8. ライブハウスでバイトする①

引き続き大学時代のお話。

最初は闇雲にできそうなバイトを探していたが、大学一年生の夏くらいから「音楽に関わる仕事、イベントに関わるバイトをしなければ」という使命感が強くなってきた。なんといっても、憧れはライブハウスだった。

当時の私が知っていたライブハウスは、サークルで使ったことがあるか、先輩が出演していて見に行ったことのあるところくらいだった。東京はライブハウスがジャンルごとに分かれていて、膨大な数ある。職種も「ブッキング」「ドリンク」「受付」「照明」「音響」「ステージハンズ」などさまざまだ。分業制だったり、兼業だったり、システムもライブハウスによって全然違った。

どのライブハウスにいけばいいんだろう?
そもそも自分のやりたいことが「将来イベント関係の仕事をするためにライブハウスで働く経験をしたい」であり、具体的に「音響を極めたい」「ブッキングで企画ばんばん打ちたい」といったものではなかったので、ふわふわしたまま手探りで探している感じだった。

地元でイベンターをやっていたとは言え、東京のバンドには知り合いもいない。自分のこれまでの経験が大都会東京のライブハウス様で役に立つなんて到底思えなくて、とにかくバイトとして使ってもらえて、空気が合うところを探すというのが精一杯だった。

ライブハウスの求人情報というのは、求人誌や求人サイトに載っていることはほとんどない。ライブハウスのホームページを隈なくチェックし、「スタッフ募集」の文字を探す。たいていのライブハウスは仕事内容について細かく書いてあることはない。2〜3行、「音響、照明など」「ブッキング 歩合制 条件応相談」みたいにそっけない文章が並んでいることがほとんどだ。

そして、探していて気づいたのは、「大学生禁止」のライブハウスが意外と多いこと。小さいライブハウスほどフルタイムで勤務できるバイトを探していて、時間に制限のある大学生は対象外だった。他に「自転車で通える人優遇」「自宅通勤のみ(稼げないので一人暮らしの人は採用できない)」というのも結構あった。 

給料に関しても、時給600円代なんてザラ。その頃からすでに違法だったと思うが、その後面接に行ったライブハウスはほとんどそんな感じだった。友達で時給400円のライブハウスで働いている子もいた。

今冷静に見ると、この一つ一つの条件が「ライブハウスのバイトは過酷ですよ、ブラックですよ」と言っているようなものだなと思う。でも当時は期待とドキドキ感に塗れた大学生。そんな求人を見ても全くピンときていなかった。

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