メンヘラバンドマンの作品を出しました

「お兄ちゃんはメンヘラバンドマン‼︎」という作品を制作させていただきました。
販売初日からたくさんの方に手に取って頂き、とてもありがたかったです。

この作品についての気持ちとか、あんま言ってない設定とかを書いてみたいと思います。

『お兄ちゃんはメンヘラバンドマン‼︎』あらすじ

ヒロインは、母親が不倫相手に刺殺された事件をきっかけに、父親違いの兄と出会います。
その兄は、熱狂的、というほどではないものの、そこそこCDを買ったり配信で投げ銭もしている人気バンド「がちゃば」のボーカルでした。
お互いに「家族」という関係に疎いふたりが、家族としての絆を育もうとするのですが、なんか上手くいかずにすれ違っていき、最終的に暴力と性行為に呑まれていくことになります。

妹を犯した兄が号泣して終わるという、救いの少ない作品だと思います。

光お兄ちゃんについて

バンドのボーカルと多くの楽曲の作詞作曲を務める「kirari」本名「来森光(こもりみつる)」は、基本的にはいいヤツです。作品の前半では光の「いいヤツ」感が、後半では「ダメなところ」が出ていると思います。
光の製作時のキャラクター設定はこんな感じです。

問題がありそうな表現は消しました

「過激なパフォーマンス」として想定していたのは、ライブ中に脱ぐとか客席にダイブするみたいなのは当たり前で、MCの時間にバンドメンバーと殴り合いのガチ喧嘩をするとか、マジの号泣と絶叫をするとか、最前の客に向かって暴言を吐いて物を投げるみたいなことくらいまではやります。

父親は子育てに対する関心が極端に薄く、感情的に怒ることもない代わりに、食事をとるとか、風呂に入るという生活に必要な基本的なことを教えることもありませんでした。学校にもほとんど行かせていないため、光の学力は極端に低いです。
愛情がないとか、嫌いだとか、そういうレベルではなく、本当に子供が「見えていない」タイプの親です。(消した部分は差別っぽい表現になってしまった部分です)

家出をして、同じような境遇の友達の家に転がり込んで、音楽活動を始めます。バイト代でギターを買い、ほぼ独学で音楽を作ってネットに公開していたら、一部の同じような気持ちを持つ人たちから支持を得て、そこに「居場所」を見出します。初めて自分がしたことに対する「反応」をもらえたり、「能力がある」と認めてもらえたことが嬉しかったんだと思います。

ライブで過激なことをするのも、「ここまでやっても許してもらえる」という安心感を得たかったり、「本当に許してもらえるだろうか」という試し行動だったりします。なのでエゴサはめちゃくちゃします。

早いうちから親元を離れたことと、家に置いてくれた友人の助けもあり、最低限の衣食住を自分で整える能力を得ることはできました。実は綺麗好きで、調子のいい日は部屋の掃除をしたり、特に水回りを無心で磨いてる時間が好きだったりします。料理もほどほどにはできるみたいです。

20代前半の頃自殺未遂を起こし入院したことをきっかけに心療内科への通院をはじめ、病院を転々としたり薬を変えたり度々ODして胃洗浄されたり医者にキレて通院をやめたり薬の離脱症状に苦しんだりしつつ、今は眠剤ほしさに通院を続けています。眠剤を「おやつ」と呼んでいる。

母親の死を警察から知らされ、事情聴取などを受けた時に、妹の存在を知り、興味を持ちます。
住所を知ると速攻で手紙を書き(躁でした)、今回のお話の冒頭に繋がります。

妹(ヒロイン)について

音声作品のヒロインは「聞き手」なので、あまり癖がない感じにしたかったのですが、光との噛み合わせを考えてお話を書いていたら、そこそこパワーのある子になりました。
ヒロインの解釈は聞き手の皆さんに委ねていますが、設定とかも一応あるので、せっかくなら書いておこうと思います。

生い立ちとかが書いてある

母親はヒロインに対して明確に「悪意」がありました。結婚の邪魔、金がかかる、男を家に連れ込みづらい、等。
また、あまり愛想の良い子ではないので、家に連れ込む男や再婚した男とも度々問題を起こししました。邪魔な上に男に押し付けることもできず、母親はその苛々を日々本人にぶつけていました。

