開幕3連戦を終えて

球春到来。遂に一軍戦が開幕しました。巨人と同率最下位という、なんとも言えない結果で2022年のオープン戦を終えた東京ヤクルトスワローズ。期間中に神宮の地に3度向かい、2敗の現場を見た筆者の胃は既に崩壊気味。更に開幕の相手は昨年最も苦手とした阪神タイガース。3月24日、不安を募らせながらもBSにチャンネルを回しました。

※このnoteは一戦一戦の解説ではありません。ご了承ください。
※記事内の選手及び元選手は敬称略とさせていただきます。

正捕手がいないということ

中村悠平、西田明央のいない開幕

ヤクルトの昨年の正捕手といえば、中村悠平で間違いないでしょう。捕手としての性能は高く、打撃も年毎にムラはあるものの期待できる選手です。
そんな彼がシーズン開始前にまさかの下半身のコンディション不良で開幕絶望が確定。現在も復帰時期が分かっていません。ならば2020年に活躍した西田明央を使えば凌げるだろうと思っていた筆者ですが、中村の報道記事を最後まで読んでみたところ、なんとその西田、更に嶋も故障している事が判明します。
こっちが絶望したいくらいの異常事態。こうなっては昨年中村と併用された古賀優大、昨年は一軍で見る機会がほぼなかった内山壮真松本直樹の三人でどうにかしていくしかありません。

古賀と内山、両極端なピース

まずはメインで運用されると思われる古賀と内山について触れようと思います。非常に平たく言うと、古賀は守備が上手い代わりに打の期待値が低く、内山は打撃センスがありますが守備面、特に壁性能に不安を抱えています。ひとつ共通点があるとするなら、二人とも肩が強いという点でしょうか。
この3連戦の起用を見るに、基本は接戦、失点を減らすことを想定して守備、経験重視で古賀、大敗が見える場合は守備に拘っても仕方ないので、一軍で勉強をさせつつ、一発逆転を狙い内山を使うのではないでしょうか。幸いスワローズは山田村上を初めとする強力打線を擁しているので、8番に古賀を起用して多少打力が落ちても問題ないでしょう。

忘れてはいけない松本直樹

登録されている捕手は古賀と内山だけではありません。阪神3連戦の最終日に高梨裕稔とタッグを組んだ松本直樹も立派に仕事を務めました。筆者は野球初心者であり、リード・配球についてはさっぱりわかりませんが、過去にも何度かバッテリーを組んでいることからも、松本直は高梨と相性が非常にいいリードが出来る捕手なのではないかと思いました。古賀・内山がいる現状ではおそらく基本第三捕手で、高梨の先発試合はスタメンマスクを被るような扱いになるのではと予想します。かつて原樹理と組んでいた井野卓の立ち位置に似ているかもしれません。

本来内山壮真がいるべき場所

ここまで三人の一軍登録されている選手について軽く記しましたが、ここで内山に一旦話を戻します。
古田敦也臨時コーチが内山にファームで圧倒的な成績を残すように、と言っていた通り、本来であれば内山は下で経験を積み結果を残すべきだと思います。一軍帯同を続けると、勝利に拘る必要があるため、どうしても内山の出番は減ってしまいます。一軍捕手の充実のためにも、中村や西田には早期復帰を望みたいところです。

長年の課題、ショート固定

ヤクルトのショート問題は非常に深刻です。宮本慎也がサードにコンバートされた後、川端慎吾、山田哲人、荒木貴裕など、様々な選手がショートとして起用されるも、守備範囲の狭さ、送球イップスなどを理由に別の場所へとコンバートされていきました。2015年の優勝時には主に大引啓次がショートを担いましたが現在は退団。2021年ですら西浦直亨と元山飛優を併用する形でした。

突如(?)現れた超新星 長岡秀樹

そんな中、オープン戦でヤクルトファンから注目を集め、開幕後は他球団ファンも認知し始めた選手がいます。プロ3年目の長岡秀樹です。
1年目からファームで.250を記録し、同期入団で同い年の武岡とともにヤクルトファンから注目されていた長岡。今年はコロナ離脱で二軍キャンプスタートを余儀なくされた村上宗隆の代わりに一軍キャンプ入り。練習試合でそれなりの結果を残し、オープン戦では徐々に結果を上げ最終的に打率.239を記録。遂には開幕一軍と開幕スタメンを掴むことに成功しました。
ここ3試合の打率は.462とかなり好調です。守備も軽快で、今後も長岡をメインで使っていく可能性が高いでしょう。

西浦、元山は併用されるのか?

これからは長岡が固定されていく可能性が高そうなショートですが、昨年までショートを争っていた西浦と元山はどうなっていくのでしょうか?

西浦は一軍でベンチ入りしており、長岡の不調が続く場合の起用や守備固めで使われる可能性が高いでしょう。打撃成績は正直物足りないですが、守備はヤクルトのショートでは安定している方で、一軍経験も多いです。長岡が左打ち西浦が右打ちであることを考慮しても、暫く西浦はベンチ入りすると思われます。
一方元山は二軍でショート、セカンドとして出場し調整中です。怪我とコロナで出遅れてしまったのが響いている模様で、まだ打撃に不安があります。先日は猛打賞を記録しましたが、それ以外の試合は打棒が湿っていると言わざるを得ません。彼が昨年西浦と併用された理由は主に打撃にあると考えています。同じ左打ちの長岡と争うのは険しい道になりそうですが、まずは一軍に呼ばれるために、もう少し状態を上げてほしいところです。

長岡が1年戦えるに越したことはないですが、一年好調を持続するスタミナがあるかはまだ分かりません。彼らの力もどこかで必要になってくると思います。高いレベルのショート争いを期待しましょう。

