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鷂子入林

疾き鷹、鷂(灰鷹)の物語。

身にローブを纏った初老の賢者は、立ち入らない様にしていた森林へ入る為、ある呪文を唱えて鷹に変身した。鷹は空高く舞い上がった後、森に入った。辺りを見回すと、リスや小鳥たちなど、かわいらしい動物達がいた。彼らは、ややくすみがかった暗い青色の鷹を見るや怪訝な表情をした。鷹は意に介せずそのまま奥へと進んでいった。

途中で小さな池のほとりに出た。そこには白い鳥が横たわっていた。まだ若くて可憐で美しい鳥だ。しかし、弱々しく地面に草臥れていた。鷹はそれを見るや、急降下し白い鳥に近づいた。白い鳥は鷹を見て少し警戒したが、また下を向いた。鷹は眼光鋭く白い鳥の本質を見抜いた。鷹は心の中でこう言った。

「君は優しい。そして周りの者に愛されてる。だが、自分の限界以上に力を使ってしまった。君は、もう自分の事だけを考えていいんだ。私がそのための力を授けよう」

鷹はさらに近づき、翼を大きく広げた。鷹の翼から、7色の光が溢れ、白い鳥に吸収されて行った。白い鳥は、少し驚いた様に見えた。その数分後、白い鳥はすくっと立ち上がり、翼を羽ばたかせた。何か不思議な力をえた様だった。

白い鳥は鷹の方をまざまざと見た。すると、ある事に気付いた。鷹の左胸の毛が剥げている。矢でも射られたのだろうか。また、鷹の眼は鋭いがどこか寂しそうだった。白い鳥は鷹の方を一瞥した後、コクリと頭を下げた。そして、白い鳥は元気よく空へ羽ばたいて行った。鷹は白い鳥が飛び立つのを見守った後、自分の森の方へ飛び去った。

鷹は草原を抜け、再び初老の賢者に戻り、さらに熊に変身して住処である「聖なる森」へと帰って行った・・・。

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