黒Gの悲劇#6 俳優として、伸びに伸びていくお子たち…!

◆2コマ目

◇おさらいトレーニングと発展トレーニング

黒G「みなさん!1週間ぶりのこんにちは!」

 再び黒GとN田が、T小学校2年1組の子ども達の前に帰ってきた。前回の内容をもとに、黒Gが作成した台本を子ども達に事前配布してある。しかし、それを覚えておくように、という注文はしていない。台本はあくまで中間生産物であり、それ自体がこれからまだまだ変わっていくからである。

黒G「今日も、ビシビシトレーニングしていきますから。ちゃんと付いてきてや〜。では、また『美しい』円になって!」

 いきなりだが、子ども達は心得たもので、ゾロゾロとそれなりに迅速に円になる。なかなか美しい円が作れている。担任のI先生も、輪の中に入っている。それもそのはず、I先生は本人の希望もあって、キャスティングされているのである。

黒G「俳優にとって、すごーく大事なのは、『声』です。せっかく黒ちゃんが苦労して台本書いたのに、みんなが『ボソボソボソ』って何言ってるかわからんようにやったら、台無しやからね!今から、発声練習をします!右手に、皮をむいたゆで卵を持ってください!」

 黒Gが、右手に卵を持ったパントマイムで、ムニュムニュやって見せると、子ども達も要領を理解して、それぞれムミュムニュしている。

黒G「では、次は、口をあくびの形にして、さっきの卵を、口の中に入れます。そのまま、低い声でア〜っと声を出して〜」

子ども達「…?…?…。ア〜〜」

 これぞ、蓮行流発声術の奥義「あくび卵発声」である。大人向けであれば、なぜこういうトレーニングが必要かという理論的なレクチャーも入れるし、小学校の高学年以上の場合は、導入にまっすぐ立つトレーニングを入れる。低学年向けには、とにかくウォーミングアップ的に、のどを開き、口を立てに開けて、低い声で声を出させる、ということをシンプルにやってもらう。本来は、国語の朗読や、体育の前にもやってほしい。

 モジモジ恥ずかしがって、照れ笑いの子も居たが、先生を含めたみんながやっているのを見て徐々に真似してやりだし、クラスの全員が、あくび卵発声をひとしきり実施することができた。

黒G「はい!うん、なかなかいい声ですね。今日はなるべく、低いエエ声を出すのを心がけて、練習してください。次は、俳優としての専門用語、つまりプロの俳優が使う言葉をみなさんに教えます。じゃあ、黒板の方を舞台ということにしますから、皆さんちょっと前を開けて、ここらへんが客席になりますから、座ってください」

 教室の前の方を舞台に見立て、真ん中から後ろあたりを客席ということにし、子ども達に体操座りしてもらった。

黒G「舞台の、お客さんから見て右の方(手で示す)を、『上手(かみて)』と言います(言いながら、黒板に『上手』と書く)。上手、じゃなくて『かみて』だからね。そして、反対の左側は、『下手(しもて)』と言います(板書する)。舞台の奥の方は、そのまんま『オク』と言います(板書する)。そして、お客さんに近いところを、『ツラ』と言います(板書する)。そして、舞台の真ん中は『センター』(板書する)。わかったかな?じゃあ、最初はここのグループ出てきて」

 当てられたグループの子ども達は、今度は何だ?という感じでゾロゾロ出てくる。

黒G「では、上手に集まって!」

 一瞬、事態が飲み込めない様子を見せたものの、そうか!とばかりに教室ドア付近に、固まる子ども達。見ている子ども達も、何が行われているのか、理解した様子だ。

黒G「次は、下手の奥!」

 今度は、教室の窓側の黒板の前に、みんなが集まった。グループを交代して、「上手・下手ゲーム」が進んで行く。黒Gからの出題も、「上手のツラから、下手の奥に、ダラダラ歩く!」などと高度になっていく。やる方も見る方も、笑いながら舞台空間の呼び方と使い方を体感していくのである。

 このゲーム、小学2年生でも十分に理解できる。これを経ておけば、空間演出がぐっとしやすくなるし、「俳優の専門用語」というのが、子ども達の「背伸びしたい意識」をくすぐるのである。

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