『照星(しょうせい)』 5
このデュック兵長がクリング一等兵に対して、剛とベルーを引き合いに出したことが、ある事件を引き起こした。
オストリア人のクリングは、自分より優秀で上に立つ者がギリス人のベルーなら許せるのだが東洋人の剛に負けていることが気に食わなかった。それでも対抗意識を燃やして、射撃やジョギング、八百メートル走、テストの点などで争ってくるのならいいのだが、彼は決してそのリングには上がってこなかった。
負けた場合を考えると、恥ずかしく惨めになるのが怖くて、もともと戦いは挑まない。
「おい、シ