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場面緘黙への対応

家庭では話せるのに、外に出ると急に話せなくなるお子さん。幼稚園や保育園から帰って家に入ると急に話し出すお子さん。そういった場面緘黙と呼ばれるお子さんは、1%未満という報告が多いものの確かに存在します。そして、発症は幼稚園や保育園に入る2歳から5歳が多いとされている一方で、「様子を見ましょう」で済まされてしまうことが多いのも確かです。そんな場面緘黙症のお子さんに対しては、早い時期に対応するほど、早い改善が見込めます。そのためには、関係機関との連携が欠かせませんが、そのための保護者が考えておくとよいことをご紹介します。
(参考)日本場面緘黙研究会のサイト

まずは支援方針

場面緘黙について、年齢が幼ければ幼いほど短い期間と少ないコストで改善が見込めます。それなのに、保育園・幼稚園、学校の中には「そのうち話すでしょう」という考えで、基本放置する姿勢を崩さない先生が少なからずいます。親の立場なら「そのうち話す」ことに期待する気持ちも理解できます。でも本当に「そのうち」「期待する」だけでいいのでしょうか?

例えば学年が変わったり、高校入学をきっかけに話し始める事例が報告されていることは確かです。しかし、それ以上に、不登校やひきこもりになっている事例があるのも事実です。

仮に専門的な支援を受けることなく、どこかのタイミングで自然と話し始めることができたとしても、話し始めた人が「自然と周囲に溶け込める」レベルになっているとは考えにくいです。場面緘黙だった期間が長くなるほど、同年代の中で、他者と話す経験が少なくなるわけなので、それだけ問題が大きくなります。成長期に人前で黙ったまま、話すとか自己主張する、発表するなどの練習ができないと、大人になって話せるようになっても、多くの社会場面で困難が生じてしまいます。そういった方に臨床場面で何人も出会ってきました。つまり、早めに解消できるなら早めに対応して、場面緘黙を解消したほうが望ましいのです。

注意点ももちろんあります。

空回りするような対応は逆に事態を悪化させます。年齢が低いほど、周囲の「話させよう」とする雰囲気や態度を、本人が感じないような取り組みが理想的です。また、年齢が上がれば、本人を巻き込んだ取り組みも可能ですが、その際にも、押し付けることなく、「話したければ話す練習する? あなたがやるなら協力するよ?」というような態度が重要です。

年齢や発達段階、本人のモチベーションによって、アプローチが異なります。

上記の支援方針に賛同できるなら、お子さんが場面緘黙となっている場所(大抵は幼保園や学校)との連携を考えましょう。場面緘黙解消のためには、場面緘黙となっている場所で練習する必要があります。そのために、園や学校との協力・連携が重要になります。

その一つとして、進級や進学前の園長や校長など管理職との振り返り面談、進級後すぐに新担任らと行う事前面談について紹介します。

進学や進級前にやっておくこと

3学期(1月から3月)には、特に小学校や中学校では、校長や教頭などの管理職と保護者が面談(振り返り面談)をしておくことが重要です。学校は、保護者が希望すれば面談や相談に応じてくれます。できれば両親で行くことをお勧めします。そして、振り返り面談において、新学期になったらできるだけ早く、新担任との面談(事前面談)を実現してもらうようにお願いしておくことが大事です。振り返り面談の一番の目的は、事前面談の早期の実現です。これは、園から小学校への進学、小学校から中学校への進学時でも基本的には変わりません。

また、例えば、現担任や支援の先生が対応してくれることで、本人にポジティブな変化がみられたのであれば、その事実を説明し感謝を伝えます。そのことによって、保護者が学校のどの部分を評価しているのか、担任にどんな動きを求めているのかが管理職にも伝わります。

そして、やはり重要なのは、来年度の担任です。当たり前ですが保護者が来年度の担任を指名することはできません。それでも、保護者の要望をうまく伝えることは重要です。担任の先生に一喜一憂するこはお勧めしませんが、「できることはやっておきましょう」という精神で、振り返り面談が有効なことがあります。

いずれにしても、1月から3月の間に、「来年度に向けて」話し合いができていると、4月以降にも、新担任との事前面談がスムーズに行われることが多いです。前任者から「完璧に申し送りが行われている」ことはまずありませんが、とにかく4月の早い段階で新担任との事前面談を実現しましょう。

事前面談で伝えること

新担任との事前面談が実現すれば、そこでの第一の目的は、親が、我が子の学校での過ごし方に関心があることを示すことです。

学校では、日々さまざまなトラブルが起きていますが、場面緘黙の生徒は特別に大きな問題を起こさないことが多いので、放置されがちです。例えば、小学校では、暴力をふるう児童や、授業中に立ち歩きがある児童などへの対応が優先されがちです。そんな教室で、「おとなしく座っている児童」には、先生の目が行き届かない可能性が高いのです。そのため、面談をすることで、親が、我が子の場面緘黙に対して心配をしていて、放置ではなく、なんらかの対応をしていきたいという意思表示をするのです。これが事前面談における第一の目的です。

ただし、過剰な配慮を求める保護者という誤解を与えないようにしましょう。最近では、学校に過剰な配慮を求める保護者がいることから、学校側も保護者への対応は慎重になっています。そんな時に、「うちの子は話せません。話せないので、話さなくても安心して過ごせる環境をお願いします」などと伝わってしまったら、担任は「どう話せるようにするか」よりも、「話せなくてもいいように対応」することになります。

もし、今年度の担任が素晴らしい担任だった場合:続投してほしい担任に対しては、「来年度も○○先生でお願いしたいくらいです。笑」と言ってもよいのです。管理職は自分の学校の先生をほめられて悪い気はしません。

もちろん「それは何とも言えないですねえ」と、かわされると思いますが、想いは伝わりますし、担任も後から聞いて、さらに本人に対する取り組みを続けようという気になるかもしれません。

一方、もし今年の担任が素晴らしくない担任だった場合(続投してほしくない場合):原則として、現担任の悪口は言わないほうがいいです。やんわりと「来年度は、私たち保護者と連携してくださる先生をお願いしたいです」とか、「柔軟に対応してくださる先生を・・」とか、「学校での子どもの様子について情報共有してくださる先生を・・」などと伝えます。

管理職との話し合いは、年に一回である必要はありません。年度途中であっても、何かのついでに校長室に立ち寄ればいいのです。

担任の対応が素晴らしい場合には、そのことを手短に伝えて立ち去ればいいですし、望ましくない場合にも、何度か管理職を訪問し巻き込むことで担任の対応を変えることができることもあります。いずれにしても、保護者が学校に何度も足を運ぶことで児童生徒の名前や顔を覚えてもらえます。そうするといろいろなところから情報が入ることがありますし、担任一人に任せきりにならない体制が作れるかもしれません。

以上、REONカウンセリングでお勧めしている場面緘黙への対応の一例のご紹介でした。


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