Faith(Album) / The Cure

随時改訂中


The Holy Hours

静寂の中で、僕は跪いて待つ
人々が、また一人、また一人とそっと消えていくのを
夜の帳の中に、静まり返って虚ろな死体が
彼らが祈る前に、地面に口づけを
彼らが祈る前に、地面に口づけを

僕は、夢見る事もなくしたように、座って耳を傾ける
救済の約束が、僕をとどまらせる
それから僕は、君の顔を覗き込むのだが
心が押し込まれたように感じるんだ
周りの子供たちが遊ぶような色んなゲームをする様に
昨日には飽きてしまったような色んなゲームを

彼らは遊ぶ
彼らは遊ぶ

僕は立ち上がって聞いた、自分の声が叫ぶのを
太古の力の元に、言葉無き叫びが一つ
それは石にぶつかって砕ける
僕は、そっと君を泣かせたままにしておく
僕は君が貪るようなものを、持つことはできない
聖なる時間の懺悔の生贄

Primary

白い服を着て、ゆっくりと眠っている子供の
無邪気さが、全ての時を止める
僕の足取りを緩めると、ぼやけ始める
そんな幾多もの歳月が僕の心を満たす
僕がこんな言葉を言うようになるなんて思いもよらなかった

僕らが遠くへ行けば行くほど
年を取れば取る程
多くを知れば知る程
僕らは、より本心を明かさなくなる

初めて君の顔を見た時に
僕は歌を思い浮かべたけど、即座に旋律を変えたんだ
初めて君の肌に触れた時
僕は物語を思い浮かべたけど
とっとと、結末にたどり着こうとして急ぎまくった

ああ、忘れないでよ
ああ、お願いだから、変わらないで

そして、13年目の秋が来た
光り輝く1個の指輪、どうして僕が君の名を忘れられようか
僕の喉にもう息が通らない、またもや完璧な嘘も言葉に詰まる
けど、それも、また、いつも同じ様に感じるんだろう

だから、彼らは互いによりそった
赤と黄色の服を身に纏い
永遠に無垢なままで
青い部屋で眠る子供たちは
まだ夢を見ている

僕らが遠くへ行けば行くほど
年を取れば取る程
多くを知れば知る程
僕らは、より本心を明かさなくなる

イアン・カーティスの死に際して書いた曲だとのこと。

1989年のファンジンの中で「とても若く、無邪気なうちに夢見ながら死ぬ方がいいかもしれない、とか、或いは誰かに”ギフト”としての殺人を犯した方がいいのかもしれない、みたいな事を弄んでる」とも明かしている。

イアンの死と、彼を死に追いやったシーンに対して、明確な敵意を向けているような発言を合わせると、彼らが英国の音楽業界と一線を置き続けた理由が見えてくるのかもしれない。

Ren 注記

The Other Voices

誰もいない部屋の中で、君の名前を囁くと
君が僕の肌を毛皮の様に撫でまわして掠める
・・・握りしめる
君の残り香を味わう
遠くの物音が、他の声が

僕の壊れた頭が、バクバクと脈動する
罪を犯せ、自分自身に正直になりな
そして、全ての別な声たちが言った
悔い改めよ、お前はいつも間違っている

いつも間違っている
いつも間違っている

クリスマス辺りには
どうしても君に会わなきゃなんない
狡賢く、僕に微笑んでよ
他にもクリスマスの妥協もあるんだろう
けど、僕は見捨てられて、800万人の人たちと生きてる
遠くから色んな声が雑音の様に

僕の揺れ動く手の中で脈打ってる
その響きを撫でまわす、そんな多くの死者たちが
そして、全ての別な声たちが言った
悔い改めよ、お前はいつも間違っている

結構ギリギリまでぼかすの大変なのよ、これ。

個人的に思うのは、これ、トルーマン・カポーティの「遠い声・遠い部屋」がモチーフになっているんじゃないかと思っている。

原題は Other Voices, Other Rooms です。ちょっと同性愛的なテーマが含まれた小説で、このアルバムに通底している「キリスト教徒としての自分の中にあるキリスト教徒としてのタブーな感情」が沸き起こってくる事への後ろめたさみたいな逡巡。

こういうテーマは、Pornographyを経て、The Head On The Door の ”The Blood”に結実している気がする。怒るなだの性欲だのを押さえ込めない若さと、敬虔なキリスト教徒として育ってきた自分の対立。

Ren 注記

All Cats Are Grey

まさか僕が、自分自身を見つけようとは
幾つもの石に埋もれたベッドの中で
柱は全て、僕を押し潰させてくれと乞い願う男たちで
暗黒の深い幾つもの湖を、形も無い何かが航海していく
そして如何なる旗も、僕を家路に向かわせようとしない

洞窟の中では、猫は全て灰色
洞窟の中では、触感だけが僕の肌を纏う
死の独房で、一つの音が、延々と鳴り続けている

色んな意味がこもっている。まず、この曲は、Mervyn Peakeの書いたゴシック・ファンタジー小説 Gormenghast が元になっている。

Gormenghast は伯爵家と、その伯爵家の住まう城の名前で、この城の中には、伯爵妃の猫の間(白い猫たちが沢山いる部屋)がある。そして、この物語の中にずっと洞窟に住まう人物が出て来る。

