初めて見たライブの記憶

そう言えば、色んな人から「Renさんが初めて見たライブって何ですか?」と聞かれる。

「THE STAR CLUB」

(*;゚;ж;゚;*)ブッ

「なななななななな、何でですか!」
「何で、って言われても・・・」

うちの地元まで来てくれたの、THE STAR CLUB だけ
だったんだよね。
中学1年だったかなぁ。2年だったかな。

僕がこの話をすると、ほぼ100%「何でRenさんがTHE STAR CLUB見てるの!」としこたま度肝を抜かれるみたいだが。

自分の同級生に、お菓子屋の息子がいた。幼稚園の頃からの友達。
そのお菓子作りの工場に、年の頃、20代中頃だったかなぁ。
若い兄ちゃんがいた。

その兄ちゃん、普段はお菓子作るとこしか見てなかったんだけど、ギターを弾いてたんだよね。今考えると、スタジオなんかも無いド田舎のどこで練習してたのか謎だったんだけど、密かにバンドやってたらしい。

その人が、僕がどえらい音楽好きだってのを、僕の友達から聞いたらしく。
(友達はパーフェクトレベルで音楽に興味のない人)

「今度、ライブやるから来てよ!音楽好きそうだし!」

突如、こんな事を言ってきたのだ。
それが、THE STAR CLUBの前座だったんだけど。

「うん、いいよ。」

大体、ライブハウスなんざありません
で。
自分の中学校の目の前にある文化会館の小ホール。
(これがまた、妙にライブハウスっぽい感じになるのが不思議)

徒歩5分、チャリ1分の場所だし。

てな訳で、音楽なんか好きでもないはずの友達と現場で待ち合わせして、見に行ったんだけど、いやー。もう。

13,4の僕にだって、一瞬で分かったよ。
あ、全然、勝負になってないわ。

前座とはいえ、場数踏んだ歴戦のツワモノ相手に・・・それはもう、武田の騎馬隊に蹴散らされる感じというか。

ライブって、本当に勝負だって分かって無いんだよ。多くの人は。

てのは、印象の釣り合うバンドでもないと、印象の強いバンドが後に出ると、帰る頃には、印象が弱かった方は、出た事さえ忘れられる。

皆仲良し、いい演奏
だったね、じゃない。
何か心に残さないと、帰る頃には、その日の鮮烈さ1番手にかき消される。

ジャンルは、そもそも比較にならないけどさ。
兄ちゃんのバンドは安っぽいアレンジのチューリップみたいな感じだったと思った。ボーカルが、なんか素人クサいなぁ・・・何か必死に自分たちの演奏に何も反応がないのを、無理して、煽ってる感じ・・・

今考えると、おかしいね。
何で、初めて見たライブで、中学生がそんなこと考えてたのか。
今考えて、思いっきり不思議に思った。

僕は最初から、あらかじめ、分かってたんだ。
誰から教わった訳でもなく、このボーカルが致命的弱点だ、って。

歌えてないんじゃない。下手な演技してるんだ、って。

THE STAR CLUBは、ガチで偽って無かった。
役者が違うって、こういうことなんだ。

あ。

バンドの何がダサくて、何がカッコいいのか。
一番、最初に教えてもらった。

THE STAR CLUB と 兄ちゃんのバンドを同時に見て。
歴戦のツワモノと素人クサさの境目を、残虐なまでの比較で見た。

今って、ライブハウスも気を使って、ガチで力量差のあるバンドをそのままぶつけたりなどしない。大体似た実力ぐらいのバンドを選んで組ませる。

だから、かえってよくないのかもしんないね。
己の身の程を知る機会がない。

地方に行った時にバンドが揃わなかった時に、その力量差がモロに出る位だ。

あの残酷なまでの殴り合いは、今の様な頃からは考えられないほど、バンドが更に少ない時代で、ノルマが無かった頃のガチの勝負だった。

2つのバンドが出て、終わった後。
本人も自分で分かってたか、しょぼくれた顔して来た
んだけど。

「どうだった?」

僕は30秒ほど悩んで
(その時空を見る癖は、今でも治ってない)

「カッコよかったよ。元から全然違うバンドだし。」

嘘は言ってないよ。僕は所々、言葉を間引いただけだ。
兄ちゃんは必死にギター弾いてて、食らいつこうとしてたんだけど。

ボーカルが致命的にダメだったんだよ。

なのに兄ちゃん、あんな一方的な殴られるみたいな状況でも、必死になって演奏してたじゃん。負けなんか分かってたって、逃げなかったじゃん。

その必死な姿だけは、THE STAR CLUBに負けてなかった。
僕は、今も、あの兄ちゃんの顔が忘れられない。

やる前から負けなんか本人が一番わかってて、
それでも必死に崩れそうな陣を立て直そうとしてた。

場数の違いも魅せ方も、全然、勝負にならない
し。洗練され方が違う。

でも、何の曲を演奏してたか、もう、どっちのバンドも覚えてない。

正直、兄ちゃんのバンドは、曲がつまんなかった、って現場で思った記憶
だけが残ってる。

でも、彼の不安と戦いながら必死に食らいついてた姿は、今も忘れてない。

それだけはたった一つ。
THE STAR CLUB 以上に僕の心に爪痕を残している。

それは、今でもカッコいいと思う。

だから、嘘はついてなかった。

けど、バンドはダメダメだ、と、正直な本音は言わなかった。
僕は、その頃から、言葉を間引いて喋るのは得意だった。

どうにでも受け取れる曖昧さで喋る。
何で、僕は、そんな処世術を身につけていたんだろう?

そんな事、始めてやったはずなのに、なぜできるのか、憶えてない。

急に友達が、

「俺、兄ちゃんのバンドの方が好みだな。正直、音が大きくて外に出ちゃったし。」

「そっか、ありがとな。また来てな。」

葬式みたいな顔
してた兄ちゃんがようやく微笑んだ。

まあ、また、誘われる機会は無かったけど。
そこからしばらくして、いつの間にか、兄ちゃんは、店を辞めていたから。

ホントに、あの頃から変な中学生だったんだろうな。
今考えて、何でこんなことまで出来たんだろうね。

人から教わってた訳でもない、初めての場所、初めての体験で。
僕は、こんな振る舞いをしてた。
あらかじめ、全てが分かってた。

母が、中学1年生の家庭訪問の時に、先生に
「この子は、とにかく用心深い子で。どこかに行くと、真っ先にトイレはこことか探しに行くんです。で、すこしいないなと思うと、自分でサッと行っちゃってるんです。」

このおふくろも、中々油断なんないんだよなぁ・・・何で俺の事、そこまで見抜いてるの?

なんて、その話を聞きながら思ってた。

でも。

何でそんな行動をとるのか、自分でも不思議だけど。
教わってた訳でもないのに、何でそんな行動を自発的に取ってたのか。

今でも、よく分かんない。


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