黒Gの悲劇#9 あとちょっとで、本番!

 黒G「おお〜、なかなか良いですね〜。みなさん拍手!」

 活き活きと自信を持って子ども達が演じているリハーサルを見ながら黒Gは、コミュニケーションティーチャーが来ない間にも、みんながI先生と共に何度か練習したのだと確信した。

 もちろん、そういう形で「演劇WSの発表のために、時間を割く」ことについては、賛否が分かれるところであろう。学校での時間の使い方が、シビアかつタイトになっていることは、重々承知している。コミュニケーションティーチャーは外部から来た「演劇と演劇指導」のプロであり、担任の先生は言うまでも無く、教育のプロである。プロとプロの仕事として、先生が「コミュニケーションティーチャーが居ない時に、練習をする・しない」についてどういう判断をしても、それを尊重しようというのが、演劇WSを提供する側の考え方である。そして当然のことだが、練習をすれば発表のクオリティは向上するし、多くの場合は子ども達の自主性の増進や、自信の獲得につながる。だから、「練習した方が良いですか?」と聞かれれば、「学級経営の余力があるなら」という前提条件で、それらの効能やメリットを説明するようにしている。

黒G「では、次はシーン2のゲネプロをやってみるけど、その前に間違えたところとか、もっとこうした方が良いよとか工夫できそうなところを、ちょっと話してみようか」

 出演した子ども達同士で、あそこは立ち位置がかぶってしまったからズラして立とうとか、少し出番が遅れたとか、いっぱしの俳優ぶりを発揮して確認しあっている。

 この調子で、シーン2からシーン4まで、次々とゲネプロが続けられ、確認がなされた。シーン2の出番でセリフをトチッたI先生は、「本番は間違わんように頑張ってや!」と子ども達に励まされていた。

 そんなこんなで、開演時間は待ってはくれない。休み時間開始を知らせるチャイムが鳴ると、観客となる1年生が教室に向かって来た、という情報が届いた。

 休み時間にトイレに行ったりお茶を飲んだり、そしてセリフを確認したり…。いよいよ、本番である…!

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