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訪問介護の話⑧

「マラッカ海峡を抜けると※にいだかやまが見える。その先をぬけると富士山なんだ」

※台湾の玉山。日本統治時代には、明治天皇により富士山よりも高い「新しい日本最高峰」の意味で新高山と名づけられた。

とおっしゃる、もと自衛官二軍曹のKさんはとても誇りたかい方で

一年中湿気の多いアパートの一階に一人で住んでいる、
ほとんど動かなくなった手で包丁を研ぎ。その包丁はジャックナイフのように反り返っている。

ご自身のお父様が軍人で馬にのって凱旋してきたのに感化され自衛官になった。

もともと。体力気力に溢れていたKさんは瞬く間に昇進したがご自身の奥様が亡くなられ、
オイラはなにを「守る」護るのかと疑問視して早速自衛官をやめ、今のような1人暮らしでいる。

そんなKさんが一度だけ私の前で『おじいさんい悪いことをした』と嗚咽にちかい声で涙を流したことがある、すこじボケてしまった自身のおじいさまに喜んでもらえると
思い胸を張って自衛官の制服をきて帰省したらおじいさまが泣き出してしまったのだと。。
かわいそうな事をしたとKさんは岩のような手で涙を拭った。

もらえるだろう年金のほとんどを辞退して、ひっそりと誇り高く暮らしている。


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