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リカバリーゴールは本人のもの

こんばんは! レオ・エースです。
このところは、風が強かったり暑くなってきたりと忙しい気候が続きますね。私は花粉症がまだ収まらず、もうしばらくはどよんとした感覚と付き合っていかなければいけなさそうです。

精神保健福祉分野で働く方であれば、リカバリーゴールというのを聞いたことがあると思います。精神障害を抱える方が困難な状況を乗り越えて、新たに人生を歩みだすときに目標と定めるものがリカバリーゴールと言われます。

リカバリーゴールには、様々なものが設定されます。
自分にあった仕事をすること。
退院や退所をして自分らしく暮らすこと。
一人暮らしを始めること。
ひきこもっている生活から、社会の中へ飛び込んで生活すること。
などなど…。
このリカバリーゴールは、当事者の思いにより決められることが最優先です。それはそうですよね、だってその人の人生はその人のものなのですから。
でも、現実にはリカバリーゴールを精神障害当事者の希望のみで設定されるということは、とても難しいのが現状だと思います。

当事者の最大の壁、それは支援者

人は誰しも自分の好きなように生きることができます。それは日本国憲法で保障された権利です。私たちはその自由を行使して、自分の好きな場所に住み、望む仕事をして、愛する人と結婚して、自分らしい暮らしをすることが可能です。それは人として自然なことです。でも、それが精神障害当事者にとってはとても難しい場合が少なくありません。

統合失調症を抱えるAさんが、実家のある八王子を出て沖縄で暮らしたい、と言ったとしたら、周りの家族や支援者はどう思うでしょうか。
今まで病状ゆえに働くことが難しかったAさんが、正社員として働く、と言ったとしたらどうでしょうか。
通院先の精神科デイケアで出会った女性と結婚したい、と打ち明けたら、周りの反応はどうでしょうか。
そうした夢を語れたこと、目標を持てたことを一緒に喜んでくれる家族や支援者がどれだけいるでしょうか。
私が知っている限りでは、おそらく一緒に喜べる方はごく少数だと思います。さらに言うなら、支援者の多くは「もう一度落ち着いて考えてみようか」と言うのではないでしょうか。

そのように言う気持ちもよく分かります。
基本的に福祉の支援者は、当事者一人ひとりに失敗してほしいとは思いません。それは成功してほしいと思うより強い気持ちかもしれません。なので、今までの当事者を知っている分、「本当に大丈夫だろうか」という心配が先に立ってしまうのです。
他には、こういう理由もあります。
もしそれをやってみることを応援したときに、失敗して今よりも病状が悪化してしまったらどうしよう、自分のせいだと責められるのではないか、という気持ちがよぎることもあるでしょう。
だから、支援者は善意と心配と自らの保身から、Aさんが一歩を踏み出すことをやめさせようとするのです。
その時、支援者は当事者にとって最大の壁となります。

当事者を応援する勇気

でも、これは本当に正しいことなのでしょうか。よく考える必要があります。
前述したとおり、リカバリーゴールは精神障害当事者本人のものです。私たち支援者がすべきことは、挑戦させないことではなく、失敗した時も想定してフォロー体制を整えることです。
本人は、本当に挑戦する物事を理解しているでしょうか。支援者としてできることは情報を一緒に調べ、想定される素晴らしい未来とリスクを分かりやすく説明することです。どのような段階を踏んで、そのゴールにたどり着けるのか、具体的に方法を考えましょう。
これは、福祉支援者には結構勇気がいることです。だって、あえてリスクを冒してこれまで歩んだことのない道を行かせようとしているのですから。
でも、私が地域移行で10年以上入院している方をお世話した時経験したことですが、意外と乗り越えていけるものですよ、みんな。私はその方を支援しているとき、ただ外出に同行していただけでした。最初はその方は外出のたびに具合を悪くしていましたが、そのうち外出を心待ちにしてくれるようになりました。やがて自分から主治医に、「もう入院しているの、飽きました。退院したいです」と言いました。私が感じたのは、自分の支援が良かったのではなく、もともとその方に素晴らしい力があって、それが外出することで呼び起されただけなんだということです。

どんな人にも挑戦する権利はあるし、どんなリカバリーゴールでもOKなはずです。あとは応援する私たち支援者の方が勇気を持てるかどうかが大事なのではないでしょうか。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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