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③観る将歴2年の女が指す将になれる場所を探してみる納税編

ステータス
まつお(女・地方民)
 観る将歴2年、社畜歴10年以上、本州外在住、漫画・小説・ゲームが大好きなオタク。フットワークは軽め。
 指す将を6月から始めて、将棋ウォーズを6月の中旬くらいにインストールした(無課金)。以下はスクショと写メからの記録。
6/22 25級
6/24 22級
7/2 12級
7/9  8級
夏 10枚落ち
秋 6枚落ち
冬 2枚落ち
1/1 将棋ウォーズ退会&アンインストール

①前回の記事

 はじめに、前回の記事を沢山の方に読んで頂いたことをお礼申し上げます。

 もともと、オタクな私は理屈臭くかつ頭の中でこね回してはネガティブになる傾向があり、指す将棋を嫌わないためにどこかに出力して吐き出しておこうとnoteを書き始めました。このnoteはチラ裏の怨嗟です。

 Twitter等で沢山の方に読んで貰えたことは嬉しかったのですが、見苦しい怨嗟が指導側の先生方にまで届くことは予想していませんでした。前回のnoteで私が怯えて逃げ出した初等教育「将棋」の子供とは、おそらくは指導側の先生方の在りし日の姿かと思います。在りし日の姿あるいはダイヤの原石を怖がるとは何事かと、直接怒られたら削除しようと怯えていましたが、私が見渡した限り問題の検討や優しいお言葉ばかりを頂きました。

 指す将を始めて早半年、まだ続けております。本当にありがとうございます。

 お金を出して嫌な思いをした方、泣いて子供が大嫌いになったなど私と同じ目にあっていた方々。
「ネット将棋でいいじゃん」に対して
→ボリュームゾーンを抜けないと楽しめない
→ネット将棋に順応できなくて消えた人間の意見は観測出来ない(生存バイアス)
→実物触りたい欲がある
と、問題点をさくさくと切り分けて下さった方々。中でも私の怨嗟を分かりやすく解剖して下さったのは以下のお二方

将棋クラスタの方々、問題点の切り分けが早い!!言語化能力が高い!!マジすごい!!
と、感動したのですが、それこそが生存バイアスではと気づいてしまいチベスナ顔になりました。

生き残りたい。


②行脚/Zero

 前回のnoteで書いた通り、私は自分のステータスが著しく不利であり高確率で嫌な目に合う、もしくはしんどいと最初から予想している。分の悪い賭けをして確率通りにガチ教室から泣いて帰ったのが前回。選択肢が無かったのが一番の理由だが

「楽しくなくても、駒と盤はあるよね」

と思って個別指導枠に申し込んだことを思い出した。
 年齢を重ね、場所を変え、相手を変え、人数を変え、私の人生の数十年で私の自宅に将棋盤と駒が存在したことは一度もない。本は紙派のオタクは将棋盤セットも実物を触ってみたかった。

 買っちゃおうかな…とAmaz●nを検索する日々、数枚の諭吉と引き換えに将棋盤セットを買うくらいの余裕はある。しかし、オタクは地域貢献や文化貢献、聖地巡礼が好きなオタクであった。買うのなら職人さんに諭吉を貢ぎたい。しかし、人生の中で将棋盤セットが自宅に存在したことが無いのだから、当然ながら指す相手が居ない。棋譜の並べ方も分からない。しかし、欲しい。買ってしまおうか、使わないと買えないなら刀とか買えないじゃないか、見て飾るだけでもいいじゃないか。しかし、将棋盤セットは使われてこそではないか、職人さんが悲しまれるのではないか。しかし(以下ループ)

買えなかった。
 指す相手もおらず、棋譜の並べ方も分からず、そんな状態で盤を買ったらお盆かちゃぶ台にしかねないと思ったら買えなかった。

 そんな感じでガチ教室には盤と駒の現物を触りに行った。……のだが、使ったのは塩ビの将棋盤とプラ駒のセットで「コレジャナイ…」とガッカリしたので、私が求めていたのは木製セットだと判明し、願望の解像度が上がってしまっただけだった。
 実物を触りたい欲は満たされることなく、あげく泣いて帰る羽目になった。

