劇団経営道場#2「プロの定義」
「プロの劇団」であることをアイデンティティとする私たちは、「プロフェッショナルとは何か?」という定義を、しなくてはなりません。
私は、人に説明する時は、前号の冒頭で述べた「アルバイトをせずに劇団活動で生計を立てている」ことを、プロの演劇人の定義としています。これはあくまで私たちの用いる定義なので、当然他の考え方もあるとは思います。しかし、私たちが私たちを語るための定義ですから、「そんなのはプロとは呼べない」とか、「私たちの考えるプロはこうだ!」と言った論争はしません。それは少なくとも今のところは、各々が好きに考えればいいと思います。
ですが、この「アルバイトをしていない」というシンプルな定義は、なかなかインパクトがあるようで、それは「演劇やってる人は食えないからバイトしてる」というイメージがやはり非常に世の中で強いからでしょう。「プロの劇団です」と言うと、大概は「ほへー」と感嘆のお声を頂戴します。
そして、つい先ほど「論争はしない」と述べたものの、その定義を少し見つめなおす、というのも有意義かもしれません。他のジャンルの「プロ」と比較してみましょう。 わかりやすいのは、プロボクサーやプロボウラー、プロゴルファーなどです。これはある権威ある機構が実施する「プロテスト」に合格すれば、プロです。しかし、プロボクサーもランキングが低いうちは、アルバイトをしなければとても生活できない、と言います。この場合は、プロテストという関門を超えていることが「プロの条件」であり、それが生業になっているかどうかは、問題になっていません。
次に「従事する事が国家資格で厳しく規定されているもの」であれば、例えば医者や弁護士がそうです。無免許で仕事をすれば、罪に問われてしまいます。最近は例えば公認会計士のような超難関資格を取得しても、仕事がない(食えない)という状況もあるようなので、極端に言えば、食える食えないはプロの定義とは関係がありません。
こうして見ると、「第三者認定系」のものは、食えなくてもプロ、という図式がなりたちます。
演劇の場合はプロテストも国家資格もありません。となると、客観的に第三者に対して「プロなんですよ」と言うためには、「アルバイトをしていない」という事がシンプルでわかりやすい、と私は考えています。
どうしてそこまで「プロであること」にこだわるかは、次回に述べたいと思います。
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