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FIREではなくFREEがいい(2)

フリーランスについては、ダニエル・ピンクの「フリーエージェント社会の到来」を読むのがいい。20年くらい前に出版された少し古い著書だけど、今でもとても参考になる。

今だと意外な感じがするが、アメリカも1980年代までは終身雇用が普通で、日本と同じようなサラリーマンが普通だったということだ。
1990年代になると、グローバル競争が激化して、巨大企業でも終身雇用を維持できなくなり、リストラが日常になったのは、もうどの企業も定年まで社員の面倒を見る余裕がなくなったからだ。
企業自体の寿命も短くなり、合併や消滅も頻繁で、新陳代謝が進んでいる。

最近はAIやロボット技術が発展しているから、今後多くの単純労働が消えていくだろう。事務、販売、工場労働などの単純労働は無人化が進んでいくことが予想されている。

日本は解雇規制が強いとされているが、企業による雇用の限界、企業自身の短命化、テクノロジーの発展などにより、会社が正社員を定年まで面倒を見るという終身雇用スタイルは確実に消えていくことだろう。
今後は特定の一社に正社員で滅私奉公するスタイルはとてもリスクが高い。

21世紀初頭から、アメリカではフリーランスが労働者の1/4くらいになるまで顕在化していたけど(今はもっと増えて1/3くらいだとか)、日本はこれから徐々に本格化していくだろうと予想している。
政府と民間、調査の対象、方法によってだいぶ開きがあるようだけど、日本は5%〜20%だそうで、本業と副業のフリーランスも全て合わせると、最大で約20%となるみたいだ。

ただ、一番の問題は誰でもすぐにフリーランスになれないことだ。
特に大企業などで働いている多くの人は、社内限定スキルばかり上達して、労働市場で明確なスキルを提供できるスペシャリストではないことが多い。
メンバーシップ型組織で馴染んだ人が急にプロジェクト型に移行するのは困難だ。いきなりは無理だから、それなりの準備が必要になる。

しかし、社会の大きな変動期は、変化に対応できない人は生き残れない。
リンダ・グラットンが「ライフシフト」で書いたように、人生100年時代は20世紀までの教育、労働、老後の3ステージ制が限界で、マルチステージ制になることが確実だ。
また、これからは企業どころか、職業自体がなくなる厳しい時代だ。
変化の激しい時代には、対応の早さ、柔軟さが必要だから、フリーランスやポートフォリオワーカーというスタイルがいいのではないだろうか。

これからは、新しいスキルを定期的に積み、横の人脈を広く持つことがとても重要になるだろう。実績と信用という無形資産はとても大切だ。
職業資産は金融資産よりも重要になるかもしれない。

FIREは労働を早めに終わらせて、老後の時間を長くする考えだけど、早期に引退して100歳まで老後時間を送る人生は果たして可能なのだろうか?
仮に50歳で早期引退したら、老後が人生半分の50年もあることになる。
50年間という長い歳月を支える豊富な財産があればいいが、ほとんどの人は無理だろう。
仮にいま、豊富な財産があったとしても、恐慌、戦争、災害などの事故があって、財産の多くを毀損するようなことがあったら、人生は詰んでしまう。
ごく一部の人を除いて、50年という長い期間、財産を安定して維持するのは現実的ではない。

「FIREではなく、FREEがいい」というタイトルにしたけど、自分も含めて多くの人はFIREは現実的ではなく、FREEで生きていかなければならない厳しい時代になった。早く自覚して、自分でライフシフトしなくていはいけない。
そんなことを思って、新年から長々と書いた。