見出し画像

痛ましい事件から学ぶ #直接圧迫止血法

2021年8月6日午後8時30分頃、小田急線快速急行の車内であってはならない事件が発生した。それは無差別刺傷事件。今回の事件で幸いなことに死者は出なかった。なぜ刃物で複数箇所、刺されているにも関わらず、死者が出なかったのか。東京消防庁認定 応急手当普及員(T2121066766)の私が解説していきます。

 □ 死者を出さなかった理由

電車内で発生した事件ということもあって、逃げ場がない状況での犯行が多くの負傷者を出した今回の刺傷事件で死者が出なかった理由。それは、事件発生直後、当該列車に乗車していた医療従事者を集め、直接圧迫止血法を行なったこと。刺された際に多くの出血を確認したということを付近にいた乗客が証言していましたが、出血から5分以内に止血をすることによって今回、死者を出さなかったということが最大の理由です。体重60kgの成人の場合、総血液量は、約5Lであり、そのうち1L(20%)を失うとショック症状が出現し、1.5L(30%)を失うと生命に危険が及んでしまいます。今回、どれだけ出血していたのかはわかりませんが、血液が他人に付着しているという報告が多数相次いだということから、相当量の出血だったと想定されます。その際に「医療従事者の方いますか??」という掛け声と「タオル貸して!!」という掛け声がすぐに起きたことで生命に危険が及ぶ前に直接圧迫止血法を行なったことで死者が出なかったということに、本当に安堵しています。今回の事件が、素早い止血が多くの命を救うという前例となりました。

 □ 直接圧迫止血法とは?

直接圧迫止血法とは、名前の通り、出血部位をガーゼやタオルなどで直接強く圧迫して止血をする方法です。出血箇所や出血量に応じて多少ですが方法が異なる場合があり、臨機応変に対応することが大切です。応急手当の分類はその他の応急手当(ファーストエイド)に当たります。出血部位を押さえる材料としては、1.清潔であること 2.厚みのあるものであること(薄いものを何枚も重ねても良い) 3.出血部位を十分に覆うことができる大きさがあること この全てが達成した物が対象です。出血している場所を素手で触ることは血液感染の原因となるので、できればビニール袋やゴム手袋などを使い、血液に直接触れないように圧迫することが重要です。

 □ 直接圧迫止血法の行い方

直接圧迫止血法の行い方は本当に簡単です。この記事を見ながら実践してみましょう。まず、出血部位を確認したら感染防止手袋(ビニール袋やゴム手袋)を着用し、出血部位にガーゼやタオルなど、とにかく出血部位全体を覆えるサイズのものを直接当て、その上から手で強く圧迫します。片手で止血ができない場合は両手で止血をしたり、体重をかけて止血をします。

画像1

ほとんどの場合はこの方法で止血をすることができます。圧迫しているのに血が滲み出る場合は、圧迫している部分に2枚3枚とガーゼやタオルなどを重ねてさらに強く圧迫します。この際には、絶対に最初に当てたガーゼやタオルを絶対に外さないでください。血液は10分ほど止血すると大体の場合は血小板が固まり、完全に血が止まります。また、出血の種類によっても対応が異なってきます。動脈性出血(大量出血など)や静脈性出血(中量出血など)の際は出血部位を上にあげて出血するか、仰臥位(あおむけ)に寝かせて止血することが望まれます。毛細血管出血(擦り傷など)の際は、生命に問題が起きることはないので安静した状態で止血をします。

 □ まとめ

今回発生した痛ましい事件も含めて、全ての出血に関連していえることは、素早い止血が大切だということです。今回の刺傷事件は素早い対応が多くの命を救ったとして多くの人から評価されています。大変緊迫した状況で直接圧迫止血法に当たることができたことが被害者の今後の社会復帰に期待を得ることができたとすれば、本当に嬉しいことです。いつ、どこで、なにが起きるかは分かりません。ですから、今回の記事で少しでも応急手当(ファーストエイド)に興味を持たれた方は東京消防庁や地方自治体消防局が開催している普通救命講習を受講しましょう。皆さんの活躍で1人でも多くの命を救うことができますように。

▽この記事を書いた人▽
▽東京都内での「普通救命講習」開催ついて▽

2021年7月26日に東京消防庁より東京消防庁管内史上最年少で応急手当普及員の資格を取得しました。(東京消防庁認定 応急手当普及員 [T2121066766])
東京消防庁管内(稲城市•島しょ地域を除く)であれば、普通救命講習(自動体外式除細動器業務従事者含む)を開催することができます。開催をご検討されている方はお気軽にお問い合わせください。Mail:reong.mmy@gmail.com

▽おすすめ記事▽


普通救命講習用資機材購入費用として使わせて頂きます。