ヨコシマな恋愛

御曹司とのデートはキスで止まらせた。

「私も、新一さんのこと大好き。大好きだから、少しずつ愛を重ねたいの。忙しいのは分かるけれど、会えない時間が不安で。だから、ゆっくり恋愛したいの」そう言って、キスから先の誘いを封じ込めた。

育ちがよく女性を疑うことの知らない彼は、真っ直ぐな笑顔を私に向けてくれた。

「レイコさんの気持ち、分かるよ。当たり前だよね。僕はレイコさんを手放したくないんだ。仕事を少しセーブしてでも、レイコさんとの時間を作るようにするよ。仕事ばかりの人生はつまらないしね。それに、時間を区切って仕事した方が効率いいのは知ってるんだ。でも、出来てないけれど。レイコさんのために、変わるよ」

彼はしっかりと私を見つめながら、ゆっくりと話してくれた。その瞳の純粋さを見つめていくと、キセキを信じたくなってくる。平凡な町娘が王子様に見初められていくキセキのおとぎ話のような出来事が私の人生に起こらないかなと信じたくなるのだ。白いBMWが私に無限の自信を与えてくれた。御曹司が私に夢中になり結婚していくというキセキのおとぎ話を起こしてみせたくなる。

どうやってこの御曹司を手に入れていこうか......

観音様にお参りしながら私はそのことばかりを考えていた。本当の本当の私は仕事も恋愛も自分に自信がない。仕事は元々の頑張りと性格の良さで平凡ながらも周りに助けられながら人並みのお給料と生活を得ている。仕事は大変だけれど不満は全くない。赤坂でのバイト代と合わせると少し贅沢もできそうだ。

けれども、恋愛はコツコツ頑張るものじゃないのかもしれない。

私なんかじゃ御曹司と結婚なんて無理なのかな。また騙されたり、直前で気持ちが変わったりするのかな。

婚活に勤しむくらいなら、覚悟を決めて独身のままのほうがいいのかな

そんな言葉が頭の中を駆け巡る。

男性が信用できない、男性が怖い。男性はしれっと笑顔で私を裏切る

絶望的な気持ちになった後に、突然、光のような言葉が出てきた。

恋は私を美しくしてくれる出来事

過去の失恋も、悲しみも、それがあったからこそ私は精神的なしなやかさを手に入れた。恋愛が私を成長させてくれた。

全ての経験が今の私の財産だ。

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