また、All Cats Are Grey は、ローレンスの母親、ダフネの口癖で、“All cats are grey in the dark” という諺が元になっている。”闇の中に入ったら、猫の色なんか、全部灰色で、大して区別なんかつかない”という意味。

この時期、ローレンスの母親が亡くなってるそうで、その事も含めて、様々な意味が込められた歌。

Ren 注記

The Funeral Party

二つの青白い人影が静寂の中で痛み
静まり返った大地の中で時間を超え
老いと悲しみの中、隣り合わせに

[Verse 2]
僕は眺めながら、言葉も無く振舞っていた
一つ一つ
あなた方が生き抜いたあなた方の人生の物語を
知られざる過去を生き抜いた
葬儀で忙殺されながら

子供たちの幾つもの夢の記憶が
生気も無く横たわる
消え行こうとしてる
生気も無く
手に手を取って、
畏れと葬儀で泣いている幾多もの影と共に

僕は歌を聴き、背を向けた
一つ一つ
あなた方が生き抜いたあなた方の人生の物語を
音もなくフロアを横切って
葬儀で忙殺されながら

ロバートの祖父母の葬式の事を歌った歌。ロバートがライブでこの曲とAll Cats Are Greyを演奏しないのは、どうもその二人の事を思い出すかららしく、酒飲んだ時にこの曲聴くと、自分の曲でも聞きたくなくなるほどらしい。この時期、ロバートとロルは相当な身内の不幸に見舞われた模様。

Dancing は”踊る”だとちょっとそぐわない気がしたので、ドタバタ忙殺されていた、という訳にした。

Ren 注記

Doubt

僕の "戦いながら死ぬ" なんていう逃避を止めてくれ
”僕の人生を変える”なんて態度を表明するとかいうのも
そうさ、真っ赤な絶望を持った野蛮人

僕が自分の手を握り締めると、君は自分の爪を抜く
隠された激怒が、僕の心を消耗させる
長年の無駄な歳月を燃料にして
僕は目を閉じて、自分自身を張り詰めさせる

そして叫びながら、怒りの中に自分自身を投げ込む
際を越えて、君の血の中に

肉を引き裂いて、皮を引き裂く
それを疑心暗鬼の上に叩きつけて
僕は君を壊さなきゃいけない
怒りが、僕の凶暴な打撃を駆り立てる
君が倒れるのが見えても、まだ、僕は君を打ちのめす

何度も何度も、君の体が崩れ落ちる
その動きは鋭くて、鮮明で
そして純粋で、終わっていく
僕は止まって、君の傍らに膝まづく
痛み以外の全てが消耗されつくし

そして叫びながら、怒りの中に自分自身を投げ込む
際を越えて、君の血の中に
君の血の中に

君に一度だけキスをして、君が身もだえするのを見る
君を近くに抱き寄せ、君の泣くのを聞く
君の瞳にキスをして、君の人生を終わらせる
君の瞳にキスをして、君の人生を終わらせる

何度も何度も、君の体が崩れ落ちる
その動きは鋭くて、鮮明で
そして純粋で、終わっていく
僕は止まって、君の傍らに膝まづく
今宵も、また、君を殺すだろうことを知りながら

鋭くて、鮮明で、そして純粋で
鋭くて、鮮明で、そして純粋で
今宵も、また、君を殺すだろうことを知りながら
今宵も、また、君を殺すだろうことを知りながら
今宵も、また、君を殺すだろうことを知りながら
今宵も、また、君を殺すだろうことを知りながら

自分の作る音楽の業を”殺人”に例えてる歌ですね。
そういう行動に疑念を持ちながら、音楽に向かっている、という。

Ren 注記

The Drowning Man

彼女は洪水から12フィートの高さに立っている
彼女は見つめた、一人きりで水面を
孤独が募って、彼女の凍り付いた体を
滑り降りる様にゆっくりと満たしている
一つ、また一つと、彼女の五感は死んでいる
記憶は薄れゆき、彼女の両目から立ち消えていく
かつてはそうでなかった世界を、まだ眺めつつ
そして、艶やかな色の鳥たちが
また一羽、また一羽と、彼女のもとを離れていく

激しい音の皮切りに
彼女は振り返ろうとして、だが、しまいには、音もなく
滑って、彼女の柔らかい黒髪の頭をぶつけていた
水は一礼し
彼女を受け止め
苦もなく溺れさせる

”私は、血を流している世界を立ち去るでしょう
ああ、愛しき人、私があなたを助けることができたのなら
束の間の現身
幾年も前の
とても若々しく、美しく、勇敢だった
全ては本当の事だった
作り話であったはずがない
それが全て本当の事だったらよかったのに
作り話などであってほしくはなかったのに
幾つもの言葉は、全て、生気も無く、願いながら
溺れる者の様に息をして
ああ、フューシャ、あなたは私を置き去りにする
溺れる者の様に夢見ながら
溺れる者の様に息をして
溺れる者の様に息をして
溺れる者の様に夢見ながら

