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Column Vol.5 〜風況観測における鉛直ライダーの種類・前編〜

こんにちは、レラテックの水戸です。レラテックでは、主に風況観測業務を担当しています。

昨年末、国内初の商用着床式洋上風力が稼働を始めました。来年には商用浮体式洋上風力の稼働も控えており、いよいよ日本の洋上風力の幕開けかと思うと、感無量です。

さて、今回のトピックは、風力発電のための「風況観測における鉛直ライダー(以下、「VL」(Vertical LiDAR))の種類」です。

風力発電の建設前には風況観測で得た風況データに基づき、風車の発電量予測や設計評価を行い、事業性評価を実施します。そのため、わずかに風速が異なるだけでも事業性評価に大きく影響することから、いかに正確に風況観測を実施するかが非常に重要となります。

今回は、日本において主に導入されているVLについて、各機種の取り扱いの観点も含めてご紹介します。

日本で使用されているVLの主な3機種


① 三菱電機製のDIABREZZA W

主に、国内官庁や研究機関向けに導入された事例が多い機種です。観測機構は、東西南北の4方位にレーザー光を斜め30度傾けて上空に照射することで観測しています。遠隔監視用のソフトウェアはFirefox専用ではありますが、WEBブラウザ上で実行・操作できるため、実行環境を比較的整備しやすいです。

また、機器ごとに接続先固有IPアドレスを付与し、さらにIDとパスワードが設定されるためセキュリティは比較的高くなっています。設定に関しては、同ソフトウェアから、使用者が観測仕様を細かく調整・設定できる点が特徴です。

また、ACDC変換ユニットや遠隔通信のユニットが別々に設計されているため、電源仕様や現場環境に合わせてユニットを選択することが可能になっています。通信方法はDOCOMO回線の使用が指定のため、DOCOMO電波提供環境下での遠隔監視になります。

★弊社の運用ポイント★
三菱電機製のDIABREZZA Wは、国内での導入事例が多くないため、他2機種と比較すると、使用経験者が少ない機種です。

弊社には、ハード面、およびソフト面におけるネットワーク設定や各種観測設定などに精通した者が在籍しておりますので、ご検討の際はお気軽にお問い合わせくださいませ。

② Vaisala社製のWindcubeV2.1

元はLeosphere社が開発した製品でしたが、2022年4月にVaisala社がLeosphere社を買収し、社名が変更されています。観測機構はDIABREZZA Wと同機構を持ち、本機の遠隔監視用のソフトウェアはFirefoxを含む、基本的なWEBブラウザで実行できるため、3機種の内では最も実行環境を整備しやすいです。

またDIABREZZA Wとは異なり、1つのアカウントで複数台を同時管理することが可能なので、複数機を導入する際には運用がしやすい点がメリットです。

ただし、その反面セキュリティ面においては、アカウント管理を厳重にする必要があります。通信方法はDOCOMO・KDDI・SOFTBANK回線、いずれも使用可能ですので、現場環境に合わせて観測設計が可能です。

★弊社の運用ポイント★
弊社では、仕様に合わせた形で独自に遠隔監視装置を開発し、機器ごとに固有IPアドレスを付与しています。そうすることで機器ごとのアカウント管理を可能とした(=セキュリティを強固にした)観測を実現しています。

③ZX Lidars社製のZX300

上記2つの機種とは異なる観測機構(光源)として、連続波を用いており、低高度(10m)の風況を観測できることが特徴です。具体的には、レーザー光を斜め30度傾けた状態で回転しながら、円錐状に50回照射し、観測する機構になっています。

本機の遠隔監視用のソフトウェアは、専用のアプリケーションが同社によって開発・提供されており、WindowsPCで実行・操作が可能です(MacOSは未確認)。

機器ごとに接続先固有IPアドレスを付与し、IDとパスワードが設定される点と、専用ソフトウェア(ZX保有者しか持たない)が必要な点から、セキュリティは3機種の内では最も高いと言えます。

一方でブラウザ実行ではないため、スマートフォンからのアクセスは不可能、現場の操作ではタフブックなどのPCの携行が必須となります。

通信方法は販売元にもよりますが、基本的にはDOCOMO回線の使用が指定となっており、DOCOMO電波提供環境下での遠隔監視が可能になっています。

★弊社の運用ポイント★
弊社はZX Lidars社の代理店である豊田通商と連携しているので、運用時における観測データの異常発生時などにおいても、迅速に開発元に連絡をすることが可能です。また無電源環境下においても、豊田通商の燃料電池による観測一体でのご提案を可能としています。

各VL機種の特性について

各VL機種を特性とこれまで弊社で実装した際の所感についてご紹介します。

表2 各VL機種の特性

各VLには一長一短があるため、各機種の特性を踏まえたうえでの検討が必要です。レラテックでは観測実績や経験を元に、お客様のサイト環境にあったVLをご提案しています。

後編では、「重塩害対策仕様の派生機種」と「冬季雪害対策のオプション装備品」について引き続きご紹介します。

本記事はレラテックHPでもご覧いただくことができます

レラテックでは風況コンサルタントとして、風力発電のための「観測」と「推定」を複合的に用いた、最適な風況調査を実施いたします。

ご希望のVLがありございましたら、それに基づく観測計画の立案も行いますので、お気軽にご相談ください。

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