光は父親が引き取ってくれたのですが、ヒロインの父親は蒸発する形で姿をくらましたので、仕方なく手元に置いている、という状態でした。

具体的な「虐待」状態にあったため、ヒロインは塞ぎ込み、自分を見せないようになりました。また、否定され続けたことで自我が薄く、「自分の意志で行動を選択する」ことが苦手です。
そのため、光の手紙に疑問も持たず会いに行くし、同居を提案されたときも受け入れ、光の言動に対して困惑し、どうしていいか分からなくなるとおどおどしてしまいます。
あと、光と同じようにやや口が悪く、冗談を言ってその場を取り繕い、本心を隠す部分もあります。

学校には通っていたため、義務教育程度の知識はあります。学校では友達も少ないながらいました。
高校卒業とともに一般企業に就職しました。
テレビドラマで「がちゃば」の曲を耳にしたとき、なんとなく印象に残ったのでネットで調べ、CDを買うなどしていました。○ikipediaで「がちゃば」を調べたとき光の生い立ちや本名などを目にしています。
配信も3回に1回くらいは見に行っており、月に1〜2回は少額ながらも投げ銭をしていました。(投げ銭した時の反応が面白いから)

ヒロインの母親は、4人目の結婚相手と暮らしている時に(その時に限らずではありますが)不倫をしていました。その際、相手に家族があったにも関わらず、相手から多額の金銭を巻き上げた上で家族と直接対決で揉め離婚まで追い込み、その後一方的に縁を切り姿をくらましたため、恨みを募らせた不倫相手に刺されました。

母親が家に連れ込んだ男と大喧嘩をするのは当たり前のことだったので、揉め事が始まるとヒロインはいつも身を隠していました。そのため、押し込んできた不倫相手に見つかることなく難を逃れました。
目の前で母親が刺されたのはまあまあショッキングではありましたが、母親が死んだことに対するショックはそれほど大きくなく、むしろ「やっと死んだ」とすら思いました。30分ほど母親の遺体を眺めた後、落ち着いて警察に通報しています。

しかし、自分というものがないヒロインは、母親がいなくなった後も、母親の部屋を片付けることができず、引き続き、母がいた頃と同じ生活をしていました。

そんな中、光から手紙をもらい、作品の冒頭につながります。

ふたりの関係について

ふたりとも、「あたたかい家庭」というものに漠然とした憧れを持っています。
そのため、家族として同居を始めてから、「家族」の形を作ってみようとお互いに頑張ります。
だけど、お互いの特性が微妙に噛み合わずすれ違い始め、致命的に崩壊するのが本作品です。

光は、ヒロインを「家族と暮らしていた、普通に毎日仕事に行っていて、自分のことを心配したり優しくしようとしてくれる『ふつうのひと』」だと思っています。
ヒロインは、光のことを「衣食住を己で整えることができ、自分の能力を活かして金銭をえている、『ちゃんとしたひと(すごいひと)』」だと思っています。

お互いがお互いの眩しい部分に劣等感を抱いているので、しんどいんですね。(かなしいね)
本当は二人とも同じくらい欠陥まみれで、お互いに『同族』だと思ってるはずなのに、欠けている部分の形が違うから、その瞬間に裏切られたようにも感じて。勝手に距離を覚えて寂しくなって。

『家族』をうまくやれない自分に嫌気が差したり、相手が悪いと思ったり自分が悪いと思ったり、忙しくて。

「お前が悪くないのもわかるけど俺だって悪くない」

光お兄ちゃんは、どれだけ悪ぶっても優しくて、相手の気持ちを考えてしまうから、そういう言葉になっちゃったんだなあ(感想)

光は気にしいで内向的なので、自分がどんな状態にあるかをある程度理解しています。そのため、調子が悪い時は相手に警告を発することができる、メンヘラとしてはかなり優しい方です。
でも妹はそんな兄を「放っておく」という選択をすることもできず、かといって自分がないから積極的に解決に向かう手順を踏むこともできず、中途半端に関わった結果、地雷を踏み続けています。
また、自分がどんな状態にあるかを理解し、警告を発することができるとはいえ、キマッてしまうと自制なんか一切利かなくなるので、癇癪を起こしてブチギレ散らかします。
ちなみに「放っておいて」と言った時に本当に放っておいても病むので、病み始めたらどうしようもないです。諦めて殴られましょう。

暴力について

結局当サークルの作品から切り離せないのは「暴力」なのですが、光は「暴力」そのものにはあまり抵抗がありません。
日常的にバンドメンバーや対バン相手と殴り合いをしているし、最悪客のことも殴るので、「殴ることはよくない」という知識はあるけれど、行動には結びついていません。
ただ、「年下の女」「しかも家族」を殴ることには若干抵抗があるようで、罪悪感もあります。