やっぱり、これも All Cats Are Grey と同じ Gormenghast をモチーフにしてます。もう人物の名前も出てますが、タイタスの姉、フューシャ(Lady Fuchsia)の死のシーン。激しく鳴った音に驚き、頭を打ち付けて、溺れ死んでしまう情景を歌ってます。

https://en.wikipedia.org/wiki/Lady_Fuchsia_Groan

Ren 注記

Faith

僕が倒れたら、受け止めて
僕は手懸りを失っている
僕が、こんなやり方を続けられるはずもないだろ
僕が、毎度、目を背ける度に
また、めくら撃ちのゲームに負ける
完璧であろうとする考えが、僕を押さえつける

突然、君が変わるのが見える
全てが一度に、同じさ
でも、山は決して動きはしない
僕を犯してくれ、血の洗礼を受けた子供みたいに
無名の聖人の様に描かれた
希望以外の何物も残されていない

君の声はしわがれ、老いて、いつも空っぽだ
閉ざされていく歳月を過ごす僕を信じて欲しい
完璧な瞬間が待っているさ
もし、僕らがここにとどまる事ができたのなら

どうか、相応しい言葉を言ってください
僕は白い石で作られた道化のように泣き、立ち尽くす
幸せな群衆たちの中で、永遠に道に迷う
誰も手を上げもせず、誰も目を上げもしない
空虚な言葉で正当化されるのに
パーティは、どんどん良くなるばかり

僕は、ひとりぼっちで立ち去った
信念以外には、何も残さない
僕は、ひとりぼっちで立ち去った
信念以外は、何も残さない

信念以外は、何も残さない
信念以外は、何も残さない
信念以外は、何も残さない
信念以外は、何も残さない

どっか、自分の音楽活動に対する疑念みたいなものが、見え隠れしてる曲なんだよねぇ・・・

Ren 注記

Charlotte Sometimes

全ての幾つもの顔が、全ての幾つもの声がぼやけ
一つの顔に変わり、一つの声になる
あなたが自分のベッドの準備をなさい
光は明るく見えて、白い壁たちを照らす
シャーロット・サムタイムスの全ての音
シャーロット・サムタイムスと共に夜の中に

夜毎、彼女は一人ぼっちでベッドに入る
彼女の両の瞳は大きく暗闇の中で見開かれ
通りは、全て、見知らぬ場所のように見えた
彼らは、それほど遠くにいる様に見えた
でも、シャーロットは泣かなかった
その人たちは、えらく親し気に見えた
無表情のゲームをしながらも
その人たちは、えらく親し気に見えた
そんなにも多くの他の名前が

時々、僕は夢を見ている、全ての他の人たちが踊ってる場所の事
時々、僕は夢を見ている、シャーロット・サムタイムスを
時々、僕は夢を見ている、無表情な恍惚
時々、僕は夢を見ている

色んな違った多くの名前がある
時々、僕は夢を見ている、音は全てが同じ音のまま
時々、僕は夢を見る
違った世界の上で
彼女が影に覆われた瞳を開こうとしている所を
怖がりのお姫様、僕の所へおいで
シャーロット・サムタイムス

あの荒涼とした小道の上に、再び太陽が沈むのを見る
涙が彼女の頬の上に溢れだしていた
彼女は泣いていた
何年も前に死んでしまった少女のために泣いていた

時々、僕は夢を見る、全ての他の人たちが踊ってる場所の事
時々、僕は夢を見る、シャーロット・サムタイムスを
時々、僕は夢を見る、音は全てが同じ音のまま
そこには、幾つもの違った名前がある
時々、僕は夢を見る、時々、僕は夢を見る

シャーロット・サムタイムス、彼女は自分のために泣いている
シャーロット・サムタイムス、自分を取り囲む壁の事を夢に見る
でも、それは、いつも愛と共にあり、たくさんの愛と共にあり
シャーロット・サムタイムスの他の全てに似て見える
それほどに遠くて
かわいらしい封印のされたガラス
シャーロット・サムタイムス

本当に訳の悩む曲。
これ、Charlotte Sometimes という本を読んだロバートが、物語の女の子の事を思って、自分を主体に「彼女の事を夢に見る」と理解する方が、まだ納得がいくんだよな。

言うまでも無くPenelope Farmer の児童小説 Charlotte Sometimes から。
40年前の第一次世界大戦の頃にタイム・スリップしてしまう女の子の物語。ちなみに、The Top の The Empty World も、この小説を元に書かれた曲。

Ren 注記

Splintered in Her Head

得体のしれないものが、まだ玩具たちと寝ている
人の背丈ほどで、廊下の絵を裏返しにしながら
幾つもの異界からの囁きが、空に向かって飛び跳ね
滑り落ちながら、彼は最後の時を見ている

The Cureイベントの前のトークでも話したが、The Top の The Empty Worldと似たようなフレーズを使っている。どうやら、これも、Charlotte Sometimes のワンシーン。

Shape is still asleep with the toys as tall as men

Ren 注記

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