個別指導回数券分のお金でAmaz●nした方がメンタルダメージが無い分良かったんじゃ……とか考えてはいけない。

行脚/県境を越えてみた

 前回のnoteの都道府県ガチャを活かし、予告通り県境や海峡を越えて都会に出て「大人用の将棋スペース 初心者&観る将大歓迎」的な場所にお邪魔させて頂いた。

 私が触ってみたかった木製の盤と駒があり、「盤で指したことが片手以下です!」と最初に宣言することで精神のリスクヘッジを図る初心者指す将に、指導の先生方やスタッフの方々はとても優しかった。
「冷静ですね~!」「とりあえずで指した手が全部いい手です!」「ひとつひとつの手に意図がある、すごいですよ」などなど沢山褒めて頂いた。嬉しくて嬉しくて半泣きになりながらスキップして、遠出ついでに御馳走を食べてお買い物をして帰った。
 本当に楽しかった。お礼申し上げます&またお邪魔します。

 県外の大人向けスペースに赴いて沢山褒めてもらってやっと思い出したのだが、ガチ教室の先生と六枚落ちをしていたときに「この辺をもうちょっとさばけたら5~6級の上級者とも渡り合えますウンヌン」と言われていた気がする。
 もしかしなくとも褒めて貰っていたのかもしれないが、隣に座っていたガチ勢子供さんとの会話が「奨励会」「弟子入り」「本戦」という単語が端々に聞こえるようなものであったので

「嘘だッ!!!」

となってしまって誉め言葉だと認識していなかった、至極申し訳ない。誉め言葉を誉め言葉だと普通に受けとれる環境は大事だ、切実に。

そして楽しかっただけで終われるのなら私はnoteを書いていない。
・隣県 日帰り交通費10,000円
・関東 飛行機&ホテル2泊込み70,000円
・関西 飛行機&ホテル1泊込み50,000円
宿泊数が違ったり新幹線と飛行機をミックスしたりではあるが、昨年お出かけした先への各種交通費はこんな感じ。

 本州外のこの県は大学進学率は45%、全国で下から1/4に入り、最低賃金は820円代だ。弊社は高卒採用もしている会社だが高卒女子事務員の基本給は13万で、初年度の手取りは10万以下も珍しくない。資格職以外の若者はすべからく都会に就職する、もしくはいつまでも非正規職の貧困県だ。

 若かりし頃、「関東圏の友人は諭吉越えデパコスとか買っててすごいなあ」と思っていたのだが、そもそも基本給が倍くらい違う。地方在住の同人オタクは全国下位の賃金の中で、全国一律の交通費を捻出するハンデ戦から始まる。印刷代より飛行機代の方が高い。

 将棋を指すのみに出せる交通費とはちょっと言い難い。最寄り隣県ですら往復4時間、私(大人・女・初心者・本州外在住)にとって、将棋を楽しく指せる場所は贅沢品だ。

行脚/県内で探してみるアゲイン

 折角始めたのなら月1~2回くらいは指してみたい(ネット将棋?知らない子ですね)。隣県への交通費は出せなくはない値段だが、県内で指せる場所があるにこしたことはない。それはそう。

「○○市内の○○で初心者向け将棋教室オープンします」

マジで??
「将棋 ○○(地名」で検索することがめっきり習慣化してしまったところに、市内のお知らせでこれを見つけたときは目を疑った。ありがとうリアルラック。
 しかし、初心者教室は大概子供さんが対象なので土曜日開催だったり平日の夕方だったりする。ご時世の煽りを受け、月の労働時間が195時間を超えたパケット定額社畜は当然働いている時間帯だ。

有給休暇を申請し、事前に電話を掛けてアポイントを取り、菓子折りと名刺を持参して、個別指導枠はありますかと尋ねに行った。もはや仕事なのか趣味なのかも分からなくなって来たが、有休も菓子折りも、新幹線や飛行機代より全然安い。
 オタクはそこそこ長くオタクをしているので、趣味とは必ずしも楽しいばかりではなく、楽しむために労力やお金が必要なときがあると知っている。そしてここまで必死にならなければならないのは、選択肢がないからだ。

