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【リモホス】Club Venere 第4話【リモート☆ホスト】

――TOKYO-K。
高架を走る電車の向こうにそびえ立つ高層ビル群。
この街を支える最寄り駅は乗降客数が一日に353万人というモンスター駅。
昼間はビジネスマンや学生他、買い物客、観光客など多種多様な人々が行き交う。
だが、夜になるとまた新たな表情を見せる。
街中にネオンが光り出し、昼間とはまた違った賑わいを見せ始める。
そして……この街の一角に建つこの店も開店の時間となる。
――Club Venere。

Venere(ヴェーネレ)とはイタリア語で金星の意。金星は美の女神ヴィーナスの名前がそのまま使われており、まさにこの店もお客様達にヴィーナスのように美しく輝いてもらいたい、という願いが込められている。それと同時に、金星は日没後、一番最初に輝く『一番星』とも呼ばれる。だからこそ、ホスト界の1番、1番輝く星を目指そうという気合も込められていた。

さぁ、Club Venereの扉を開こう。
一歩中へ踏み入れれば、今宵も新たな出会いがあなたを待っている……。

~金多はアドレスホッパー???~

「俺の自宅?……フッ……俺は家なんか持たねぇ!今っぽく言えば、アドレスホッパーってやつ?」

金多は姫達から自宅について尋ねられると、いつも決まってそう言い放つ。

彼はギャンブル大好き!
――と言っても、問題は賭け方だ。

金多「ちまちま勝ってもしょうがねーし!俺くらいになるとな、一気にドーンと賭けて、ドーンと儲けるんだ!その時は、みんなにもいいモン買ってやるぜ!」

そう言って金多は、競馬なら万馬券、あくまで大穴を狙う。その分、負けたら損が大きすぎるのだが、そんなことは気にしない。

金多「俺は絶対当たる、俺に当たらないはずがない!」

そう……金多はいつか必ずギャンブルでお金持ちになることを本気で信じているのだ。

だが、もちろん今まで一度も大金なんて当たったことはない。家がないのだって、せっかくホストとして働いて入って来たお金も、全てギャンブルに消えてしまい、家賃を払うことができないからだ。

その為、金多は、男女問わずあらゆる友達の家に泊りまくってきた。
金多は確かにお金はないが、友達は非常に多く、いつも彼の周りには自然と人が集まっている。その上、意外にマメな性格だ。今まで何とか住居に困らず、毎日、誰かしらの家に泊めてもらえたのも、彼のそんな性格ゆえだ。

ギャンブルで負けてすっからかんでも、女性にはなけなしのお金でかわいい花束や美味しいスイーツをプレゼント。
「お金がないのに頑張って買ってくれたのね」と、金多の優しい心遣いに対し、ついついみな、優しくしてしまうのだ。

   ×   ×   ×

――深夜12時。
今日も『Club Venere』は閉店の時間。
営業終了後の片づけが免除される売り上げトップ5の輝石、明星、愛抱夢、金多、夕星の5人のホスト達は私服に着替えると、それぞれアフターに行ったり、食事に行ったり、帰途に着いたり……。
閉店後の様子はいつも通り、5人とも様々だ。

金多「あ~、マジで、今日からどーしよ」

金多は閉店後、ビクトリールームに戻ると、この後どこに帰ろうか悩んでいた。昨日まで泊めてくれていた友人には「もう今日から、さすがに勘弁!」と断られてしまった。

さて、今日から誰の家に泊まろうか……

スマホで友人の連絡先をスクロールする。
だが、そこに名前のある人達の家に既に居候させて貰っている。中には2巡、3巡してる友達もいるほどだ。いくら友達が多い金多でも、これだけ居候生活、いやアドレスホッパー生活が長引けば、とうとう泊まるアテがなくなってしまう。

そこへ不貞腐れて、ビクトリールームに戻ってくる愛抱夢。

愛抱夢「あーあ。今日もルー様、常連さんのアフターだってぇ。つまんないの……」

口を尖らせ、そう愚痴る愛抱夢。
金多は、そんな愛抱夢にキランと目を輝かせて、ロックオン!愛抱夢に近づき、肩をポンと叩いて……

金多「愛抱夢ちゃん!ルシフェル、残念だったねぇ~」
愛抱夢「金多、分かってくれる?俺の気持ち」
金多「うんうん、分かる、超分かるよ~。ルシフェル、忙しいし、なかなか二人の時間とれないの辛いよな」
愛抱夢「そうそう!めっちゃ辛いんだ、俺」
金多「色々、話してうっぷんを晴らしたいこともあるだろ?」
愛抱夢「あるある!」
金多「いくらでも話せ。俺が聞いてやるよ」
愛抱夢「え?俺の話、聞いてくれるの?」
金多「もちろんさ!同じ店で働く仲間じゃないか!さ、続きは愛抱夢の家で聞くよ。酒でも買って、朝までゆっくり話そうぜ」
愛抱夢「阿離我党(ありがとう)~!金多!じゃ、行こ、行こ、俺んち!」
金多「おお、行こ、行こー!」

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