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俳諧奇談連句雑談 その二  梅村光明

 『醒酔笑』(一六二八年編纂・安楽庵策伝・岩波文庫)から、引き続き連歌に関わる笑話を紹介しましょう。


  〈有馬の湯が腰折れに効く〉
 宗祇が有馬温泉に滞在中、人々が寄り合って歌などを詠んで遊んでいるところに出くわし、「ここに居られる旅の僧も、もし思いよりたる事あらば、言うても見給え」と傍若無人の扱いに、「音に聞く有馬の出湯は薬にてこしおれ歌の集まりぞする」。


  〈連歌用語で小言〉
 連歌にうつつを抜かし、寝ても起きてもその事を考えている人の家の軒下にて深夜、小便をする音がしたのでその亭主が咎めて言った言葉。「夜分に居所に来て水辺をはなつものは、人倫か生類か。植物をもって打擲せよ」。    

  〈輪廻は御免〉
 誓願寺の木喰上人の今際の時、田舎から古い連歌仲間の人が手紙を寄せ、「この度死の別れとなりたば、追善に独吟の百韻を連ね参らせん」との内容に、返事をするまでもなく、「我がための弔い連歌めさるなよそなたの口は輪廻めきたに」。


  〈宗祇の謎解き〉
 宗祇が関東への修行の道にて、「ちゃんきのもんき」は何、と人から謎掛けをされ、「富士の雪」と答えた。その心は「何としても解けぬなり」。するとくだんの謎掛けをした人は見る間もなく消え失せた。

     (タイトル写真)眉山を望む ←左端徳島県庁

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