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古今連句形式の解説  梅村光明

連句にはさまざまな形式があります。


*昔からある形式


 三折 六十四句 三花五月 八十八興より三の折を除いたもの。

 二折 二十四句 二花二月 表六句(五句目月)、裏六句(五句目  花)、名残の表六句(五句目月)、名残裏六句(五句目花)。

表合十句 一巻の変化を十句の中で自由に取り扱う形式。発句・脇・第三・四句目の仕立て方は一般的な作法に従うが、四季を詠み込み、月・花・名所・神祇・釈教・恋をあしらう。月花には定座がないのでどこに出してもよいが、素秋を嫌うため月は秋の句に限る。


表六句 初折の表の六句だけで構成される一巻六句の形式。発句が秋季である場合を除き、五句目辺りを月とし、表に嫌う神祇・釈教・恋・無常・病体などを避け、季は二季以上を詠み込む。正花は発句に詠まれた場合以外は詠み込まない。


歌仙 二折四面 三十六句 二花三月 表六句(五句目月)、裏十二句(八句目あたり月、十一句目花)、名残の表十二句(十一句目月)、名残裏六句(五句目花)。芭蕉以後の俳諧の主流は歌仙として、今日まで及んでいる。

短歌行 二折 二十四句 二花二月 表四句、裏八句(折立月、七句目花)、名残の表八句(七句目月)、名残の裏四句(三句目花)

半歌仙 一折二面 十八句 一花二月。歌仙の表六句(五句目月)、裏十二句(七句目月、十一句目花)。

和漢行 歌仙や半歌仙や二十韻など様々な形式で和句(五七五・七七)を発句として、漢句(五言または七言)をまじえて交互に詠み進めるもの。和句と漢句は同句数になるよう配分し、漢句の偶数句には韻字を脚韻として詠み込む。

*新しく創られた形式

糸蜻蛉 糸蜻蛉の4枚の羽根と胴体になぞらえる。ナカ6句は自由律(長句一七音、短句一四音に調整)。林空花氏創案の「胡蝶」のヴァリエーションとして鈴木漠氏が考案。

猪鹿蝶 花歌留多(花札)を用いる新年の遊びとして考案された連句形式で、札の数に因む四十八句。三折、三花・五月・一雪。折にひとつ、「猪」・「鹿」・「蝶」のいずれかをそれぞれ別の作者が詠む。一巻の中に、花札の題材をできるだけ詠み込むのが眼目で特に、恋の二句目は必ず札を引いて詠み、また二折裏に限っては、全員が札を引いて詠み、それによって得点を競い合う遊びともなる。尚、句数・去嫌や表の作法等は、おおむね伝統形式に準じ、座は膝送りが原則となる。浅賀丁那氏の創案。

居待(出花) 十八句。一花二月を「居待」、一花一月で雪または時鳥を入れたものを「出花」と呼ぶ。発句・脇・第三のほかは一切の制約なし。恋は二・三句詠む。岡本春人氏の創案。


オン座六句 一連六句(継ぎ足し連句)。途中自由律の連を任意で定める。長句二十音前後、短句十音前後。「月」「花」の他に「石」「氷」「ロックミュージック」の座を任意で定める。挙句は打越し句を作り終りとする。浅沼璞氏の創案。

胡蝶 二十四句 一花二月 表六句(五句目月)、中十二句(十一句目月)、裏六句(五句目花)。林空花氏の創案。


賜餐 二折四面 十二句 三句四連 一花一月。四季順候。窪田薫氏の創案。

獅子 二折四面 十六句 四句四連 一花一月。四季順候。窪田薫氏の創案。

十二調 十二句。季の句と雑の句、景の句と情の句をそれぞれ半々の配分とする。昭和初期、瀬川露城氏の創案。

十八韻順候式雪月花 十八句 五句目(雪の座)、十一句目(月の座)、十七句目(花の座)。宇咲冬男氏創案。

ソネット(Sonetto) 中世イタリアに起源をもつ脚韻定型詩。ヨーロッパ中に広まり十七世紀初頭のイギリスではシェークスピアが多作し、十九世紀フランスではボードレール、ランボー、ヴァレリーらが秀作を残した。大別して抱擁韻、交叉韻、平坦韻と三種の修辞法がある。イタリア語sonare(共鳴する)に由来。四句・四句・三句・三句の四章に分け、各章にそれぞれの季を入れる。連句への応用は鈴木漠氏の考案

ダブルソネット(蜉蝣) 二十八句 二花二月 表六句、名残の裏六句を三行・三行、裏八句、名残の表八句をそれぞれ四行・四行に分ける。窪田薫氏の創案。

テルツァ・リーマ 中世イタリアに起源をもつ脚韻定型詩。三の倍数行プラス一行で構成。押韻形式はaba/bcb/cdc/ded/efe/fgf/ghg/h
連句への応用は鈴木漠氏の考案。

二十韻 二折 二十句 一花二月。表四句、裏六句(折立月)、名残の表六句(五句目月)、名残の裏四句(三句目花)。東明雅氏の創案。

非懐紙 句数は十八句~二十四句ぐらい。懐紙の理念にとらわれず折も表も裏もなし。月花の扱いも自由とし、序破急の流れの変化を楽しむ。橋閒石氏の創案。

本宝塚 一連七句、三連を元宝塚、四連を本宝塚、五連を新宝塚という。第一連から各連に恋を詠み込む形式で、宝塚歌劇団の組名に因み、雪月花星宙(五連の場合)という字を詠み込むきまり。水沢魚乙氏の創案。

夢想連子 連子(縦格子)を二枚重ねてそれをずらすことで、隙間ができたり閉ざされたりする建具の様式を、複数の韻律句と自由律句が交互に並ぶように擬した連句様式。韻律句と自由律句の句数を調整することで、歌仙や箙など多くの形式に適用できる。木村ふう氏、梅村光明の創案。

六条院 基本は一連六句の四連からなる二十四句。一花四月
源氏物語の光源氏の邸宅・六条院に因み、各連を春邸、夏邸、秋邸、冬邸と呼称する四季順候。季題は各連一季とし発句は当季で必ず恋句とその季の月を詠む。花は春季のみでそれぞれ定座はなし。梅村光明の創案。
                    (「連句辞典」から一部抜粋)

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