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ハイインピーダンスは実際何Ωか? バッファーって何?

さて、今回はこれまでお話しした内容を踏まえ、「ハイインピーダンス」「バッファー」について説明いたします。おそらく多くのギタリストの皆様が曖昧に認識しているため、きちんと知りたい話の一つではないかと思います。

まず "インピーダンス" は何度か説明していますので、これまで記事を読んでいただいた皆様でしたら、もう取り扱いに慣れてきているかと思います。抵抗の場合は抵抗値、コイルやコンデンサーの場合は"周波数によって変わる抵抗値のようなもの"です。

私たちは、エレキギター〜エフェクター〜アンプの配線を考える際、"ハイインピーダンス"、"ローインピーダンス"などという言葉を耳にします。なんとなく "ハイインピーダンスは不安定、ノイズが乗りやすい"などと言いますが、そもそも「何がハイインピーダンスなのか」が認識が何かはっきりしない、曖昧だとは思いませんか?

実はこれ、残念ながら結構曖昧な部分を含んでいるのですが、できる限り詳しく明確に説明しますね。

電子回路は回路上のある導通地点(よくネットなんていいます)からグランドまでの間には必ずあるインピーダンスが存在します。これは抵抗の直列、並列のように合成インピーダンスとして計算することができ、単純にこれが高い地点を「ハイインピーダンス」、低い地点を「ローインピーダンス」と言います。

余談ですが、抵抗やインピーダンスのように[Ω(オーム)]単位で表す値は、「高い、低い」と表す場合と「大きい、小さい」と表すことがありますが、これは同じ意味で捉えていただいて大丈夫です。

さて、このインピーダンス、いったい何Ωが高くて、何Ωが低いのか気になるところなのですが、実はここに明確な区分がないのです。結構ざっくりとこれくらいなら「高い」かな?といった感覚でハイインピーダンスなんて言ったりします。

何となくの感覚ですが、自分の場合、伝送路なら50kΩ以上くらいだとハイかな?って具合ですが、これはエンジニアによって感覚が違います。例えば、オーディオインターフェースやミキサーののHi-Z 入力のインピーダンスが、メーカーによって結構違うのもこれが原因かと思います。取扱説明書で確認すると、100kΩで Hi-Z としている入力もあれば 1MΩ以上なんてメーカーもよくあります。

ちょっと強引なこじつけかもしれませんが、例えば「背が高い」というときでも、でも何cm以上が高いなどと明確な区分はないですよね。例えばバスケの選手にしては低いとか、小学生にしては高いなどと、高いか低いかはケースバイケースです。

このようにエンジニアは扱っている分野がみな違うため、この感覚的な認識が様々です。

そもそも、インピーダンスはコイルやコンデンサなどが含まれると周波数に依存する値になるため、周波数によって変わることがあります。何Ωをハイインピーダンスと明確に定義しても、ある周波数ではハイインピーダンス、ある周波数ではローインピーダンスのように表現が複雑になってしまいます。

さて、これから具体的にハイインピーダンスと呼ばれる線路のインピーダンスが実際何Ωなのかを以前の測定結果をもとに計算してみましょう。要するにこれが高いからハイインピーダンスなわけです。

以下の回路図はエレキギターのピックアップ〜シールドケーブル〜最初につなぐエフェクターのバイパス状態を想定した等価回路です。

ハイインピーダンス

よく、Aの部分がハイインピーダンス、Bの部分がローインピーダンスなんて言い方をされます。

図の"エフェクター"はエレキギターから最初につなぐエフェクターでバイパス状態を想定しています。これをプリアンプ2で紹介したボルテージフォロワー、いわゆるバッファーとします。電子接点によるバイパス回路を持つエフェクターのバイパス状態はほぼこの状態になります。


では実際伝送路にあたる地点、このシールド線の 芯線(HOT)のインピーダンスを考えてみます。これは 芯線(HOT) から シールド部(COLD) までの合成インピーダンスに相当します。要するにこれが"高い"わけです。

もちろん、このインピーダンスはコイルやコンデンサの成分を含むため、周波数によって大きく変わります。周波数をfとして算出することにします。

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