見出し画像

「最強の音ゲー」ってなんだろうって話。|オトゲラボ。#1『TiamaT:F minor』

音ゲーを始めて16年。気づけば人生の半分を音ゲーや音ゲーに関する事に費やしてしまったな~…と思うが、意外にも音ゲーそのものに対する気持ちを表現する機会はそんなになかったなって思う。大雑把に「あの曲いいよね~」「そうそう、あの曲カッコいいよなぁ~」……おしまい、的な。

自分含め、みんなが音ゲーに対して色んな表現で話す事が増えたら色んな角度から考えることも出来るし盛り上がるよなぁと思い、音ゲーに対しちょっと見つめてみたものを書いてみることにした。音ゲーをやっている人はもちろん、音ゲーをやったことがない人も、文章を通して1人でも伝われば幸いだ。
なんとか隔日~3日に1回投稿できればと思うが、空いてしまったら申し訳ない。

なお、肝心の自分はDTMはおろか作曲なんて小学生4年生の頃に1回やったくらいなため、最低限の音楽知識しかないことをご容赦願いたい。
あと、本文の最後に有料部分がほんの少しだけあるが、投げ銭用のスペースだ。もしこの文章を通して何か思うところがあれば、ほんの少しでいいのでポイと投げていただければ励みになるし、嬉しい限りだ。

では、本題に入るとしよう。曲について、基本的に流れは「曲の概要→感想」の順で進めようと思う。


(ジャケットは公式サイトより引用

【曲データ】
タイトル:TiamaT:F minor
アーティスト:Team Grimoire
bpm:215
演奏時間:2分34秒
初出:CHUNITHM AIR(2017)

<概要>
手を上下に動かして演奏するノーツ(平たく言えば音符のこと)「エアー(AIR)」を搭載し、「三次元音ゲー」というこれまでになかったシステムで一躍人気となったSEGAの音ゲー『CHUNITHM』。
そんな大人気音ゲーの2作目『AIR』の稼働末期に、当時の最高レベルを引っ提げラスボスとして君臨した曲2つのうちの1つだ。いかにもボス曲らしい曲調や鳴り響くガバキック(低音)でボスらしさを強調し、それに恥じない高難易度の譜面で当時のプレイヤーを地の底へ叩き落した。
ただ、もう一方のボス曲はこれを上回る「絶望」であったが、それはまた別の話。


これを聞いた当時大学生の自分は、聴いたとたんにアドレナリンが暴発し、血が沸騰するように騒ぎ立て、気づけば曲ループの連続で毎度ヘドバンをするくらいにテンションが上がっていた。流石にオーバーだと思うが、少なくとも曲再生リストがこれだけで1日1~2時間はこれを耐久再生していた頃があったのは確かだ。今でも通勤時間に1回流すことがあるくらい、よく聴いてる。さすが超低音、俺の身体に沁みつくぜ。

"最強"たる理由とは

しかし、なんでこんなにもシビれたんだろうか。昔の自分はともかく、今の自分で感じていることが1つある。

そう、コイツは「最強の音ゲー曲」なのだ。

何をもって"最強"と位置付けるかは人によるだろう。譜面、曲テンポ、爽快感、気持ちよさ…挙げればキリがない。
では、自分にとってこの曲が"最強"足らしめてる要因は何か。それは「混沌と秩序の狭間で生まれた究極のカッコよさ」じゃないかと思っている。
さすがに意味不明がすぎるので、言葉を足していこう。

[1]混沌―メロディ同士のマジなケンカの果てに

混沌のイメージ図。宇宙の感じが分かりやすいか

この曲を語る上で欠かせないのは、ガバキックことバス(低音)部分だ。ドラムの音にディストーション(※1)をかけ、ただのキックをより重厚なものにした音だが、その重厚さ故にリズムを取ること自体がある種のメロディーに転化することはあると思う。極端だが、曲で言えばm1dy氏の曲なんかはそうだろう。
(※1 歪み。音を変形させる一種のエフェクト(効果)のこと)

さて本題に戻るが、バチバチにやりやってるなーと分かる部分でで分かりやすいのは48秒辺りから始まる部分だ。メロディー部分が流れているのに後ろのガバキックが俺が俺がと言わんばかりに自己主張を続けている。ロックで言えばドラムがベースやギターを差し押さえて暴れているようなものだ。俺のガバキックを聴けと言わんばかりに20秒ほど続く。
そして間奏で少し収まるかと思いきや終わったと共にすぐ戻ってきて、サビ(1分35秒~、以下同じ)は常時鳴りっぱなしだ。

じゃあガバキックにメロディが負けっぱなしかと言うと全然そんなことはなく、こちらもシンプルにして根強い主旋律で対抗している。サビのメインのフレーズはほぼ16分を使っておらず8分で構成されていて、1音1音の根強さが聴くものに訴えかけてくる。

