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ゆっくり茶番劇とゆっくり老害

大方の予想を超えるものは無いけれど良い発表。「やんちゃな商標登録に対してインターネットはどうするべきか」という好ましい指標になったと思う。ニコニコ動画に限らず、イラストや小説などのネット上の創作全般に適用してもいいんじゃないかと。
もちろん実際に裁判が起こらないと明確な線引きはわからないけど、起こって欲しくは無いので。


昔の話

昔「Terraria」のゆっくり実況を投稿しようとした時に、開発元のRe-Logicに実況動画を作って良いかの確認メールを送ったことがある。英語で実況動画を何と呼ぶのかわからなかったので「Let's Play movie」と書いたことを思い出す。
許可を取ろうとした理由は著作権に配慮したから・・・ではない。当時のニコニコ動画では新作ゲームの実況許さねえ!みたいな空気があり、そこでポストMinecraftとなるであろうTerrariaで自分だけ許可を取って批判を回避しつつ、他の投稿者を出し抜こうと思ったから。要するに法律よりも第三者からの怒られの方が怖かった。

Re-Logicからの返信は無かった(そりゃそうだ)。それでも自分はTerrariaゆっくり実況を投稿し、今でもニコニコ動画をTerrariaで検索すると上の方に来る動画となったが、許してくれているRe-Logicに有難いと思うことはあってもRe-Logicの法的措置を恐れてはいない。そんな遵法精神なので、ゆっくり茶番劇の商標登録に正直そこまで不安や憤りは無かった。

これはもう半分犯罪者のカスの世迷言として聞いてほしいんだけど、どうにもインターネットでは権利者というか、ステークホルダー的な存在の意見が神聖視されがちな気がする。前にもイラストの加工アプリが超法規的措置を有していると恐れられたし、制作側の鬨の声ひとつでキン肉マンの感想は消え、モグ波は消え、ウマ娘のエロを書いたら馬主に潰されるらしい。権利を持っている人が小突いたら大破壊が起こるような、そういう恐怖政治にあえて解釈しようという節を感じる。かくいう自分も「任天堂法務部最強伝説」とか「おっと誰か来たようだ」みたいな話の面白さは理解できるし、厳格な法であらゆるものが白黒はっきりしている社会を人間は本能レベルで求めているのかもしれない。

しかし実際の権利者は「裁判起こすの大変」「裁判しても負けるかも」みたいな弱さがあり、それ込みで世の中が成り立っているようにも見える。これは別にグレーゾーンはこっそりやればOKみたいな類の話ではなく、出るとこ出れば普通にホワイトになり得る。件のゆっくり茶番劇の人が裁判を起こしたとしても商標ではないとか損害は発生していないとかで厳しい戦いになるだろうし、それは法の不行き届きというよりかは長い年月をかけてうまい具合にはまっていったのかなと。

「商標登録でゆっくりが使用不可になる!」と騒ぐのならそれよりもバズったツイートにぶら下がっている神龍の画像リプにまったく許諾がないことを恐れるべきだし、鳥山明先生が利用料10万円の声明をスキップして初手損害賠償1億万円を要求する狂人である可能性も0ではない。が、ほぼ0なので0ということにして楽しいツイッターは成り立っている。

結局、件の人は商標を放棄する方向で動いているらしい。これは無駄にオラついて世間に怒りの感情コストを支払わせた罪として妥当な帰結だとは思うけど、それとは別に商標を取得することやそれを駆使すること自体は悪くないという区別はあっていいんじゃないかなと思います。悪いとしたら司法。


現在の話

今回すごいな~と思ったのは反応の方で、「ゆっくりを守ろう」みたいな風潮が出てきてとんでもない世界だなと思った。のまねこも大概だけどゆっくりだぞあのゆっくり!インターネットの片隅の、生声に自信の無かった我ら陰キャオタクの人形遊びだったゆっくりが!

ゆっくり解説が今や一大ムーブメントとなっているのは承知の上ですが、そっちはなんだかんだで蔑まれている部分もある。有名な「〇〇って知ってる?」構文とか。だから今回大きな動きを作ったのはやはりたくっち氏とかの順当なゆっくり実況だと思う。

正直なところ昨今のYoutubeのゆっくり実況はどれも似たようなテンポ&演出というワンパターンな感じで、ワシらが切磋琢磨していた時代のような個性や熱さが感じられん!老害パンチだ!という印象だった。それでも今回の件がTVニュースになるくらいの存在になるのであれば、あのまま迎合して続けていた方が良かったのかもしれない。ボイロ実況もあんな感じになるのを期待しています。ゆっくり葵やで。

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