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#4 勇気を桃に託した夜。

電車での帰りみち

ひとつ挟んで隣の席の女性が
顔を隠しうつむいている。

気になって見ると
時々小さくしゃくりあげるような声。

泣いてるのかな…??


周りのまばらな人たちは
気づいてない…みたい。

まじまじと、細い首を見つめる。
背の高そうな女性だけど
なんて、細い線。

何か仕事でやなことあったのかな。
誰かに聴いてもらえるのかな?

電車で涙が出たことは
身に覚えがあった。

だから
もしも同じ駅で降りたら…と、
あることを決めた。


降りる駅。
本当に同じタイミングで彼女が席を立つ。


少し様子を見計らって、意を決して
「大丈夫ですか…?」
話しかけた。

「もし良かったら、頂きものだけど
これ、美味しいはずだから。」

頂きものの 桃ジュース。
今の私があげられる
たぶん一番良いもの。




結果的に、
差し出したジュースは今も私の手元にある。

顔をこちらに向けた彼女は
思いのほか涙はなくてそして一言。

「いや、今日すごい面白いことあって
笑うの堪えてたんです。」


電車で笑ってたら怒られるじゃないですか、
東京って。
だから、必死に堪えてたんですよー。


…まさかの。

まさかの完全なやらかし。
おせっかい丸出し。

でも、予想外の明るい展開で
ずっとずっと良かった。


そしてゆっくり
家路に着きました。

#勇気 #桃ジュース  #帰り道

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