ドア部の思い出 架空ヶ崎高校卒業文集

2021年
3年21組 端境風

小さいときからドアが好きで、家中のドアを開けて回る子どもでした。
だから、3年間のドア部での活動が何より大切な思い出です。
顧問の夜越外よごそと先生には、新学期初っ端に旧校舎の開かずの扉を開けてご迷惑をお掛けしたにも関わらず、部に誘っていただき本当に感謝しています。
お友達も出来ました。優等生で錠前が大好きな鉤裂競かぎざきくらべちゃん、謎の多い、でも本当は優しいクールなとぼそヒソカちゃん。ドアを見つけたら後先考えず突進してしまう私を、いつも二人がたすけてくれました。三人なら、どんなドアでも開けられると思えました。そうそう部付きの黒猫のピートも大事な仲間です。
夏休みには、部の合宿で海水浴場に行きました。満月の晩、潮が引いて一時間だけ地上に現れる洞窟の奥の扉を私たちが開けてしまって、海辺の村が壊滅してしまったのは本当に申し訳ないと反省しています。同じ海岸に合宿に来ていた相撲部の道返ちがえしくんと太刀殻たちからくんが張り手でかいぶつを追い返してくれました。本当にありがとう。相撲ってすごいね。
夏休みには、もうひとつ事件がありました。登校日に校内の未発見のドアを探していたら、日本式中国拳法部の部室が燃えていて、副部長のLEEくんが倒れていました。先代部長に破門された邪道の門派五天鬼道流(同好会)の檜垣くんによって焼き討ちにあい、部員が全滅してしまったのです。復讐に燃えるLEEくんは敵の総本山に行くと言って聞きませんが、そこは難攻不落の神鉄門と500人の門弟に守られています。話を聞いて、神鉄門が気になった私達は、ドアを開けるところだけ手助けすることにし、なんとか門を開けることに成功しました。復讐も成功したらしいです。
これがきっかけで、私達ドア部は、星の智慧秘密生徒会に目をつけられてしまいました。地下監獄のドアを開けて回ったりしていたせいかも。星の智慧秘密生徒会との戦いは熾烈を極めましたが、本当に危なかったのは、秋の虚像祭で、御神体の中のドアを開けた時に、想像主を名乗る存在に、《ドアのない世界》に飛ばされたときでした。
諦めかけた時、道半先生が遺した言葉を思い出しました。
「どんなドアだって、お前たちには越えられる。制限は自分の中にしかないんだ」
ドアのない世界にも、ほかの世界との壁があり、壁があればドアがあります。「ヒソカちゃん!」形のないものはヒソカちゃんによって形を与えられます。「競ちゃん!」鍵は競ちゃんによって解かれます。「開け!」そして、最後に私が飛び込むと、ドアは開き、騒がしい校内に戻っていました。夜越外先生にはこっぴどく叱られてしまいました。
卒業して、ピートにあえなくなるのは寂しいけど、これからも私たちはやっていきます。いけると思います。
だって、この世界には、まだ見ぬたくさんの、無限のドアがあると思うから。
本当にありがとうございました!



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