羽物語(制作ノート)

2020年5月30日に配信スタートした楽曲「羽物語」に関する制作ノートです。詞の内容ではなく、主に作曲とアレンジについての覚書きです。

ぼくも他の方にもれず録音をPC上のソフトで制作するのですが、「羽物語」の録音ファイルをみると録音開始日が2017年10月となっています。ほぼ三年前にこの曲を録音しはじめていたようです。メモがわりにちょっとしたフレーズを録音してそれが徐々に膨らむこともあればそのまま放置していたりと、一つの曲の録音が長きに渡ることは珍しくありません。この曲も1〜2年はなにも手をつけていなかった時期がありました。

作曲当時に面白い試みをしようとしていたことを覚えています。曲の前半部分と後半(サビ)のパートを同じコード進行にして、後半を1オクターブ上げて歌う、というものです。昼と夜、地上と空、闇と光というこの曲のテーマのコントラストを表現するのに面白い手法だと思ったからです。
実際それは奇妙な形で実現できました。わかりやすいように簡単な構成表を用意したのでご参照ください。

構成


ここではA〜Cを前半部、D~Fを後半部とします。
つまりコード進行は
A = D ( G / Bm / C(maj7) / D )
B = E  ( Am / Em )
C = F  ( F / C / D )
という風に等しくなっています。
ただ(ここが奇妙なところですが)1小節の長さがDはAの2倍、BとEはまったく同じ、FはCの半分の長さになっています。
ややこしいですね(笑)。
Aは主人公の切羽詰まった感じを出すため、2小節に4つのコードでひとつのセクションを構成しています。それに対してサビでは壮大な感じをだすため、4小節で4つのコードを使うようにしています。この4つのコード進行がまったく同じだということです。
BとEはコード進行も長さも同じですが、ボーカルが1オクターブ上がり、間に入る弦楽器のフレーズも同じくオクターブ上げて演奏しています。
FはCの半分の長さです。主人公の気持ちの総括部分なので、効果的に聞こえるよよう短くしました。

当初の「前半のメロディを1オクターブあげてサビにする」という思惑は叶いませんでしたが、非常に興味深い曲になったと思っています。自分の曲はもとよりこのような構成になっている曲はいままで聞いたことがないからです。

とは言えここまできてこの曲を1〜2年間放置します(笑)。その後に続く展開を考えあぐねてのことですが、ある日主人公の階層を一段下げてみる、を思いつきます(ネタバレか)。さらに
G = D ~ F
という更にどうしようもないド変態な構成にすることにしてようやく完成に向けて動き出します。それが配信を開始する二週間前でした。

Gの部分はそれまでのサビと二重唱になっています。過去に歌を三重唱する曲[Serious Love Song]を制作したことがありました。

羽物語のGパートはサビの部分と二重唱ですが、リュート(弦楽器)のメロディも合奏するようにつくってあるので、実際は3つのメロディを一度に聞くことになります。これは彼女から離れる決心をした主人公の去りがたい心情を表現するのにとても効果的だったと思っています。

アレンジ面でとくに参考にした楽曲はありません。ギターソロは自分の楽曲「花」(CD「デラシネの花」収録)に似ているかな。
ベースのフレーズでこだわったところでは、サビの部分で音をスライドアップさせて上昇感を、またGパートの部分でひたすら音を下降させていったところでしょうか。ここでもコントラストを意識しています。

詞に関しては普遍的というかむしろ古典的な感じがします。楽曲で近いものといえば「きみは天使のようだがおれはマジキモい」と歌うRadioheadのCreepとかですかね。

以上の話でより[羽物語]を楽しんでいただけるようになれば幸いです。
まだ聴いたことがない方はこの機会に是非。


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