キミが大あくびをするあいだに世界中で起きることを数えよう。*諸説あります(制作ノート)

2019年6月1日に配信を開始した[キミが大あくびをするあいだに世界中で起きることを数えよう。*諸説あります](以下大あくび)の制作ノートです。

この曲は配信以前に、弾き語りライブ[アンプラグド・シープVol.5]で初披露しました(2018年4月21日)。ちなみにこのときのライブは新曲が多く、「いまは死ね」「もしもぼくが神さまだったら」「サンデイ・ぶらり・サンデイ」なども発表しました。何曲かは録音をはじめているのでいずれお聴かせできるかと思います。

さて「大あくび」ですが、この曲のアレンジのコンセプトはとにかく目まぐるしさの表現でした。というのも曲中の主人公の一方が窓際でうとうとしていて、もうひとりはそれをじっと見ているというまったく動かないふたりだったので、そのことを強調するために、ふたり以外の世界が高速回転しているイメージを表現したかったのです。

だから思いついたことを片っぱしからぶち込んで行く感じで、アレンジするのが楽しかった。
曲全体を通してティンパニーを多用しています。これはなにかが始まるというワクワク感と、眠りに落ちそうになる手前にハッと覚醒する感じの両方を表しています。
学生のときは眠そうな友達をわっと驚かせて反応を楽しんでいたけど、イントロ部分のうーわーっという叫びがまさにそれです(笑)。もちろんキャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」のパロディでもあります。

なぜキャンデーズ?と思われるでしょうが、[大あくび]のアレンジの根底にはフレンチ・ポップ〜70年代歌謡曲の流れがあります。曲間の「Ah, Ah 〜」というフレーズも郷ひろみさんの曲(誘われてフラメンコ等)に影響されたものです。

フレンチ・ポップでは特に次の2曲を意識しました。曲全体の疾走感としてはフランス・ギャルの「天使のためいき」です。

ヒッピー文化花盛りのフランスで長髪で小汚いと言われていた若者たちを代弁して「髪が長くて男か女かわからないでしょうけど、わたしたちは天使じゃないわ。天使ならこんな酷い世界に降りてこないし」という皮肉たっぷりのこの曲を書いたのは、もちろんゲンズブール。さすがです。

コーラスやオルガンソロなどアイデアをかなり拝借させてもらったのがミッシェル・ポルナレフさんの大ヒット曲「シェリーに口づけ」です。ソロの前だけに入る意味不明なスネアももちろん完コピさせていただきましたよ。

70年代の日本のアイドル〜歌謡界において、60〜70年代のロック中心だったイギリス/アメリカ音楽というのはちょっとぶっ飛びすぎていて参考にしずらかったのではないでしょうか。それゆえオーケストラをバックに使うことの多かったフレンチ・ポップスというものに親和性を見出したのでは、と思います。
また秋元康氏やつんく氏のようにアイドルをトリックスター的にプロデュースするという雛形を作ったのがゲインズブールであると考えれば、日本のアイドル文化の源流はフランスにあると考えるのが妥当でしょう。

ボーカルはダブルトラックになっています(2回歌ったものを一緒に流す)。これはビートルズが初期のレコーディングでよく行った手法で、60年代〜70年代のポップスでよく聴かれます。ボーカルに張りを出す効果があります。

曲の構成はぼく自身の楽曲としては珍しいです。まずサビがない(笑)。Aメロがサビ代わりになっていて、「キミはなんにも知らないで〜」をBとすると

A A B(オルガンソロ)B A A

という構成になっています。

ぼくはストリングスのアレンジが大好きで、「愛しかねえ」(CD「デラシネの花」収録)でもそうですが、この曲でも好き放題にやりました。楽しかった(笑)。

詞に関して言えば、当初パラレルワールドをテーマにして書いていた事を覚えています。いつの間にか大あくびの詞に変わっていた。
あ、大切なことをひとつ。ナノミリという単位はありません。0.05ナノメートルを詩的に(笑)言い換えてみただけですからね。良い子はマネするなよ。

以上のことを踏まえて聴いてみるとまた別の発見があるかもです。
まだ聴いたことがないという方はこの機会に是非。

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