CLC - '아니야(No oh oh)':「#9th」の一撃

とりあえず売れ線ぽくしようと思えば、屋外ロケか、屋内ならばdigipedi風につくるかの2択であろうけど、どちらにものっからない、やや古風に見えるCLCの新曲MV。

楽理的にみると、短調よりも長調が好まれる昨今の状況をうけ、デビュー当初の短調路線からシフトしてきた先にたどり着いたのは、Lile~High Heelsで採用されたブルース・ロックの基本となる7th系の和音。今回はその流れを継承しつつも、さらにパワフルな「ソウル・サイケデリック」(註1)を感じさせる音へと展開してきた。

Aメロで使用されている和音にはすべて7thの上に積まれた#9thが含まれている。これはロックでは通称「ジミヘンコード」と呼ばれる際どい和声で、強烈な不協和を含むワイルドな響きが特徴。続けて分厚いホーンセクションとともに盛り上がるサビは、ぱんちゃの用語でいう「宇宙和声」。#9thと宇宙和声と分厚い実演楽器系のサウンドにより、なんともファンキーな楽曲に仕上がっている。

ただ、同じくファンキー路線のMAMAMOOと違い、あくまで可愛い子猫ちゃん感と音とのギャップがあり、そこが魅力といえるのかもしれない。

Aメロ:|Bb7#9, Eb7#9|Ab7#9, F7#9|Bb7#9 |Bb7#9 |Bb7#9 |Bb7#9 |
サビ:|Bb|Ab|Dm|F7|

サビについては|Bb|Ab|Dm|Gb|とGb(VIb)を使うと、より本来の宇宙和声的な壮大な響きが得られるところを、F7(V)と、アーシーに「大地」を感じさせる和音をつかっているところに、独特の洒脱さが醸し出されているのも面白い。

必ずしも今のトレンドを掴んだ感じではないけれども、恐らくは「レトロ」感覚を軸に、安易に「清純」とか(ソウル的な)「オシャレさ」に流されないぞというCUBEエンタの矜持というか、広い世代を対象にしようとする大衆感覚のようなものが感じられて楽しくなってしまう。

註1:シン・ヒョンジュン『韓国ポップのアルケオロジー』(平田由紀江訳、月曜社)で提唱されている概念。60年代の終わりから70年初頭に誕生した米軍基地のステージを苗床にして誕生したバンドサウンド。日本も同時代に似た状況と音楽があったが、日本のグループサウンズ、ニューロックよりもファンク・ソウル色が強いのが特徴といえる。

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