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疲れを感じる余裕すらないOLによる逃避行〜ゲーム【限界OL海へ行く】感想


「もう限界だ」と思った時に遊ぶのがおすすめ

限界になったOLが昼休み終わりに会社へ戻りたくなくて衝動的に海へ行き、そこで出会った人たちと色々話をする、以上! とてもシンプルなストーリー。

ずいぶん前に気になって買ってはあったもののなんとなく遊ばずに積んでいるゲームのひとつでした。今日は祝日。楽しい一日にするぞの意気込みとともに布団から出たはずでした。
それなのに家事を済ませただけで疲れ果ててしまい、椅子に座ってボーッとするだけ。漫画を読んでも内容頭に入ってこない。映画を見るほどの気力もない。そのうちしたい事がない、楽しいことが思いつかないことに思い至り、気がつけば脳内は負の感情でぐるぐるになっていました。「もう限界だ!」と暴れそうになったその時、「そういえば限界になった人のゲームがあったな」と思い出し、のそのそと起動したのがこのゲームでした。

とにかく「ここ」にはいたくなかったのだ

主人公はもちろん「限界OL」。どう限界かというと、昼休み終了15分前に会社へ戻りたくなくて動けずにいる状態。つらいとは言えど、一言も「疲れた」と言わずにいるところがとてもリアルな限界さでした。心の底から疲れている時って、疲れていることも自覚できないのよね。

主人公にとって逃げ出したくなるような、特別しんどい出来事があったわけでもないのでしょう。そして同様に「海に行こう」も特別な決意ある決断でもない。ただ、なんとなく。なんとなく嫌なことが知らないうちに積もって溶けずにいるから、なんとなく海っていいかも。そんな感じ。

決断によるストレスのないゲームシステム

ノベルゲームといえば、選択肢の違いから生まれる多様なエンディングがつきものです。だけどこのゲームにはそれがありませんでした。それはもしかしたらマイナスな要素なのかもしれませんが、限界を感じてこのゲームを遊び始めた私にとってはとてもありがたいものでした。何かを決めるのって、疲れるんです。

主人公と一緒に「あー……」「うん……」「え……」「そうなんだ……」なんていうなんの意味もない声を出し、流されるがままに物語でもない会話が進んでいく。そんなふうにしてただなんとなくそこにいる人と話しているだけで、ちょうど良い温度のぬるま湯に肩まで浸かっているような、しみじみとした休息を味わうことができました。

個人的に一番好きなキャラクター「師匠」

師匠はですね、めちゃくちゃダメな人間です。明るいうちから道端で酒を飲み、明らかに疲れた表情の主人公にコンビニで追加のお酒を買ってきてくれと駄々をこねる。自分で自分を底辺の人間であると言い切る彼女はとても自由であるようにも見えるし、逆に酒に頼らなければ自分を保っていられないほどの辛さを抱えているようにも見えます。

他のキャラクターとは異なりそのへんのバックストーリーは触れられないので想像するしかありませんが、むしろ私はこの師匠がどのようにして今の師匠になったかを想像するのが楽しかったです。

遊び終わる頃には「限界」を脱しているかも

そうやって意味がないことに意味があるような、機知に富んでいそうで別にそうでもなさそうなコミュニケーションを重ねているうちにこのゲームは終わります。

そして私自身は選択肢による分岐も何もないこのゲームを遊び終わった時に「あれ、なんかちょっと、限界ではなくなってるかも」と思いました。決して晴々とした気分ではないけれど、まあ明日もなんとかやっていくかぁというあいまいな気力がふんわりと全身を包んでくれているような感覚です。水を汲むのが面倒でカップ麺のためにお湯を沸かす元気もなかったけれど、まあ、それくらいならやってもいいかなという感じ。

いいゲームを、いいタイミングで遊べたなとしみじみしています。

疲れた、もう嫌だ、なんか海に行きたい、誰とも話したくないけどなんか話したい気もする。そんな時におすすめのゲームでした。なんと今ならスプリングセールで30%オフ。今は元気でも、いつか疲れた時の自分のために買っておきましょ!

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