フジロック後記。俺とお前とダイナソーjr編

「The Wagonの奇跡」

フォールズを後にして
「俺の青春を見なきゃ」と
急ぎ足でホワイトステージへ。

途中の小道から爆音ギターと
あの人の気だるい声が聞こえてくる。

「green mind」のあの曲じゃねぇか!ってことはあの曲と
あの曲はもうやったのか!?
そもそも今何曲目だ!?

客のノリが悪いとマスシスの
ことだから早めに切り上げる可能性も…

急ぎ足はだんだんと小走りへ。

ホワイトステージに着くと
何のことはない。

1曲目だったし、客は大盛り上がりでひと安心。

そして2曲目は「The wagon」だった。
1番好きな曲はベタに「feel the
pain」だが「The wagon」には
思い入れがある。

少し青臭いが当時のことである。

大学時代僕は大学の軽音楽部の
友達とバンドを組んでいた。

軽音楽部に入った当初は
ギターも弾けず、曲も作れず
だったが、バンドをやっていくうちにほんの少しではあるが
弾けるようになった。

もともとリバティーンズや
ナンバーガール、銀杏ボーイズ
、オアシスなど王道なロックなどを聞いていたせいもあって
エモやパンク、ハードコアなど
コアな軽音楽部の風潮になじめない時もあったが、そっち方面を聞くうちに少しづつのめり混むようになりバイトしては
ライブを見に行き、中古CDを
買い漁っていた。

やがてバイト代は底をつき
親に「教科書を買うから」や
「彼女をディズニーランドに
連れてってあげたい」など
嘘をついては仕送りをまた
ライブ代やCD代に注ぎ込んでいた。

本当に色んなライブを見たし
色んな人たちとライブをした。

ブッキングライブを下北沢の
とあるライブハウスでやったが
何も収穫を得られないライブで
精算のとき、当時の店長に
「うちのライブハウスに合ってないよ」と言われた。

その時はムカついたけど
今となってはすごい納得できるし確かなことをズバリ言われたから悔しかったんだと思う。

続けて店長は「オマエらは
八王子のほうが合っている」
みたいなことを言った。

その後、八王子でライブすることになる。

八王子でも色んなバンドとやったけどメロディックパンクというジャンルの人たちが多かった。

ライブハウスの裏にレコード屋さんがあり、行く前からmixiや
ネットで知っていた僕はそこを
訪ねてみた。

ズラッと並べられたCDとレコードの中から
なけなしのお金で何枚かCDを買った。

その時に自分のバンドのCDを
渡したのか、メンバーが渡したのか覚えていないがいつかの八王子でやるブッキングライブにその人は来てくれた。

何を言われたか今となっては全く覚えていないが
来てくれたことがとても嬉しかった。

その後mixiかなんかでライブハウスの裏のスタジオでブッキングライブをやるんだけど出ない?
ってメッセージが来た。

「出ます!」とすぐ返事をした。

確かその人が入っていた
バンドも出てたんじゃないかな?
キーボードを弾いて暴れてたのを覚えている。

とにかくそのバンドも昔からやっているバンドも
とても楽しそうに演奏し歌ってた。

かぼちゃ屋で友達や先輩とやった企画にも出てもらった。

ちょうど今ぐらいの時期だったと思う。

その人はかぼちゃ屋に着いた時点で手首が
パンパンに腫れていた。

「来る前に草野球してたらさー、スライディングしてベースに手首ついちゃってさー」とお馴染みの兄ちゃんみたいな声で笑っていた。

ギターケースを開くとすでにギターの弦が切れていた。確か白のSGだったっけ。うろ覚え。

ギター見ながら2人でゲラゲラ笑った。

その日のその人のライブはとにかく最高だった。

手首ははれているのにアルコールでごまかし
ピースに満ち溢れ、好きな曲は全てやってくれて
さだまさしぐらいの長いMCも相まって
その日の企画は押しに押した。

自分が来てたバイクメーカーのノースリーブを
いじってくれた。

いつぞやかの八王子のスタジオライブの時出番前にその人のi podでSEをかけてくれてたんだけど
それが「The wagon」だった。

その人は爆音でかけながら
「この曲のサビパクった曲あるっしょ?
そっくりなんだもん!」
と笑っていた。

それもそのはず曲ができない焦りでたまたま
聞いていた「The wagon」がハマったので
モロパクリしたのだ。

見事に見抜かれた。
いつも笑ってるけどさすがだなと思った。

曲数も少ないのでその日のライブはその曲を
やる訳だけどただただ恥ずかしかった…

その曲のサビでその人は「The Wagon」風に
手を上げながらシンガロングしてくれた。

2008年ぐらいの大合奏会も最高だった。

ライブ会場中央まで来てマイクなしでの
大合唱会。

学祭でコピーバンドをした時もあった。

いつの間にか、自分はバンドはやめて
その人のバンドも活休になり、僕は留年したり
フリーターしたり、就職したりした。

大学時代電車賃も2000円ぐらいかかるのに
あんなに行っていた八王子も全然行かなくなった。

とある時、その人が亡くなったと
ツイッターかなんかで流れてきた。

ただただ呆然とした。
全然会ってなかったので実感が湧かなかった。

毎年ではないがFacebookでもうすぐ
誕生日と知らせるので、その日になると
思い出したりした。

フジロックの2日目のホワイトステージの
ダイナソーjrの2曲目を聴いた瞬間

その人の思い出がブワーっと蘇ってきた。

「without a sound」「green mind」「where
you been」から満遍なくやってくれて
ジザメリのカバーも最高だったし
(ギターの音が最高)
最後の7secondsか!みたいなカバーも笑った。

贅沢言うと「over it」(スケボーのPV最高)と
「I dont think so」と
「yeah light」とガチンコファイトクラブの曲を
聞けたらと思ったが2曲目の「The Wagon」を
聞けただけで満足だった。

フジロックの余韻に浸るように
今もダイナソーjrを聴いている。

そしてその人がギターを弾きながら歌っている
バンドをyoutubeで漁ってみる。

やはり2008年の大合奏会だった!
ばっちし自分も映っていた。
恥ずかしがりながら手を挙げていた。

やはりクマたっぷりの目で笑っている。
どこかしらJ マスシスに似てなくもないなとも
思う。

「あなたの笑顔は私を笑顔にする」と彼は連呼しながら歌っている。

なんてどストレートな歌詞で素敵なメロディーなんだろう。

彼のお陰でいろんなバンドに会わせてもらったし
色んなバンドを教えてもらった。全て曲が良いバンドばかりだった。
本当に感謝しかない。

フジロック最終日、7月31日。
なんの気無しにFacebookの通知を眺めていると

本日誕生日の人に彼の名前が書かれてある…

スゲー!スゲーよ!と1人で興奮した

7月末の夏とビールが似合うサッカー好きの男の話は
これで終わる。

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