上位打線の救世主、サンタナ

サンタナがいることで待てる4番村上の開花

皆さんご存知ではあると思いますが、この3試合でサンタナが予想以上に大活躍しています。既に3HR、好調な長岡と並んで打率もトップ。特に1試合目は彼がいなくては勝てなかったでしょう。本当にとんでもない助っ人です。
サンタナは元々MLBで.280を記録できる優秀な選手であり、NPBで無双することは必然なのかもしれません。

ヤクルトの4番を任されている村上宗隆が本調子でない中、主砲としてサンタナが構えていることは非常に有難いです。村上も一発がでない中、四球で出塁したりヒットを打つなどしてチャンスを作っています。それを返す役割をサンタナが担ってくれることで、得点力の高さを維持出来ているのではないでしょうか。
いずれ村上がHRを打つようになれば、更に上位打線の脅威は増すでしょう。山田・村上・サンタナと続く脅威のクリーンナップが完全体になるのが待ち遠しいです。

油断禁物、阪神逆襲の気配

新戦力が続々と登板、裏に見える大量離脱

結果的にヤクルトは阪神に三連勝という、結果だけ見ればこれ以上ない形でスタートを切ることが出来ました。しかし「なんだ、阪神大したことないじゃん」「今年は阪神をお得意様にでいるのでは?」と考えるのは余りにも早計です。何故かというと、今の阪神は投手離脱がとんでもないことになっているから。ざっくり言うと、

  • 青柳・ガンケル・高橋離脱でローテが半分消滅

  • その他にも複数投手離脱でリリーフ層を削り先発ローテを組む

  • リリーフに調整遅れの選手と入国遅れの新外国人を入れるしかない

と、地獄のような状況であり、特にリリーフの不安定性をどう凌ぐかは今後数週間は阪神の課題になるのではないかと思います。
離脱した選手の殆どは現在2軍調整中で、早期復帰が見込まれます。4/22から始まる阪神との3連戦では、阪神本来の投手層が立ちはだかり、今回のように勝てるとは限らなくなるでしょう。逆にそれでも勝ち越す事が出来たなら、今年のヤクルトは昨年より強いと言っても過言ではないかもしれません。

おまけ:「代打の神様」川端慎吾は不振か、それとも

ここまでは阪神戦から見えたヤクルトの現状の戦い方などの考察でしたが、最後に筆者が尊敬してやまない川端慎吾について少し書き足すことにします。ここまで2打席ノーヒットの川端。果たして今年も代打の神様として君臨することはできるのでしょうか?

高すぎる!?ひとまずBABIPを見てみよう

突然ですが「この選手はバビっている」という文言を聞いたことはありますか?これはセイバーメトリクスという指標のひとつであるBABIPに起因しています。(※「バビってる」はネットの造語です)
そもそもBABIPとは何か。超簡単に言うと、「フェアゾーンに入った打球のうち、いくつがヒットになったか」を現すものです。この数字は長期的に見ていくとだいだい同じくらいの数値に収束するのですが、「バビる」とこの数値が平均よりかなり大きくなります。(野手の場合です。投手は小さい方がいいとされます)
昨年のヤクルトでは主に塩見、川端がバビっていると言えるでしょう。
(参考:BABIPの基準値.300前後/2021年 塩見泰隆.388 川端慎吾.449)
この数値を見るに、昨年の川端はバビりすぎと言ってもおかしくありません。勿論筆者は川端のバットコントロールの高さ、彼が「詰まりながらもヒット」というBABIPが上がりやすくなるバッティングを意識していることは理解しています。しかし、BABIP.449は無視できない程平均を突き抜けているのです。

横浜戦までは気楽に見るべき

「去年の川端はバビりました、今年はバビらないかも」でこの項目を終了させてもいいのですが、折角なのでもう少し書こうと思います。
こちらは昨年の川端のチーム別打率です。
阪神.286 巨人.267 横浜.357 中日.429 広島.529
(今季開幕以降に対決する順に並べています/代打打率ではありません)
この数字を見れば明白ですが、川端は巨人阪神相手が苦手で、「ちょっといい代打」の範疇に収まっているのです。なので巨人戦の3カードで打てなくともそこまで気にする必要はないと思われます。
本当に気にするべきなのは対横浜戦以降、昨年とんでもない結果を残した対横浜、中日、広島3球団相手の際の打撃成績でしょう。ここまできて打たない場合は代打川端というカードの絶対性を疑う必要があるかもしれません。

ファンとしては勿論、彼に昨年と同じような活躍を期待していますし、代打安打の日本記録の更新を狙ってほしいです。ただ、2年連続で同じレベルの成績を出すことは非常に難しく、代打となれば尚更です。昨年に比べて成績を落としたとしても、1年間一軍で使われるような結果であってほしいと願っています。

最後に

なにはともあれプロ野球は開幕したばかり。これから別の場所に綻びが生まれたり、どうにか誤魔化していた部分に穴が開いてしまうこともあるでしょう。ファンは半年の長い戦いを一喜一憂しながら見ていくしかありません。
個人的には連覇はともかく、Aクラスの次の年にBクラスというお馴染みの光景からは脱出してほしいと願うばかりです。
今年の東京ヤクルトスワローズ、そしてセリーグがどうなっていくのか。1ファンとしてこれからが楽しみでたまりません。

出典・参考

データで楽しむプロ野球 2021年度版 川端 慎吾【ヤクルト】打撃成績詳細https://baseballdata.jp/2021/playerB/600011.html

2022プロ野球オール写真選手名鑑(日本スポーツ企画出版社)16、17頁

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