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13.集中力

子供の頃
集中力がないと言われた。

給食も、宿題も、ピアノの練習も、

初めは頑張ろうと取り組み出す。
だが持続しない。

給食当番に「少なめで!」と伝えたが。
それでも多い食パンの日の給食を、
(朝もトーストを食べたのに…)と
マーマレードに頼りつつ、
クラスメイトが校庭へ遊びに行くのを横目に
昼休みに食い込んでも1人のろのろと食べ続けた

算数の宿題は
はじめから見たくもないが、やらなければ
明日が先に来て叱られることになるので
仕方なくノートを開く。
しばらく数字を眺めていたかと思うと
数分後には、〝ツンと先の尖った鉛筆を〟
鉛筆削りで削り始める…もったいない。

とうとう明日は火曜日。
ピアノの教室に行く日である。
うちに帰ってピアノの椅子へと座り
一週間ぶりに楽譜を開く。
前回のレッスンからまだピアノに触れていない!
オタマジャクシが5本の線の上をウヨウヨ泳ぐ。
あとちょっとでトムとジェリーがはじまる…
右手だけ丸っと弾いたら、そのあと左手は
鍵盤ではなく、リモコンの5を押していた。

集中力がないなんて言葉で、
鳥居れなを言われたって。
子供の時にそんな言葉で言われたら、
少しは気にするのである。

でも私は、私にだって集中力は存在する。
と思えた科目のお陰で卑屈にならずにいられた。

図画工作の授業が大好きだった。

学年統一の題材ではあるが、
ひとつの種からその先は自由だ。

粘土も、絵の具も、彫刻も…
私のものだから、
好きに形を創って、
12色では収まらない絵の具を果てしなく練り、
丸いような鋭さも、鋭いような丸さも
私だけのものだったから。
いつも授業の時間だけでは足りなかった。

自由は時に恐ろしくも感じるけれど、
人が何か表現しようと創り出すものに
やってはいけないことなどないのかもしれない。

この世に存在しない歪な生物を生み出しても
名前をつけてあげたら、いきなり命が宿ったし

みんなが筆の先を
鉛筆の線の中へと収めている時に、
絵の具を指につけて紙の上へ落とした少女も


木の板へ鋭い刃を滑らせて描く版画も
掘った後の木屑の方が主役だと感じて、
捨てるのを注意されるまで躊躇ったのも

1+1 という問いが 2 という答えになることより
遥かにずっと面白かった。

先生、お母さん
わたしにも集中力はあるんです

通信簿、書き直してくださいな。

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