ダイオード電流電圧

パワートランス、ダイオード、コンデンサで作る昔ながらの電源回路

さて、今回は表題のとおり、パワートランス、ダイオード、コンデンサで作る昔ながらの電源回路について解説します。最近は小型で大容量、とても便利なスイッチング電源が多くなり、世の中ではもはや絶滅しそうな技術ですが、ギターアンプやエフェクターの世界ではきっとまだまだ使われる技術ですのでその概念を覚えてしまいましょう。

ほとんどの真空管ギターアンプでは未だにここで説明するような形式の回路が使われています。回路のどこかで故障が起きた時にこの電源回路に影響が出ることが多いため、アンプのメンテナンスをする上では必須の知識ですね。

今回説明する電源回路は、「家庭用コンセントから交流電力を供給され、回路の中で使う直流何ボルトかの安定した電圧源」を作り出す回路です。これを実現するために大まかに以下4つのプロセスが必要になります。

1.絶縁、変圧 ... パワートランスを使う

2.整流...ダイオードを使う

3.平滑...コンデンサを使う

4.更に平滑、電圧制限 ....平滑IC、ツェナーダイオードなどを使う

エフェクター用のよくある 9V AC/DC アダプターを例に考えていきます。

まずは 「1.絶縁、変圧 ... パワートランス」についてです。我々が電化製品を使用する場合電源として家庭用コンセントを使うわけですが、このコンセントから供給される電源が日本国内では交流100V(AC100V)です。おおよそ以下のような波形です。

交流電源波形

オシロスコープをお持ちの方、AC100V を直接測定したい気持ちはわかりますが、プローブを直接コンセントにつないではダメですよ。

AC100V は 交流実効値100V のことで、波の頂点にあたる最大値は おおよそ 140V 程度の電圧が出ています。このあたりはまた後ほど改めて説明しますね。

まずこのAC100V から直流9Vの電源回路を作ろうと思うと、もとになる交流電圧が高すぎていろいろと具合が悪いです。そこで最初にこのAC100Vを回路で扱いやすい交流電圧に変換します。変換後の電圧は最終目的とする直流電圧9Vから逆算で決めていくのですが、結論から言うと交流値で 10V くらいにできると都合が良いです。ここでパワートランスという電子部品を使用します。

パワートランスは以下のような部品です。ACアダプターに内蔵されている一番大きなパーツです。アンプなどにも内蔵されていて出力、消費電力の大きいアンプほど大型で重くなります。上の写真はACアダプター、下の写真はある真空管アンプのパワートランスです。

画像1

画像2

パワートランスに限らずトランスは交流電圧、電流をいったん磁界という磁気エネルギーに変換し、それをまた交流電圧、電流に変換する工程を経ることで、巻線間を絶縁しかつ電圧を自由に上げたり下げたりしてエネルギーを伝達できる便利な部品です。

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