女として消費されたくなかった
生まれてから、沢山我慢をしてきた。
我慢をすることが大切だと教えられてきたし、いつか、なにかが変わると思っていた。
"人の輪を乱さないこと"が唯一、人前で言える長所だった。
私はどんどんネガティブになるし、友人知人の前での私と、家族の一員としての私と、一人でいる私が乖離していった。
悲しかったこと、傷ついたこと、悔しかったこと、寂しかったこと、そんな感情に蓋をしようと必死になるが私の頭の中はそれだけで充たされてしまう。
嫌だったな、若い女だからと舐められて、セクハラをされて、セクハラなんてたった四文字のカタカナで片付けないでほしい。
犯罪でしょ。
その数分だけじゃなくて、何年も何十年もフラッシュバックしては苦しくなって女として生まれたことを悔やむ。
そんなこと思いたくないのに親まで憎んでしまう。
なぜ、女に生まれたのか。
なぜ、今の日本に生まれたのか。
なぜ、こんな顔でこんな体型で裕福でもない家に生まれたのか。
幼少期は両親ともに忙しく、送り迎えなどが難しいから習い事をやりなよと言ってくれるわけでもなく。
ただただ時間を持て余していた気がする。
漫画や小説を読み終わると、退屈な私はテレビばかり観るものだから「テレビ観すぎ!!」と母に怒鳴られた。
学校は楽しくなかった。
いじめを受けていたわけではなかったが、気を遣うので疲れる。
家でやればすぐ終わるようなものを授業で何倍もの時間をかけて教わるのが苦痛だった。
教師は絶対的で、「ああ、この人は学校が楽しかったから教師になったんだよな、自分とは違うな」と思った。
「ペアになって」「4人グループを作って」と、いとも簡単なことのように言うのだ。
私みたいに心がヒリつく感覚が分からないんだ、教師達は。
小中は辛かったが、高校に上がると少し世界が広がった。
大学に上がるともっと世界は広がった。
学校は息苦しくない空間になっていた。
しかし、18歳にもなると私は世間から見て「ちゃんと女性」だった。
もちろん全員ではないが、男性がここまで自己肯定感が高く勝手に女性を査定していく人間だと思っていなかった。
男と関わりたくない女の子ももちろんいて、そういう子は女の子同士で過ごしていた。
男に傷つけられたから、もう男とは関わらない。
または、男に浮気などをされ傷つけられたから、その傷は男で癒す!と次の恋に走ったり、色んな人と寝る方向に行ってしまったり。
そういう子が多かった。
男全員を嫌い憎みそれを口にする子はいなかった。
清潔感がなく服装や髪型にも無頓着で性格もひねくれた男達は、当たり前に女性に相手にされない。
そういう奴等は女性を敵とみなし攻撃してくる。
垢抜けていない女の子には「ブスだな、デブだな、俺は無理」
可愛くてチヤホヤされている女の子には「遊んでる、女は楽でいいよな」
自分は人間に気に入られる努力をしないくせに、己のことは棚に上げ人を見下すことばかりしていた。
「女はいいよな」
という言葉を腐るほど耳にしてきたけれど、その女ってある程度顔が整っていて、コミュニケーション能力があって、試行錯誤の末自分に似合うメイクや髪型や服装を分かっている人並みに垢抜けた女の子のことだ。
男より筋肉がつきにくく脂肪を貯めやすいのに少しでも太る(太っていなくても挨拶みたいに使うバカもいる)とデリカシーのないクソオスから「あれ太った??」と言われるし、毎月生理という地獄の1週間があるし、生理1週間前から肌荒れも浮腫みも酷いし、お金と時間をかけ脱毛に通うのが当たり前になってきているし、爪だって自分で磨いたりセルフネイルをしたりネイルサロンに行ったり、三白眼がコンプレックスな子はカラコンを毎日つけるし、夏は日焼け止めと日傘が必要だし。ルールとして身につけなきゃいけないストッキングだってヒールだって苦痛だ。
男性がある程度容姿を垢抜けさせることの方がお金もかからないし簡単な気がするのに、それをやらずに女の最低限のマナーとされる努力はフル無視で「女はいいよな」で済まそうとする。
自分が男として生まれてきたから。
男優位の日本社会で生きてきたから。
女として生まれてくるだけで大きなハンデを背負っているのに。
そこから目を背けるというより、その辛さに気がつくほど賢くない。
性犯罪者は男ばかりで、男の浮気や不倫は「男だから」と笑いのネタとして変換され、男の性欲は「本能だから」と今までくだらないプライドを見せつけてきたくせに、いきなり動物としての本能剥き出しの部分を出してくる。
そういうグロテスクな男という性に嫌気は差さないのか。
気持ちが悪い。
すぐに年下の女の子を性の対象として消費するのも。
本当に気持ちが悪い。
しかしそれを公に口にするのははばかられた。
どう抗っても、女と男では体の作りが違うのだ。
15歳女子と8歳男子とかなら例外だけど、まず力では女は男に勝てない。
常に自分より強くいつ襲ってくるかも分からない人間達が周りで生活している。
自衛を求められるのにそれが少し目につくと「自意識過剰だ、誰があんなブス相手にするか!」と攻撃してくる屑もいる。
自分の着たい服を着ているだけなのに痴漢をされたら「あんな服装をしているのが悪い」と言われる。
心が死んでいく。
女が生きる上で傷つけられることは当たり前なのだ。
女だからこんなに傷つけられる。
女は得しているからいいじゃんと男は言うけど、私は女として得したことなんて傷つけられたことと比べたら40000:1くらい。
「痴漢痴漢言うけど冤罪もある!!」と意見する男もいるが、まずお金欲しさに痴漢をでっちあげることなんてほぼゼロだと思う。
何時間も警察で事情聴取され、触り方などを細かく聞かれ再現され、写真を撮られ、そこから弁護士を介し示談金交渉。
こんなことをするくらいなら割のいいバイトをした方が断然楽だ。
犯人だと思って掴んだ手が違う人の手だったはあるかもしれない。
それは本当に気の毒だと思うが、糾弾されるべきは被害にあった女の子ではなく痴漢をした加害者だ。
痴漢がなければ冤罪なんてないのだから、「冤罪する女消えろ!」ではなく、「痴漢撲滅!」に力を入れるべきなのに、女を傷つけることだけが生きがいのミソジニー達は色々な角度から女を落としてくる。
自分が相手にされないのはおかしい、構って欲しいのに上手に関わることができない、こんな風にしか女性と接することができないのだ。
そのくせ、女を性の対象としてはとことん搾取する。
それは当然の権利だ!と声を大にして。
勝手な想像で女なんて愚かで脳みそ空っぽで…と見下しているくせに、見るからに愚かで脳みそ空っぽな状態で女の子の裸に群がる。
下駄を履かせてもらってやっと生きているくせに女性を見下し、そのくせ女性と関わりたくてどうしようもなくて、女の子達から与えてもらったものを消費しなくては生きていけない、子どもを産むことができない。
そんなオス共に力が強いというだけで、怯えなくてはいけないのだ。
若いうちだけではない。死ぬまでずっと。
小学1年生の時には、もう自分のことを性の対象として見てくる男達がいることを教わった。
常に自衛を求められた。
その間、男の子達はなにを考えていたんだろう。
男が気持ち悪くて、女として見られることに耐えられないのに、身体は着々と成長していき、生理が始まる。
胸が膨らむのも許せなかった、でも自分の性に違和があるわけではなくて。
男というフィルターを通して見る自分が嫌だった。
誰からも消費されたくなかった。
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