ルールを守りましょうよ。でも、そのルールって?〜ジャニーズ廃業会見とイノッチ

10月2日に行われたジャニーズの2回目の会見。
今回は時間は2時間、質問は1社1問というルールが主催者側によって設けられ、このことが会見を紛糾させた。
参加した記者は300人ほど、最終的に質問できたのは4、50人だったようだが、質問が回ってこないせいで、一部からまるで野次のように、質問させろという声が相次ぎ、会場は騒然とした。会見時間は2時間と区切られているわけだから、質問が回ってきていない記者が焦る気持ちもわかる。質問する記者の中には、質問というより、演説するかのように、質問の前フリで長々と自説を語る者もおり(シンポジウムなどの客席からの質問時にはありがちな光景だ)、手を挙げて司会者に指されるのを待っている記者からしたら、イライラしっぱなしなのだろうこともよくわかる。これは明らかに、司会者の落ち度である。本来ならば、すべての質問が終わるまで会見を続けるか、もしくは、なるべく多くの記者に質問してもらえるよう1社1問というルールを設けるなら、ひとりの質問にかかる時間に上限を設けるなり、会見中にも、あまりに長い質問に対しては、もっと司会者が注意して、早く切り上げるよう促し たりという配慮が必要だった。この点はいくつかのネット系メディアも指摘していた。

なのにである。記者からの罵声が飛び、会見場が騒然とし始めた時、加害者側として、質問を受ける立場であるイノッチが、会場に冷静になるように促し、大人なんだから子どもに見られても恥ずかしくないよう、ちゃんとルールを守りましょうと呼びかけ、それに対して、一部の記者から拍手が起こったのである。この拍手には違和感を感じた。

この拍手への違和感は一部のネットメディアも指摘していたし、会見当日の夜、TBSの News23にコメンテーターとして出演していたジャーナリストの鈴木エイト氏も指摘していた。そもそも加害者側として、真相究明のために本来なら全ての記者の質問に答えるのが筋なのに、そんな立場の自分たちが勝手に会見時間は2時間、質問は一社一問というルールを作っておいて、それを守ろうと記者を諭すのは、そもそもおかしい。さらに、会見時間に上限など設けず、すべての質問に答えるべきだと要請するべき記者の立場でありながら、このイノッチの言葉に賛同の拍手を送るとはどういうことなのか?意味がわからない。

記者席からはマイクを通さない怒りのこもった声が次々に聞こえてきて、記者のマナーの悪さにイライラしたのもたしか。私もテレビを見ながらイライラした。一旦叩いていいとなったら、容赦無く、口汚い罵声を浴びせ、自らは正義を振りかざす感じにも辟易した。ジャニー喜多川氏の罪は罪として、弱いものいじめに向かいがちな日本人の体質を見るようで、私も騒いでいた記者たちには嫌になったが、イノッチの自らの立場を理解しているとは思えないような「大人なんだからルールを守りましょう」発言も、それに拍手を送った人々のことも理解できない。

「みなさんお静かに」、まではいいと思う。混乱していてはさらに時間をロスするだけだ。
しかし、その次にイノッチがやるべきは記者にルールを守れというのではなく、身内の司会者(今回の会見の司会者はスマイルアップ側が用意した人間だと思われる)に対し、時間もないのでちゃんと仕切ってくださいと叱咤することだろう。

鈴木エイト氏によれば、このイノッチ的なコミュニケーションの取り方は加害者が被害者を丸め込むときの常套手段のようだ。誰かがイノッチのことをコミュニケーションモンスターだと言っていたが、さすが朝イチで鍛えただけのことはあるなと思う。

私たちは、ちょっといい話的なものに弱い。でも、ちょっといい話というのには落とし穴も多い。その場の空気や感情に流されず、今一度立ち止まってリテラシーを発動させて、それぞれの登場人物の発言が妥当なのか考えねばならない。

鈴木エイト氏が、news 23でのコメントの締めとして、被害者への補償やジャニタレの今後についてではなく、この「イノッチ発言」と拍手の問題に触れたのは、これが、大問題も反省せずして、すぐに禊いで忘れてしまったり、つねに気分で動き、事実に触れようとしない日本人の体質を象徴していたからではないかと思う。いつまでもこのままでは、旧統一教会の問題も、権力への忖度もなくなるはずはない。


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