県」「愛知県」で約42%となっている

<静岡県の就職者数について>

就職者数は、純流入でプラスに推移しており、近年は増加傾向である。
また、地元就職率も高く、全国平均を20%強上回っており、これら観点からも先ほども説明したように、当地域の就職先は充実しているように思われる。

○浜松市中区の滞在人口の地域別構成割合

ここからは、転入・転出という観点よりも「関係人口」の観点から、浜松市に、どの地域の方々が来ているのかを見ていきます。

ここでは、2016年と2021年の6月、平日14時に、どこの地域の方々が、浜松市中区に滞在していたのかを表しています。
グラフでは、静岡県内、もしくは県外のどこの地域なのかを分けて表示しています。
静岡県内の方の割合が、2016年、2021年とも約97%となっており、その構成割合には大きな変化は見られません。
また、地域別で確認しても大きな変化が見られません。
では、次に時系列で比較してみます。

時系列で見ても、やはり浜松市中区の県外在住者の滞在人口は、平日・休日ともに上位地域についてはほとんど変化が見られない。
ただ、上位地域である「愛知県豊橋市」「愛知県豊川市」「愛知県岡崎市」は、数年前まで構成割合が25%~35%で推移していたが、新型コロナウイルス発生後は、その割合が更に増加しており、直近では40%ほどになっている。

また、大都市圏である東京と名古屋(東京は東京都で、名古屋市は名古屋市単独で集計)について見てみると、名古屋市からの滞在者は、休日はそれほど大きな差はないが、平日は若干減少傾向である。
また、東京からの滞在者に関しては、平日・休日ともに減少傾向であることが分かる。

これらを分析することで、皆さんの地域ではどのような戦略を打ちますか?

○浜松市の観光等における宿泊者状況について

では、次に観光という観点から少しデータを見ていきます。

<RESASデータ>

浜松での延べ宿泊者数は、「静岡県」「愛知県」「東京都」「神奈川県」で約66%と半数以上を占めており、5番目の「埼玉県」以降に関しては5%以下の構成割合となっており、2020年に関しては上位4地域の影響が大きく反映される形となっている。

また、宿泊者の属性としては、新型コロナウイルス等の影響により、性別では「大人(男性)」、参加形態別では「夫婦・カップル」、「一人」、宿泊者数では「1泊」が、2019年比で増加していることが分かる。

<V-RESASデータ>

上記で<RESASデータ>にて見てきましたが、観光については刻一刻と状況が変わっているため<V-RESASデータ>にて確認する必要もある。

※V-RESASとは・・・
新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響を可視化したものであり、発生前の2019年の同じ時期と比べてプラスに推移しているのか、マイナスに推移しているのかを見ることができます。

●静岡県エリアの宿泊者数動向(予約者の居住地ごとの宿泊者数)の推移

このデータでは、静岡県西部エリア(浜松市が属するエリア)に宿泊される方が、県内の人か、県外の人かを2019年同月比(新型コロナウイルス発生前)と比較してプラスなのか、マイナスなのかを表しています。

2020年5月の宿泊者数は、県内の人が▲95%、県がの人が▲98%まで減少している。
その後、Go toトラベル等により、2020年11月には、県内+382%、県外82%の増加と回復をしたが、その後も緊急事態宣言等の影響により、浮き沈みを繰り返している。

●静岡県への旅行者の宿泊動向(宿泊者の都道府県ごとの比率)

このデータでは、静岡県内に宿泊される方々が、どこの都道府県から来ているのかを見ています。
これを見ると、2020年1月の段階で静岡県内の方が、静岡県内に宿泊される構成割合は6%程度しかなかったが、2020年11月には11%、2021年12月には21%と、約2年の間で構成割合が15%も伸びていることが分かる。
これは報道等でもされている通り、マイクロツーリズムの需要が高まっていることがデータから裏付けられていることになる。
一方、構成割合が一番高い「東京都」の割合は、29%→27%→21%と徐々に減少してきている。

●静岡県西部エリアの宿泊者数動向(宿泊者の分類ごとの宿泊者数)

このデータは、先ほど<RESASデータ>のところでも見ましたが、宿泊者の属性について見ています。

Go toトラベルを実施していた2020年11月では、属性が「一人」が+216%と非常に大きな伸びを示していたが、2021年12月には▲22%となっている。
一方、「女性グループ」が、70%と大きく伸びていることもあり、今までは緊急事態宣言等の影響で抑えていたグループでの旅行ニーズが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まれば、また高まることが想定される。

〇まとめ

今回は、転入・転出から観光等を含めた関係人口についてまで幅広く人の移動について見てきましたが、如何でしたでしょうか?
今回は、一部東京のデータも交えながら浜松市のデータを中心に見てきましたが、自らの地域の人の動きだけを見るのではなく、周りがどのようになっているのかも見ながら分析していくとより深く見ることが出来ると思います。
RESASだけでも、今回のようにある程度の人の動きについて見ることが出来ると思いますので、ぜひ、皆さんもまずは興味本位でも構いませんので、自分の地域について調べてみては如何ですか?

※添付画像の文字が小さく見えづらいと思いますので、必要であれば下記よりダウンロードしてください。



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