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【リモホス】Club Saturno 第4話【リモート☆ホスト】

――オレンジ色に輝く都会のランドマーク、
東京タワーが見下ろす街――。TOKYO-R。

上品で洗練された高級店が軒を連ね、高級外車や大使館ナンバーをつけた高級車が街を行き交う。そして深夜まで、インターナショナルな観光客達がバーやクラブを賑わせている。

この街に住居を構える者達もいわゆる成功者たちばかり。大都会の魅力がギュッと詰まったエリアブランドであるこの街の一角にある『Club Saturno』。

今宵もあなたとの新たな出会いに乾杯!


~環珠、てん星のオカリナ占いに行く~

――それは環珠の出勤前のことだった。
いつも通り、自慢のサラツヤヘアーをばっちりスタイリングし、スマホで自撮りすると、SNSに『#今日の環珠』とハッシュタグをつけてUP。

環珠「今日も完璧だぜ!ヒュー!」

ゴキゲンで自宅マンションを出ようとすると、環珠のスマホに着信が……。それは実家の姉からだった。

環珠「げ……マジかよ、何か嫌な予感しかしねーな」

一度、スルーするのだが、その後、何度も鳴るスマホ。環珠は仕方なく電話に出る。

環珠「……何だよ、姉ちゃん、何度も。え?あのさー、俺、これから仕事なんだよ……え?ああ、分かってる、分かってる。今度、一度帰るって言ってるだろ?」

姉からの電話の内容は、「とにかく一度、実家に帰って来い!」というものだった。

環珠の実家は仙台にあるお寺。
4人姉弟の末っ子だが、皆、女子ばかりで、環珠は家族にとっての唯一の男子。その為、いつかは必ず寺の住職にならねばならない。つまり坊主にならねばならないのだ。しかも、最近、父親の体調がおもわしくなく、本当はすぐにでも住職を継いで欲しいと言われているのだが、いつも適当に先延ばししてきた。

今、電話してきたのは、5歳年上の長女だ。
これからのことみんなで話したいから、一度、実家に顔を見せろと言う。

環珠「……え?いつって……だから、そのうち行くって。――は?今、決めろ?んなこと言われてもこっちにも都合が……はいはい、分かった、分かった。じゃあ、来月。え?遅い?――じゃあ、分かったよ、今月中には行くから。ああ、じゃっ」

電話を切ると、環珠は溜息をつく。

環珠「あーあ。そろそろ輝かしい俺の『TOKYO CITY BOY LIFE』もカウントダウンに入ったか……くそぉぉぉ……でも、俺は諦めたくない!まだまだ東京で過ごして~ぇよぉぉぉぉ!」

環珠は自慢のサラツヤヘアも東京での生活も、もちろん、ホストとしてのキャリアも、まだまだ未練があった。環珠は小さい頃からずっと坊主の跡取りとして育てられてきた。学校でもあだ名は『坊主』だった。それを嫌だとも思わず、普通に過ごしてきた。

だが、中学生になると、ロングヘアのビジュアル系ロックバンドに夢中になる。彼らを真似するように髪を伸ばし、トリートメントも念入りにし、サラツヤヘアを手に入れると、鏡に映る自分にうっとり。

そして、環珠は決意する。

「いつか東京に行って、夢のシティライフをゲットするんだぜ!」

家族には東京生活は住職を継ぐまでの間と約束した。

「でも、約束なんて破るためにあるんだぜ!誰が帰るかっつーの。俺のTOKYO LIFEヒュー!」

しかし、状況が変わった。姉によると父親の体調が最近すこぶる悪いらしく、さすがに無視できない。環珠は寺を継ぎたくないが、家族が嫌なわけではない。実はかなりの家族思いの性格だ。その証拠に、お盆とお彼岸には必ず「ご先祖の為に」と仏花を送り、正月には親戚みんなで食べられるようにとタラバガニを送っている。


環珠「ああ、俺はどうすりゃいいんだ。俺の未来がマジで見えねぇ~」

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