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Column Vol.1 ~オーストラリアのエネルギー政策と風力発電市場について~

こんにちは、レラテックの代表を務めている小長谷です。
出張で訪問する東北では、朝晩の冷え込みが強くなり、冬の訪れが早くも近づいているように感じます(まだ早いか)。

今回ご紹介するトピックは「オーストラリアのエネルギー政策と風力発電市場について」です。

国内のみならず、海外での風力発電の動向はよく報道されていますが、不勉強ながらオーストラリアに関する情報を聞いた印象はありませんでした。しかし最近は、オーストラリアの洋上風力発電について、新しいニュースを聞く機会が増えてきたように思います。

そこで、オーストラリアが持つ風力発電市場へのポテンシャルと、現状起きている変化について調べてみました。

オーストラリアが持つポテンシャル

日本とは異なり、オーストラリアは自国産のエネルギー資源(化石燃料、ウラン等)に恵まれた国です。特に、石炭や天然ガスなどのエネルギー燃料の輸出大国であり、2021年現在、世界3番目の国別貿易収支(-296Mtoe)となっています。(図1)

ちなみに日本は+357Mtoeで、世界2番目の輸入大国です。

図1 2021年における総エネルギーの国別貿易収支(Mtoe;石油換算トン)

オーストラリアでは消費エネルギーの大半を火力発電で賄っており(2020-2021年で92.0%)、再生可能エネルギーはわずか8%に留まります。そのうち再生可能エネルギーは、太陽光発電・風力発電・水力発電・バイオマス発電によって構成されています。(図2)

図2 オーストラリアにおける 燃料種類別のエネルギー消費量(左)と再生可能エネルギーの燃料別における発電量(右)の推移

広大な陸地・海洋面積を持ち、自然エネルギーの利用ポテンシャルが高いと考えられているオーストラリアですが、実際には、まだ十分に脱炭素化は進んでいないようです。

また、豊富にある自国のウランを脱炭素化の切り札として原子力発電を用いることに慎重な姿勢を見せています。これは2011年の日本の原発事故以前からですので、日本国内で議論されている原発再稼働と重ね合わせると、原発へのスタンスの違いがとても興味深いと感じます。

ほかにもオーストラリアが持つポテンシャルとして、高風速が挙げられます。

高風速は風力発電プロジェクトにおいて、好ましい条件の一つとされていますが、図3のように、計画海域付近におけるオーストラリアと日本の年平均風速を単純に比較しても、オーストラリアの風は日本の条件よりも良いことがわかります。その上、オーストラリアは広大な海域を有しています。

図3 日本の能代港付近(左)とオーストラリア ギップスランド沖(右)における年平均風速の分布

オーストラリアの近年の動向

2022年にオーストラリア政府は、最初の洋上風力発電の開発エリアとしてビクトリア州沖のバス海峡を指定しました。(図4)その海域の詳細を示す地図が一般市民にも公開され、開発に関するパブリックコメントが現在求められています。

図4 オーストラリア ギプスランド沖での洋上風力の開発候補海域として講評された地図

そしてビクトリア州のすぐ隣に位置するニューサウスウェールズ州でも、洋上風力に係る動きがあります。

2022年にイラワラ再生可能エネルギーゾーン (REZ)で、発電および蓄電プロジェクトが表明されました。パブリックコメントでは44件の関心表明を受け、そのうち8件は洋上風力発電所でした。

同州では、さらに水素製造・水素発電プロジェクトを誘致しているということで、再エネ×水素という「グリーン水素」という展開を重要視しているのではと強く感じました。

アジア・パシフィックとして日本と同じ地域と見なされるオーストラリアですが、こういったさまざまな要因から、今後、有望な洋上風力市場としてさらに注目されていくのではと考えています。事実、欧州からオーストラリアの洋上風力市場に参入する報道が相次いでいます。

一方で、日本は必要プロセスの厳格化・長期化によって、海外風車メーカーにとって以前ほど有望な市場ではなくなっているとの報道もあり、いわゆる日本市場が孤立するようなガラパゴス化が懸念されます。

日本国内の洋上風力発電市場の成長のためには、技術的な観点のみならず、こういった社会経済の視点からの市場形成も急務なのではと、今回のリサーチを通じて考えました。 


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