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五色の虹

 えっ、虹って七色でしょ?。そう、自然界の虹は七色。でも、この世には五色の虹が輝く世界があるのだ。ピンク、イエロー、グリーン、ブルー、パープル。花組・月組・雪組・星組・宙組を象徴する五色の虹は、常に華やかに宝塚歌劇を彩る。

ピンク:男役とダンスの花組

 ピンクをシンボルカラーとする花組は、宝塚で最も伝統のある組。宝塚ファンの間では、花組トップスターにはその時代の宝塚を代表する男役が就任すると言われている。
 花組の特色はオーソドックスな華やかさ、そして男役の「濃さ」にある。顔やスタイルがイケメン、立ち姿や仕草が男性に見えるというだけでなく、表情や視線、そして指先の使い方に至るまで徹頭徹尾「カッコつけた男」であることを貫く。
 その際たるものは、男役が黒の燕尾服で踊るダンス。これなしに花組を語ることはできない。背筋を伸ばして大階段を降り、そして燕尾の先まで神経を通わせて踊る。その姿はまさに「THE 男役」「THE
宝塚」。
 第1期ベルばらブームを支えた安奈淳、ダンスの名手大浦みずき、テレビドラマなどで活躍する真矢みき等はいずれも花組トップスターだった人たちだ。

イエロー:都会的な洗練とミュージカルの月組

 イエローをシンボルカラーとする月組は芝居の組、そして海外ミュージカルの組でもある。
 宝塚の代表作の一つ「風と共に去りぬ」の初演は月組だ。海外ミュージカル「ガイズ&ドールズ」(1984年)「ミーアンドマイガール」(1987年)はいずれも月組で初演、再演を重ねた作品である。近年ではフランス発のスペクタキュルを原作とする「1789−バスティーユの恋人たち−」を上演したことも記憶に新しい。
 月組の男役と言えばスーツと都会的なスマートさが持ち味。音楽ならジャズやビートの効いたロックが似合う。観客は彼らの芝居に歌にダンスに酔うのだ。
 長らくミュージカル界のスターである大地麻央、剣幸、テレビでもおなじみの涼風真世、天海祐希、月組の歴代トップスターには、天性の華と芝居のうまさを兼ね備えた人が多い。

グリーン:日本ものの雪組

 グリーンは1924年に宝塚第3の組として誕生した雪組のカラー。雪組は日本物の芝居(時代劇)を得意とする組として知られる。
 日本ものの芝居は化粧の仕方からカツラや衣装の着こなし、刀や扇といった小道具の持ち方、立ち居ふるまいに至るまで独特で、洋物の芝居とは全く異なる。先輩から後輩へその技術を絶えることなく受け継いでいるのが雪組だ。
 日本物ならではの美しい立ち姿や舞い姿を見せたかと思えば、刀を手に激しい立ち回りもこなしてみせるのが雪組の男役。日本情緒あふれる作品で培った芝居の上手さも兼ね備えているのが強みである。
 雪組トップスターの多くは日本物の代表作を持つ人が多い。「星影の人」(1976年)で沖田総司を演じた汀夏子、「忠臣蔵」(1992年)で大石内蔵助を演じた杜けあきはその代表格。舞台で活躍する麻美れい、一路真輝も雪組トップスターだった人たちである。

ブルー:コスチューム・プレイの星組

 宝塚と言えば、ふんわりとした輪っかのドレスや軍服を思い浮かべる人も多いだろう。そんな豪華絢爛な衣装をまとった西洋もののコスチューム・プレイを得意とするのが、ブルーをシンボルカラーとする星組である。
 金色の肩賞を付けた白い軍服、あるいは腰に剣を下げてマントを翻す騎士、こうしたコスチュームを着こなすにはまず身長が高いこと、そして手足が長くスタイルが良いことが条件だ。「ベルサイユのばら」「うたかたの恋」など今なお愛される宝塚の名作は、タカラジェンヌの常人離れしたプロポーションなしには成立し得ない。
 星組の男役は王侯貴族を演じるノーブルさと熱いパッションを併せもつ。華やかなドレスに身を包んだ姫君とワルツを踊ったかと思うと、ラテンのリズムに乗ってダイナミックに歌い踊り、情熱的に愛を語る。
 星組を代表するトップスターはツレちゃんの愛称で知られる鳳蘭。他にも女優・日本舞踊家として活躍する峰さを理、退団後ミュージカル女優となった安蘭けい、柚希礼音ら個性的なスターを数多く輩出している。

パープル:スケールの大きさとコーラスの宙組

 宝塚大劇場・東京宝塚劇場での通年公演を実現するため、1998年に宝塚5番目の組として誕生した宙組(そらぐみ)のシンボルカラーはパープル。宇宙の「宙」と書いて「そら」と読ませる独特の名前は公募によるもの。
 宙組の特色は何といっても170センチ超の大型男役が揃っていること。その長身とスタイルの良さを活かしてコスチューム・プレイから海外ミュージカル、名作の再演からSFやコンピューターゲームを原作とする新作まで幅広いジャンルの作品を上演する。
 宙組といえば、もう一つ忘れてはならないのがミュージカルには欠かせないコーラス。その恵まれた体格を生かした重厚で迫力の有るコーラスは宝塚随一と言われている。
 歌手・女優として活躍する姿月あさと、大和悠河は元宙組トップスター。ミュージカル女優として宝塚の娘役出身者としては初めて帝劇で主演した花總まりも元宙組のトップ娘役である。

輝き続ける五色の虹

 現在の宝塚歌劇団の上演スタイルは東西2つの劇場でそれぞれ年間9公演が基本。兵庫県・宝塚市にある宝塚大劇場、もしくは東京・日比谷の東京宝塚劇場に足を運べば、1年以内に5組全ての公演を見ることも可能だ。
 日本物から西洋物まで、著名なコミック・小説の舞台化から本格的な海外ミュージカルに至るまで、多種多彩な演目が上演されるのも、宝塚歌劇のユニークなところ。
 そして何より、舞台は生もの。虹はその時々のスターによって、演目によって、日々様々に色あいを変えていく。その儚い美しさゆえに、ファンは時代を超えて宝塚歌劇を愛し、束の間の夢を見るのである。

#takarazuka #宝塚 #虹

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