そして面白いのが、サビパートの音構成をよく聴くと、メロディとガバキックの他に、後ろで支えているコーラスパートともう1つのキック音が流れている。どちらもサブとして、メインの役割を果たしている側面が強いと感じる。

ガバキックとメロディーという2つの対立要素にセコンドのように振る舞うもう2つの音。出来上がるのは、主役を取らんとばかりに闘いあう「音の戦争」だ。殴り合うその様は「混沌」と表現するのにふさわしいのではないだろうか。

[2]秩序―ブレないガバキックとメロディの「太さ」

これだけ書くと、「この曲は前衛的楽曲じゃねぇか」と思われるかもしれないがそんなことはなく、むしろ王道路線に近いものだと考えられる。

ガバキックについて、8分や16分が主3連符としての使われている部分がなく(もしかしたらあの超絶速いキック部分が3連符かもしれないが、速すぎて気づかないからリズムキープという意味では問題ないだろう)、そしてbpm200とギリギリヘドバンができるスピードだ。ヘドバンは無理だとしても頭を軽く上下に動かすくらいならできなくは無い範囲だ。自然とノれる。

一方のメロディについても、[1]で書いたように48秒の部分はともかくそれ以外の部分はメインフレーズがシンプルであること、そして繰り返し使われることでより根強さが極まっている。サビのコーラス部分も間奏(1分8秒~)に流れているメロディ進行からキー音が1つ下がっただけで馴染みやすいものになっているから、よりメロディが「太い」ものになっている。

荒々しくもしっかりと図太く立っている様はこの木のようだ(UnsplashTim Petersonが撮影した写真)

そんな「太い」2つの要素がケンカをし出しても、根幹が揺らぐことはない。聴く側はガバキックのけたたましさと対抗せんと主張するメロディーの闘いに夢中であっても、裏ではビッシリと安定したものが根付いているからある種の安心感が生まれる。
それはまるでプロレスのようだ。2人の選手が殴る・技を決める・身体をぶつけ合うといった、下手をすれば一生を棒に振りかねないケガを負うリスクを持った肉体のぶつかり合いの裏には、数多くのルールや不文律の決まりが存在する。だからこそ、観客は安心して観覧ができる。(もっとも、筆者はプロレスを生で観たことがなく見聞のみで話しているため、もし間違っていたら申し訳ない。)

[3]混沌と秩序の生み出す「パワー」

以上が自分がこの曲から感じ取った「混沌」と「秩序」だが、そこから生み出されるものは何か。雑な表現ですまないが、それは「パワー」だと思う。

一般的に、曲は主に4つのメロディラインで構成されていることが多い。クラシックのコーラスの構成であるソプラノ(主メロディ)・アルト(副メロディ)・テノール(副バス)・バスで表現すればしっくりくるんじゃないだろうか。バスがリズムをキープし下地を整え、メロディが華やかに振る舞い曲を盛り上げる。

対して『TiamaT:F minor』はメロディとバスの2部構成に近い。メロディ・サブメロディと、バス・サブバスがお互い根を張りつつもお互いが舞台の上で闘り合う。主役は俺だと言わんばかりに弾け合い、そしてサビ終わりでパーンと散っていく。その後に流れるストリングスの余韻もあり、あれは本当に「争い」をやっていたんだと沁み込んでくる。その様は超新星爆発のビッグバンのような感じだろうか。

イメージ図(WikiImages氏の画像より)

改めてこの曲の「パワー」、2つの要素がぶつかり合っているからこそ出てくる「強さ」があるんじゃないだろうか。少なくとも自分はそう感じるのだ。


Team Grimoire氏の音楽でこの系統に近いのは『C18H27NO3(カプサイシン)』(2013)だろう。『SOUND VOLTEX II -infinite infection-』にて追加された曲だが、洋風チックな雰囲気の楽曲でガバを加えてハイテンポにした感じで好きだ。そこから4年が経ち、この曲が生まれたと考えると、何かドーンと弾けるものがあったのかもしれない。流石に適当言い過ぎたか。

なお、『CHUNITHM SUN(2023)』にて同氏のオリジナル楽曲『Superbia(スペルビア)』が収録された。こちらは上の系統というよりはメロディラインのコーラス・荘厳さがより強調されたものとなっている。個人的にはガバ主体の力強さがより極まっている方面が好きだったりするが、また来ないかなぁとちょっと期待している自分がいる(もちろん、この系統の代表曲『Dantalion』も狂ったくらいに聞いていた時期もあるから嫌いではないが、『TiamaT:F minor』が好きすぎるせいか……。)


以上で、本編は終わろうかと思う。まだまだ語りたい部分はあるが、それはまたキチン言語化できるようになってからやりたいと思う。
今後はもう少しあっさり書いていきたい。今回が長すぎるので。

最後に改めて告知になるが、投げ銭スペースを設けた。拙文ではあるが、こんな文章を最後まで読んで応援したいと思われた方は投げていただけると幸いだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?