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連句旅「郡上八幡2泊3日」の巻#6 〜街の輪郭〜

連句フェスタ宗祇水に参加し、郡上観光と郡上おどりも満喫することができた今回の旅。
数回に分けて記事にしてきましたが、今回が最終回となります。



喫茶 門

同じお宿に泊まっていた方に「『喫茶 門』に行ってみるといいよ。そこに行けば街のことが何でもわかるから。」と言われていました。
場所をGoogleマップで調べてみても、普通の喫茶店?のようにしか見えず、有名なお店なのか?もよくわからなかったのですが、とりあえず帰りのバスに乗り込む前にお店に向かうことにしました。

街の中心、様々な商店が連なる場所に喫茶門はあります

お店に入るなり明るい声で迎えてくだっさった店主は、古池五十鈴さん。連句フェスタ宗祇水で開会の挨拶をされていた方でした。
後で知りましたが、このお店は開店60周年。古池さんが1963年にオープンされた超老舗喫茶店でした。
喫茶店といっても文化サロンのような存在らしく、私が訪れた時にはちょうど郡上八幡城の城主の末裔の方が来店されていました……!
文化というか、文化のみならず郡上八幡の歴史と人が濃縮されているような場所です。

入口すぐのところにある、あふれんばかりの本棚

古池五十鈴さんは連句フェスタ宗祇水の事務局を発足時から引き受けている方で、他にも長唄の復元など、ここには書ききれないくらい沢山のことで郡上八幡の芸能文化を支え続けている方です。
古池さんに郡上について気になっていたことを質問すると、その答えとそれ以上の情報が洪水のようにどんどん返ってきて、また新しい疑問が生まれてきます。
もっと早くここへ来ればよかった……!!と思いながら、氷の奥にアイスとあんこが潜んでいる美味しいデザート(名前を忘れた)を頬張りました。コーヒーのシロップをかけていただきます。

一緒に付いてくる塩昆布がたまりません

古池さんの今までの文化と人との出会いの、その活動の場所としての中心が『喫茶 門』になっているのかな、と思いました。
ものすごく情報が詰まっている場所なのに、明るくて、柔らかい、不思議な場所です。

古池さんが編集に携わられている『郡上』と『緑湧抄』第一号


連句界のレジェンド 水野隆

連句フェスタ宗祇水と郡上八幡の歴史を紐解くにあたり、もう一人外せない人がいます。
それは詩人の水野隆さん。
連句フェスタ宗祇水の発起人であり、郡上の連句文化を支え続けてきた方。そして現代連句の金字塔といわれている「満天星の巻」の捌きをされている方です。
発句から三句引用します。

晩禱や地に満天星の花幽か 水野隆
 かつて樹たりし記憶透く春 わだとしお
鞦韆に水平線をひきよせて 別所真紀

歌仙『満天星(どうだん)』 捌 水野隆

満天星の巻は日本連句協会のホームページで全文を読むことができるので、気になった方は「現代連句」Ⅰ 、PDFの19枚目をご覧ください。

水野隆さんは、おもだか家民藝館という場所を営みながら郡上の文化と歴史を支えてきた方でした。
残念ながらもう亡くなられていますが、今は水野隆さんの息子さんがおもだか家民藝館を引き継ぎ、連句フェスタ宗祇水の運営もされています。

お土産にぴったりな美濃和紙や手拭いなどが購入できます
店内奥には連句フェスタ宗祇水で巻かれた歌仙がありました

おもだか家民藝館


郡上八幡を旅してみて

連句を始めてしばらくしてから「連句フェスタ宗祇水」の存在を知りました。
地方で開催されている連句イベントってどんな感じだろう?とずっと気になってはいたものの、参加するまでどういうイベントなのかよくわからないままでした。
今回実際に参加してみて、懇親会で参加者のみなさんと話したり、郡上八幡の歴史を知り、街の方々と触れ合っていく中で「連句フェスタ宗祇水がなぜ行われているのか?」「なぜ毎年続いているのか?」といったことが少しずつ見えてきた気がします。
「連句を巻く」という行為には人と人との繋がりが必ずあります。
今回連句フェスタ宗祇水に参加してみて感じたのは、連句がそんな人と人との繋がりを超えた、街や街の歴史に繋がっているということです。
郡上八幡には、連句のみならず様々な文化が根付いていて、それを未来に繋げていく人達が沢山居るということを、今回の短い旅で身をもって体験しながら知ることができました。

深い緑とこんこんと流れる水に沿って、文化と人が輪郭をつくりあげていく街。
帰りのバスに乗りながら心の中で思い描くそんな街の輪郭は、もしかしたら芭蕉や宗祇が生きていた頃の郡上八幡と変わらないのかもしれないな、と思いました。

今回の旅にあたり、連句フェスタ宗祇水実行委員会の方々や街で出会った方々、また小池正博さんには大変お世話になりました。
ありがとうございました。

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