光はヒロインに「優しくしたい」と思っています。はじめての家族で、妹だからです。でも客観的な、ふつうの価値観で「優しくする」は光の本質からは外れていて、能力的に「できない」ことです。しかも、なまじ地頭がいいから「できてない」ことは理解してしまいます。

ヒロインもまた、暴力に対して、潔癖的な嫌悪感はありません。痛いし怖いので殴られたくない、殴られるのは嫌だ、という気持ちはあるし、殴られたら痛いし怖いので泣くのですが、日常的なことなので我慢はできてしまうし、殴られたところで相手が自分にとって「いいひと」だったら、受け入れてしまいます。受け入れる、というのは、殴られてもいい、というよりも、積極的に暴力を否定することができない、という感じです。暴力って当たり前だから。否定する能力がないともいえます。

「優しくする能力」のない人間と、「優しくされる能力」のない人間が同居するのは、本当にやめた方がいいと思います(感想)

復讐お兄ちゃんの記事で同じようなことを言ったのですが、「暴力」は基本的に「よくない」です。
殴るという行為は「悪」であり、「加害」です。

でも、暴力の受け手は「この人は悪くない」と思ってしまう。それは、その人が「悪い人」ではないからだと思います。

たまに、スーパーのレジとか、駅とか、役所とかで、難癖つけてキレ散らかしてる年配の方がいらっしゃったりして、「嫌な人だなあ」と思います。
でもきっと、この人にも子どもや孫がいて、友人がいて、笑うこともあるし、いいこともするし、慕われてたりもするんだろうなあ、と思うと、「悪いことをしている」と思っても「悪い人」とは思えなくて、勝手に居た堪れなくなったりします。

だからといって許しましょうとは思わないんだけどね。悪いことはしてるんだから。

完全な善人も、完全な悪人もこの世にはほとんどいなくて。それぞれ「善い面」「悪い面」があるのが人間だと思います。比率の差はあるだろうけど。そもそも「善」も「悪」も人間が勝手に決めた尺度で。

ただ、「あの人は悪い人だった」ときめることって、人の心には必要だと思う。「悪い人じゃないから」と思ったら一生苦しまないといけない。だから、自分の中で「善人」「悪人」のラベル付けをして、生きやすくすることは必要なことだと思います。

光と、ヒロインがこれから生活していくことを考えて、作品や世界観的にはきっと共依存状態でどっちかが死ぬまで一生そのままなんだろうな、と思うし、もし現実に落とし込んで考えるなら、どこかで決別しないとだめだろうな、と思います。

殴られてるのに、レイプされてるのに、「この人は悪くない」と思ってしまう現象、怖いなあと思ってます。

別にそういうことが言いたくて作品を作ったわけじゃないけど、聴いてくれた方々の感想を見ての所感です。

作品はファンタジーだからね。いっぱい怒鳴られて殴られて脳内麻薬分泌して気持ちよくなりましょう。

お詫びと言い訳

今回作品リリース後に、何箇所か編集ミスのご指摘をいただきました。現在は対応完了しておりますが、作品をお楽しみ中に該当箇所が気になってしまった方には、申し訳ないと思っています。

実は今回、初めて編集を外注しました。
お仕事が多忙のため、同人作品の制作に時間を割けなくなり、リリースが伸び伸びになってしまったため、編集を請け負っている方にお願いして編集をしてもらいました。

で、データを受け取ったんですけど。
人の手が加わった状態で完成した音源、自分で聴くのも普通に怖くて。さらっと確認はしたのですが、殴る音やお兄ちゃんの怒声にビビり散らかしちゃって大声で「ごめんなさい!!!」と叫びながらチェックしたため、チェックが完全に甘々でした。

もちろん、発注した方が悪かったのではなく、私の確認の甘さに原因があります。
今後はやっぱり自分で編集するか、気を確かに持って音源をチェックするか、無理そうならチェックをお願いできる人に発注するのも手かな、と思っています。

声優様も熱演してくださり、クオリティの高い効果音もつけてもらいました。また、予告時点から楽しみにしてくださっている方もいたので、視聴者様にはノイズを気にすることなく楽しんでいただきたかったです。申し訳ありません。

今後作品を制作する際には、同じことを繰り返さないようにしたいです。

色々言いましたけど暴力とか怖いの大好きなので、引き続きやっていきたいとおもいます。
今後ともよろしくお願いします。

電子レンジOK

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