意地だ。自分が好きで始めた趣味を、楽しい思い出の一つも無いまま、嫌な思いをして泣いたまま辞めてたまるかという意地だ。結論から言えば、将棋教室はオープンしたてだったので個別指導は行っていなかった。

私が大人のマンツーマン指導1人目の生徒になった。


エキシビションマッチ/屠られてみる

 行脚的には完結だが、子供と混ざらないで済む環境を確保した私は心の余裕が出来たので、見学ついでにスマホで遊んでいた有段者の小学生さんに「お暇でしたら指して頂けませんでしょうか」と屠られに行ってみた。

マゾではない。

 銀を真横に動かすレベルの頃だったので、10分保つか…?と予想しつつの対局は3分20手くらいで終局。感想戦もなく、子供さんは何事もなかったかのようにスマホのネット将棋に戻った。

なるほどこれが巷でよく聞く初心者大人からの住民税徴収。

 大人は大人なので指す将ではなくとも「子供には負けてあげるのが一番」ということを知識としては知っている。つまり、大人の敗北というのは子供に「大人に勝つ」という経験を与えている。
 私は将棋界の未来に貢献したのだ。

なんて!!思うわけが!!!ないだろ!!!!!

 大人の初心者は、子供の頃に大人に負けてもらった経験も、指す将棋の楽しい思い出もまだ持っていない。その状態で屠られるというのは、財布を持っていない状態からお金を取られるのに等しい。大人という社会的身ぐるみを肥やしとして徴収され、文字通り身ぐるみを剥がされた気分になった。
 住んだことのない市町村からお金を取られて「これは住民税なの、私はこの市町村の未来の肥やしになれたのだわ」なんて思えるほど、私は人間が出来ていない。

メソメソ泣きながらガチ教室から帰っていたときの話だ。
 ガチ勢子供さんが個別指導で隣に座ったとき、あまりの居場所のなさと緊張で、強い子供の機嫌を取ってへつらおうとしたことが私にはある。
「ねえ、ここどうしたらいいかな?」
と子供さんに尋ねでもすれば、自分の恐怖が少しはマシになるかと考えてしまった。

しかし、個別指導とは親御さんが子供のためにお金を出して買った枠であり、続くかどうかも分からない初心者大人と交流するための時間ではない。それだけはしてはいけないとも思った。
「普及と銘打って奉仕を要求するなと言った身で、実際にしんどい目にあったら強い男児に擦り寄ろうとするのか」
と、そういう手段を考えた自分の社会性、裏返って弱者仕草とでもいうのだろうか。自分がほとほと嫌になって、情けなくてまた泣いた。

 ボコられて来なくなった大人や女性の話はそこそこ聞いていたので、進んで体験しておくことで途絶を防ぐ手だ。事故的に対局させられたら泣きたくもなるし、ストップを掛けてくれなかった周囲に逆恨みの一つも持つことは想像に難くない。
 もう数年は子供の横にも対面にも座らなくてすむ環境を確保した後だからこそ自分から屠られに行ったのであって、順不同ではない。未来への還元は、もうちょっと貯金が貯まってから考えたい。

 ちょっと予想すればしんどいと分かることを予想もしない方のために書き始めたnoteだが、まがりなりにも社会人をしてきた自分と、自分を育てた環境を否定する機会が多すぎて途方に暮れる。
 私が万が一数年後に「貴女が指す将になれないのは居場所を探す努力が足りないからよ」などとのたまうようになったら、このnoteを見せて殴って欲しい。

無論 泣くまで。


⑥次回

 ありがたくも地元で先生が見つかったので、現在は毎月コーヒー片手にのんびり将棋を教わっている。短期目標として「評価値表示のない番組や大盤解説会を楽しめるようになりたい」と伝えていたので、先日評価値なしの大盤解説会を見に行って楽しめたときはとても嬉しかった。

 10枚落ちから2枚落ちになったお祝いにマイ駒と駒袋を買って、年明けには将棋ウォーズを削除した。note的にはハッピーエンド完結なのだが、やりたいことはもう一つあるので次回は1年後くらいに。

 怨嗟なんぞ2度も読めば飽きると思う。観ると指すを反復横跳びしつつ、楽しいだけの面白みのないnoteを書けますように。